2023年11月29日水曜日

抑うつ状態と低血圧をきたした13歳少年

NEJM,2023,vol.388,no.21
Case Records of the MGH
Case 16-2023:A 13-Year-Old Boy with Depression and Hypotension

ADHD、境界型パーソナリティ障害、大うつ病の既往のある少年。抑うつ状態の悪化、自傷行為でERへ搬送。グアンファシン、ルラシドンを含む薬物治療中。自傷行為と精神不安定が続いていた。ER入院翌日朝はBP146/87、HR52であったが、その12時間後、BP69/39、HR88で立ち眩みの訴え。顔面蒼白あり。血液・尿のスクリーニング異常なし。腹部造影CT異常なし。輸液治療、VCM点滴開始。

ショックの鑑別診断:distributive shock, hypovolemic shock, cardiogenic shock, obstructive shock
低血圧だが、頻脈、発熱、他の検査異常を伴っておらず、低血圧の前に一過性の血圧上昇、徐脈を伴っていた。以上から、グアンファシン、クロニジンによる交感神経系の抑制による低血圧を疑う。
→グアンファシンのボトルが患者のベッドサイドに放置された時間帯があり、本人が過剰に内服した事と証言された。

2023年11月22日水曜日

好酸球数で定義された2型炎症のCOPDでのデュプリマブの効果

NEJM,2023,vol.389,no.3
Dupilumab for COPD with Type 2 Inflammation Indicated by Eosinophil Counts

好酸球増多を伴うCOPDでのデュプリマブ(IL-4、IL-13を阻害)の効果をBOREAS研究として実施。Phase3、多施設、二重盲検試験として実施。24か国、275施設で実施。対象は1秒率70%以下、気管支拡張剤吸入後の対標準1秒量30~70%、MRCスケール2以上で、好酸球数≧300、少なくとも2回以上の中等度急性増悪or1回以上の重度急性増悪歴があり、吸入ステロイド+LAMA-LABA治療中。1対1でデュプリマブ300mg、プラセボに割付。サノフィ社の資金提供あり。主要評価項目はCOPDの中等度、重度急性増悪。デュプリマブ群468例、対照群471例、年齢65.1歳、男性66.0%、白人84.1%、喫煙既往者70%、現喫煙者30%、好酸球数平均401、FENO24.33ppb。52週間観察され、COPD急性増悪は0.78vs1.10、レート比0.70(0.58-0.86)で有意に急性増悪を減らした。12週、52週でのベースラインからの1秒量の改善も有意に良好。ベースラインからのSGRQスコアも有意に改善。

2023年11月15日水曜日

成人での急性限局性細菌性腎炎の臨床特徴

Scientific Reports,2022,vol.12
Clinical features of acute focal bacterial nephritis in adults

急性限局性細菌性腎炎AFBNは急性腎盂腎炎と腎膿瘍の中間的な病態と理解され、小児での報告例は多いが、成人例ではまれである。中国河北省石家荘市にある河北大学第2病院で2014-2019年にAFBNと診断された238例について検討した。AFBNは全例、造影CTで楔形の非造影区域があるものor非造影のmassがあるものとした。中央値46.9歳、DM28.6%、尿管結石17.2%、前立腺疾患4.6%を合併。症状は発熱が主で、抗菌薬開始後も4日以上持続していた。尿培養陽性38.2%、血培陽性6.3%のみ。大腸菌が86.7%で最多。AFBNが両側性のもの48.7%であった。エコー検査は過去の報告では感度90%、特異度86.4%で腎腫大を認めるとされてきたが、本検討では腎腫大は21.9%に認めるのみで、低エコーのmassは2例0.84%のみであった。
急性腎盂腎炎で抗菌薬開始4日後も発熱が持続する場合はAFBNを疑い、その場合、造影CTがゴールドスタンダードであるが、MRI検査も良いオプションと考えられる。(MRIでT2WIで高信号、T1WIで低信号のmassとして描出される)

2023年11月1日水曜日

成人の自己免疫性脳炎の誤診

NEJM,2023,vol.80,no.1
Autoimmune Encephalitis Misdiagnosis in Adults

多くの論文では自己免疫性脳炎の見落としが強調されている。自己免疫性脳炎は中毒性や代謝性脳症、機能性神経障害、一次性精神疾患、神経変性疾患、腫瘍、てんかん等との鑑別困難な場合があり、メイヨー・クリニック、オックスフォード大学などの専門センターでの自己免疫性脳炎の誤診を後方視的に検討した。18歳以上の自己免疫性脳炎と診断された393例を後に精査した結果、107例27.2%に誤診が発見された。107例は中央値48歳(35.5-60.5歳)、発症から正しい診断までの期間は16(7-40)ヶ月。41%に自己免疫性疾患の合併を伴い、その内77%が自己免疫性甲状腺疾患であった。48%が緩徐進行性であった。72%が自己免疫性脳炎の診断基準(2016年の基準のパート1、2)を満たしていなかった。
誤診されたものでは62例中24例で甲状腺自己抗体が陽性。神経抗体陽性は105例中血清で48例46%が陽性(GAD65抗体14例、VGKC抗体10例、NMDAR抗体10例など)、髄液91例中7例(NMDAR抗体4例、VGKC抗体1例、GAD65抗体1例等)が陽性。脳波では79例中31例で異常所見を認め、16例でてんかん様所見を認めた。髄液オリゴクローナルバンド陽性は82例中7例。髄液中の抗NMDAR陽性は4例で、HIV関連脳症、異形成アストロサイトーマ、機能性神経障害、前頭側頭型認知症であった。誤診の結果、免疫治療は84例に実施され、内17例に治療関連の有害事象を認めた。誤診に至った理由は自己抗体の過剰な解釈50%、画像が自己免疫性脳炎と一致していた14%、異常髄液所見8%であった。
甲状腺自己抗体は成人で13%、60歳以上で20%であり、神経自己抗体も5%以上に発現するとされ、神経自己抗体を解釈する際、事前確率(有病率)が低い=陽性予測値は高くないこと、検査方法(ウエスタンブロット法、ラインブロット法、イムノブロット法では偽陽性も多く、慎重に解釈する必要がある。