2023年5月31日水曜日

包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対する深部静脈の経カテーテル的動脈化治療

NEJM,2023,vol.388,no.13
Transcatheter Arterialization of Deep Veins in Chronic Limb-Threatening Ischemia

米国での40歳以上ではCLTIの有病率1.33%、新規発症0.35%で100万人がメディケアの対象となっており、20%が血管再開通治療の適応外となっており、また65歳以上ではCLTIで下肢切断で1年後の関連死亡率は50%とされる。CLTIで治療選択肢がない場合、深部静脈の経カテーテル的動脈化は血管内治療の手段である。先行研究としてPROMISE1が実施、され、今回、対象を拡大してPROMISE2として実施。対象はRutherford分類5・6の皮膚病変があり、独立した臨床医により血管撮影等で、通常の治療選択肢のない事が確認されたCLTIで、透析患者は除外せず、全身性感染症、皮膚病変の急速な増悪例、重度心不全は除外。手技は足底の静脈からエコーガイド下にセルジンガー法でカテを後脛骨静脈まで進める。また同側の大腿動脈から順行性にカテを進め、交差する部位で後脛骨静脈側にスネアを広げ、そこへ後脛骨動脈側から穿刺して瘻孔を作成。静脈弁切開をアブレーションで行い、最終的にカバーステントグラフトで、後脛骨静脈から末梢を拡張、動脈化。主要評価は6か月時点での切断回避+生存。105例で実施、104例で成功。102例で6ヶ月後評価。23例が切断、12例が死亡し、切断回避は0.66。サブ解析では透析患者19例では切断回避36.8%(透析外72.7%)、死亡36.2%(透析外8.6%)。皮膚病変完治25.4%、皮膚病変部分改善50.8%であった。

2023年5月24日水曜日

前立腺癌に対する、観察、手術、放射線治療後の15年での転帰

NEJM,2023,vol.388,no.17
Fifteen-Year Outocomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Prostate Cancer

限局性の前立腺癌の管理は議論の余地がある。ProtecT研究は1999年~2009年に英国で、50-69歳でPSA検査を契機に限局性前立腺癌と診断された1643人を無作為に積極的観察群、手術群、放射線治療群に割付し10年間フォローアップしたが、今回、さらに中央値15年フォローアップした。ベースラインのPSA:4.6(3.0-18.9)。最初の1年はPSAを3ヶ月毎、それ以降は6ヶ月毎測定。積極的観察群ではPSAが50%以上増加した時点で、改めて観察継続、精査、根治的治療、緩和ケアの選択する。手術群では断端陽性や術後PSA:0.2以上増加で、補助放射線治療を検討。放射線治療群では3D原体照射法74Gy、37区域後、抗アンドロゲン治療。全て群でPSA:10以上で骨シンチが推奨され、20以上で抗アンドロゲン治療を検討した。1643人中1610人(98.0%)がフォローアップを完遂。ベースラインではグリーソンスコア6のグリーソングレード1が76.0%であったが、現在のリスク層別化ツールでは24.1%が中等度リスク、9.6%が高リスクに相当した。15年の時点で主要評価項目の前立腺癌死は45例2.7%で、積極的観察群3.1%、手術群2.2%、放射線治療群2.9%で差を認めず。全死亡は356例21.7%で、3群に差を認めず。104例6.3%に転移を認め、積極的観察群9.4%、手術群4.7%、放射線治療群5.0%で、後2群は積極的観察群より少なかった。臨床的増悪はそれぞれ25.9%、10.5%、11.0%で認められた。積極的観察群は10年の時点で54.8%が根治的治療(手術or放射線)を受けていたが、15年の時点では61.6%であった。積極的観察群の24.4%が根治的治療および抗アンドロゲン治療を受けずに生存していた。サブ解析では65歳未満では放射線治療群より積極的観察群、手術群が前立腺癌死亡のリスクが低く、65歳以上では積極的観察軍より、手術群、放射線治療群が前立腺癌死亡が少なかった。
15年間のフォローアップでは前立腺癌死亡は治療の割付にかかわらず低く、限局性前立腺癌治療の選択に際しては利益と害を検討する必要がある。

2023年5月17日水曜日

HFpEF患者で、閉塞型睡眠無呼吸症候群合併での入院転帰、不整脈

J Innov Cardiac Rhythm Management,2022,vol.13,no.16
In-hospital Outcomes and Arrhythmia Burden in Patients with Obstructve Sleep Sleep Apnea and Heart Failure with Preserved Ejection Fraction

全米入院サンプル(NIS)の2016-2018年のデータを用いて後方視的に検討した。127773人のHFpEF患者の入院があり、OSA合併例20%、CPAP実施9%、HFpEF、OSA(+)は平均70歳、HFpEF、OSA(-)は76歳。プロペンシティスコアをマッチされたコホートでは、死亡リスクはOSA+でオッズ比1.33(1.27-1.37)で有意に高く、入院期間、入院コストも高かった。不整脈の合併の検討ではAFのオッズ比1.29(1.27-1.31)、AFL:1.13(1.09-1.17)、SSS:1.2(1.12-1.29)、VT:1.19(1.13-1.24)、3度AVb:1.16(1.01-1.33)と有意に増加。CPAPの実施で、これらの不整脈の夜間の減少は認めなかったが、心停止は有意ではないが、減少を認めた。

2023年5月10日水曜日

RSウイルス2価ワクチンの成人における有効性と安全性

NEJM,2023,vol.388,no.16
Efficacy and Safety of a Bivalent RSV Perfusion F Vaccine in Older Adults

米国では毎年、成人の3-7%でRSVの罹患があり、年17.7万人の入院、1.4万人の死亡と推計されている。RSVの2価ワクチンの第3相試験。RSV,preFワクチン群と対照群に無作為化し筋注。主要評価項目は1日以上続くRSV関連下気道症状2項目(咳、喘鳴、痰、息切れ、頻呼吸)と症状発現7日以内のRT-PCRでのRSV感染の確定。2021年8月~2022年7月に登録。ワクチン群17215人、対照群17069人、年齢67(59-97)歳。7ヶ月間の観察で、44人のRSV関連下気道症状2項目陽性があり、ワクチン群11人(1.19人1000人・年)vs対照群33人(3.58人1000人・年)でワクチン効果66.7%(96.66%信頼区間、28.8-85.8)。有害事象は9.0%vs8.5%で同様で、局所反応も1.4%vs1.0%、重篤な有害事象は0.5%vs0.4%であった。