2025年11月12日水曜日

前立腺癌スクリーニング欧州研究、23年のフォローアップ

NEJM,2025,vol.393,no.17
European Study of Prostate Cancer Screening-23-Year Follow-up

前立腺癌のランダム化されたスクリーニング研究(ERSPC)は1993年から実施され、16年のフォローアップでは前立腺癌死亡を相対的に20%有意に減らしたが、ベネフィットは過剰診断、過剰治療により相殺された。今回、中央値23年間のフォローアップを検討した。ERSPCは1993年、オランダ、ベルギーで開始され、スウェーデン、フィンランド、イタリア、スペイン、スイスなどに拡充して実施。55-69歳の166236人をPSAによるスクリーニング群72888人、対照群89348人に割り付け。スクリーニング群ではPSAを最低2回、多くの施設では4年毎に測定。23年間のフォローアップではスクリーニング群で12%、対照群では14%に前立腺癌が発生。リスク比1.30(1.26-1.33)で、1000人あたり前立腺癌の絶対数増加は27であった。23年間の前立腺癌の累積死亡は1.4%vs1.6%でリスク比0.87(0.80-0.95)で、前立腺癌の絶対リスク減少は0.22%であった。23年では456人のスクリーニングで1人の前立腺癌死亡を減らし、前立腺癌と診断された12人で1人の前立腺癌死亡を減らした。これはフォローアップ期間が長くなると小さくなっていた。

2025年11月5日水曜日

黄ブ菌菌血症の治療

JAMA,2025,vol.334,no.9
Management of Staphylococcus aureus Bacteremia A Review


2017年の時点で、耐性菌の中でMRSAは52%。黄ブ菌菌血症の90日死亡率は27%。高収入国では10万人あたり9.3-65人の黄ブ菌菌血症が発生。2348人を21年間観察した研究ではCVカテや心臓デバイスを植込した患者では54%に黄ブ菌菌血症を発症。
黄ブ菌は30%の人で、鼻腔、咽頭、皮膚、消化管に存在。細胞の表面にMSCRAMMs(接着性マトリックス分子認識因子)を介して接着後、ポリサッカライド、蛋白質、免疫システムから防御する細胞外DNAによるバイオフィルムを形成。さらに凝固因子、vonWF結合蛋白を活性化して膿瘍を形成。膿瘍が破裂すればさらに新しい膿瘍を形成を誘引する可能性がある。
感染フォーカスは骨関節部14.4%、血管内構造物17.8%、肺5.9%で尿路はほとんどない。特定できないものも20%を占める。
MSSAに対してはCEZまたは抗ブ菌PC(ナフシリン、フロキサシリン)が推奨。MRSAに対してはVCM、ダプトマイシン、セフトビプロールが推奨される。
低リスク、臓器障害のないMSSA、MRSAの菌血症に対しては2週間の抗菌薬治療、高リスク、臓器障害のある菌血症に対しては4-6週間の抗菌薬治療が必要。
感染源管理は重要。5325人の米国の報告では心臓デバイスの除去の有無での死亡率は5.6%vs16.4%、OR,0.31とされた。