2023年7月19日水曜日

僧帽弁閉鎖不全での肺高血圧の頻度およびその転帰への影響

BMJ Open Heart,2023,vol.10
Prevalence of pulmonary hypertension in mitral regurgitation and its influence on outcomes

オーストラリアでの国家レベルでのエコー登録でのデータ(NEDA)を用いて検討した。18歳以上、LVEF、RVSP(右室収縮期圧)のデータが揃っているもの、中等度以上のMRのものを検討。2000-2019年で106万人のデータがあり、9683人が条件を満たし検討。PHTなし群(RVSP<30㎜Hg)9.9%、境界群(PVSP30-39.9)30.5%、軽度PHT群(RVSP40-49.9)32.7%、中等度PHT群(50-59.9)16.4%、高度PHT群(RVSP≧60)10.5%。RVSPが高い程、年齢、女性、AF、AR、ASの頻度が有意に高率であった。1年死亡率、5年死亡率はPHTなし群は8.5%、33.3%に対し、重度PHT群では39.7%、79.8%で、OR:4.64(3.55-6.08)、5.18(3.98-6.73)であった。年齢、性別等で調整したハザード比では、全死亡でPHTなし群に対し重度PHT群でHR2.86(2.48-3.31)、心血管死のHR1.62(1.27-2.06)であった。MRでRVSP>34mmHgとなると、死亡のHR1.27(1.00-1.36)で死亡リスクが高くなっていた。

2023年7月12日水曜日

AFを伴う脳梗塞での抗凝固療法の早期再開vs非早期再開

NEJM,2023,vol.388,no.26
Early versus Later Anticoagulation for Stroke with Atrial Fibrillation

急性期脳梗塞後のDOACを導入するタイミングが脳梗塞再発や出血に関与するかははっきりせず、規模の小さなRTCがあるだけである。いくつかのガイドラインではDOAC再開をTIA、軽症、中等症、重症で1,3,6,12日後を推奨している。今回、ELAN研究として検討した。
前向きのRTCで、早期再開群、非早期群に1対1に割付。直径15mm以下の脳梗塞を小、MCA、ACA、PCAの皮質枝の領域の梗塞を中、これらの領域の梗塞or脳幹or15mm以上を大とし、早期再開群では小・中で48時間で再開、大で6-7日目に再開。非早期群では小で3-4日目、中で6-7日目、第で12-14日目再開とした。主要評価項目は30日以内の脳梗塞再発、全身性塞栓症、頭蓋外の重大出血、症候性頭蓋内出血、血管疾患による死亡の複合。15か国、103施設で36643例がスクリーニングを受け、2013例がITT解析された。早期群1006例(77歳、女性45.6%)、非早期群1007例(78歳、45.3%)。CHA2DS2-VAScスコアは中央値5点、脳梗塞サイズは小37.6%、中39.7%、大22.8%。入院時のNIHSS5点、ランダム化時点3点、血栓溶解療法39.7%、血栓除去術21.0%。30日後の主要評価項目の2.9%vs4.1%で調整リスク差-1.18(-2.84-0.47)であった。症候性頭蓋内出血は0.2%vs0.2%。脳梗塞再発1.4%vs2.5%、リスク差-1.14(-2.41-0.13)二次評価項目の90日後の複合イベントでは3.7%vs5.6%、リスク差-1.92(‐3.82~-0.02)であった。

2023年7月5日水曜日

筋力低下、筋痛の44歳女性

NEJM,2023,vol.388,no.16
Case Records of the MGH
Case 12-2023: A 44-Year-Old Woman with Muscle Weakness and Myalgia

5年前に関節リウマチと診断され、4年前よりヒドロキシクロロキンで治療開始するも肝斑で中止。MTXで治療するも効果なく、レフルノミドで症状緩和。6か月前より上肢、大腿に筋痛があり、上肢は頭より上に上げられなくなり、整髪や化粧が不可能となる。筋痛は運動や1日の終わりに悪化。上肢、下肢にジリジリするシビレ出現。3か月前にリウマチ科受診。CK:422、LDH:509、ANA320倍、抗U1-RNP抗体陽性。C3、C4正常、dsDNA抗体陰性、Sm抗体陰性。アザチオプリン開始。既往歴にバセドウ病、副甲状腺機能低下症、潜在性結核あり。姉妹にSLEあり。

鑑別診断:自己免疫疾患、オーバーラップ症候群、特にRAと特発性炎症性ミオパチー。
MCTD(ただし、U1-RNP抗体の力価不明)。
サルコイドーシス、アミロイドーシス(両方とも、近位筋筋力低下、手根管症候群によるシビレ)
薬剤性:イソニアジド、メチマゾール、ヒドロキシクロロキンは筋炎様の副作用あり
代謝性:甲状腺ホルモン、低カルシウム血症など
診断:血清Ca値5.9、P値4.5、PTH値35pg/mL→副甲状腺機能低下症による低Ca血症
筋MRI:T1WIでの脂肪浸潤、筋委縮なし。各種筋炎自己抗体検索(抗MDA-5抗体、抗SRP抗体など)→陰性
治療:グルコン酸カルシウムの静注等で症状改善。