2024年4月24日水曜日

転倒、認知機能低下をきたした82歳、女性

NEJM,2024,vol.390,no.14
Case Records of the MGH
Case 11-2024: A 82-Year-Old Woman with Fall and Cognitive Decline

8か月前まではウォーキングクラブに参加する自立した女性。徐々に歩行速度低下、5ヵ月前には階段が上れなくなる。3か月前、転倒し、他の病院で尿路感染症、SIADH指摘。2週間前にも転倒し、他院にて脳MRIで脳室拡大が指摘。また尿便失禁をきたす。
今回、転倒を繰り返すため、受診。右手背等に触れると強い痛みがあり、そのために動かせない程。両側のMP関節、PIP関節の紅斑、腫脹、疼痛あり。入院4日目に神経伝導検査が施行、左脛骨神経と両側腓骨神経のCMAPが低下しており、左尺骨神経CMAPも軽度低下。伝導速度や遠位潜時は正常であった。筋電図は異常な自発放電等なし。ビタミンB6は正常。

鑑別診断
ミオパチーや脱髄疾患は否定的。症状や電気生理検査からは多発単神経炎。多発単神経炎の最も多い原因は自己免疫性血管炎。結節性多発動脈炎PN。ANCA関連血管炎(GPA、MPA、EGPA)。クリオグロブリン血症関連血管炎。
他の自己免疫性疾患での血管性ニューロパチー:SLE、RA、SjS、PSS、MCTD、炎症性筋炎。
診断的検査
血液検査ではRAが示唆。腓腹神経生検:リンパ球性の小中血管炎による血管性神経障害
最終診断
RA、RAに伴う血管炎による多発単神経炎

2024年4月17日水曜日

4例の重度麻痺に対する植込み型血管内電極によるブレイン・コンピュータ・インターフェイスの安全性評価

JAMA Neurol,2023,vol.80,no.3
Assessment of Safety of a Fully Implanted Endovascular Brain-Computer Interface for Severe Paralysis in 4 Patients
-The Stentrode With Thought-Controlles Digital Switch(SWITCH) Study-

内頚静脈から上矢状静脈洞に16の電極のあるデバイスを前中心回に留置。豪の王立メルボルン病院にて、2019~2021年に5例のALS、PLSの患者(平均61歳、全例白人男性)が登録され、1例は横静脈洞欠損のため除外。全身麻酔で実施、手術時間232分、被爆時間43分。12ヶ月の観察期間中、死亡や重大な有害事象なし。静脈洞血栓の発生なし。電極の位置移動なし。4例ともアイ・トラッキングを伴うPC使用は何回かの訓練で可能となり、文字入力は16.6文字/分。最終的に1例はアイ・トラッキングなしにYes-Noの入力が正答率97.4%で可能となる。全例、満足感、充足感を表明された。

2024年4月10日水曜日

体動困難の84歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.20
Case Records of the MGH
Case 9-2024: A 84-Year-Old Man with Fall

3週間前に一過性肉眼的血尿。1週間前に失語、右上肢しびれ(その2週前よりリバロキサパン開始)。他院に入院し、MRIでは微小血管虚血性変化を認めるのみで、TIAと診断。経胸心エコーではLVEF:60%、中等度MR、軽度AR。今回、浴室で倒れていたのが発見されER搬送。全身的な筋力低下、ふらつきあり。既往歴はAF、心不全、COPD、高血圧、抑うつ状態、前立腺がん。発熱なし、左肘屈側に紅斑あり。同部はエコーにて血流のない低エコー病変(1.7×0.5×1.3㎝)があるも、形成外科にて特に外科的処置を要しないとのコメント。尿培養でMSSA検出。また、第1入院病日の血培でグラム陽性球菌が4検体中1つから検出。体部造影CTでは、左副腎に結節影、胸部大動脈瘤あり。第3入院病日、突如、胸痛を訴え、動けない状態。 

鑑別診断
尿培養でMSSA検出されているが、尿道カテーテルがない場合、血行性の感染を考えるべき。
診断的検査
CTA再検にて仮性胸部大動脈瘤の拡大(19→30mm)あり。血培のグラム陽性球菌はMSSA。
最終診断:MSSAによる菌血症、感染性大動脈瘤
治療:
VCM中止しCEZに変更。胸部大動脈瘤に対しては、ステントグラフト挿入術。6週間の抗菌薬点滴後、長期の経口抗菌薬治療へ。

2024年4月3日水曜日

高齢AF患者におけるカテーテルアブレーションによる認知症リスク、死亡リスク

J Am Geriatr Soc,2023,vol.71
Catheter ablation and lower risk of incident dementia and mortality in older adults with atrial fibrillation

米国のヘルスネットワークのTriNetXの2022年9月のデータを用いて検討した。65歳以上のAF患者でカテーテルアブレーションを実施したAF患者44施設、20747人、対照群としてカテーテルアブレーション非実施のAF患者58施設76万7千人から、プロペンシティスコアをマッチさせた20747人を抽出し、比較検討した。年齢は68.4歳、男性59.1%。経口抗凝固薬16.6%。5年間の観察期間で、新たな認知症発症はCA群253人、1.2%、非CA群439人、2.1%で、HR 0.52(0.19-0.61)で有意に認知症発症リスクを減らしていた。ADでHR 0.30(0.19-0.45)、脳血管性認知症でHR 0.54(0.35-0.82)であった。サブ解析ではほぼ全てのサブ因子でCA群で認知症リスクを減らしていたが、抗凝固療法なしでは有意差を認めず。総死亡についてはCA群で2447人11.8%vs3509人16.9%、HR 0.58(0.55-0.61)で有意に総死亡を減らしていた。