2022年10月26日水曜日

肺機能が保たれ、症状のある喫煙者における気管支拡張剤

NEJM,2022,vol.387,no.13
Bronchodilators in Tobacco-Exposed Persons with Symptoms and Preserved Lung Function

喫煙歴があり、有意な呼吸器症状がある一方で、スパイロ検査で呼吸機能に大きな異常がない場合でも薬物治療をする事が多いが、そのエビデンスは乏しい。今回、RETHING研究のデータと用いて検討した。40-80歳、10パック年以上、CATスコア≧10、FEV1/FVC>0.70、FVC≧予測値70%を対象とし、喘息や肺疾患のあるもの、LAMA+LABAの定期使用、LABA+ステロイドの定期使用者などは除外。SABA使用者は30日のウォッシュアウト。参加者をインダカテロール27.5μg+グリコピロレート15.6μg×2回吸入とプラセボ群に1対1に割付。主要評価項目は12週後のSGRQスコア4点以上低下、二次評価項目はCATスコア2点以上低下など。780例が登録され、535例がランダム化、LABA、LAMA吸入薬群261例、プラセボ群274例に割付。ベースラインは58.8±9.7歳、男性48.6%、現喫煙者64.1%、BMI:29.5±5.1、CATスコア:17.6、SGRQスコア:38.2、吸入後%FVC:93.6、FEV1/FVC:0.78。ITT解析でSGRQスコアが4点以上改善は、56.4%vs59.0%で有意差なし。%FEV1の変化量は2.48%ポイントvs-0.09%ポイント、最大吸気量の変化量は0.12Lvs0.02Lであった。肺機能が保たれている、症状のある喫煙者において、LABA、LAMA吸入療法は自覚的な呼吸器症状を改善しなかった。

2022年10月19日水曜日

慢性腎臓病でのレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系阻害薬に関連した高カリウム血症での同薬を中止での臨床転帰

Am J Kidney Dis,2022,vol.80
Hyperkalemia-Related Discontinuation of Renin-Angiotensin-Aldosterone System Inhibitors and Clonical Outcomes in CKD : A Population Based  Cohort Study

CKDでのレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬の抗蛋白尿作用、CVイベント抑制効果は確立しているが、CKDにおける慢性の高カリウム血症ではRAAS阻害薬の中止、減量が一般的であるが、この戦略の長期予後は不明であり、住民ベースのコホート研究で検討した。カナダ、マニトバ州での診療データ(18歳以上)、オンタリオ州の診療データ(66歳以上)を用いて検討。eGFR<60のCKD患者で、RAAS阻害薬投与中でK≧5.5の初回高カリウム血症が指摘されたもので、90日が経過したもの(急性の高カリウム血症による死亡や転帰不良を除外するため)を対象とし、その時点でRAAS阻害薬を継続、中止群で検討。主要評価項目は全死亡。二次評価項目はCV死亡、CVイベント、透析導入。時間依存性共変量での解析も実施。マニトバコホートは7200人、74歳、女性47.5%、eGFR40.9、オンタリオコホートは71290人、79歳、女性51.7%、eGFR41.2。中止群は継続群に比して有意に高齢でカリウム値高値であった。カプラン・マイヤー曲線での生存率は継続群が有意に良好で、年齢や合併症、併用薬、カリウム値、eGFR等で調整したハザード比では、全死亡では継続群に比して中止群はマニトバでHR1.32(1.22-1.41)、オンタリオで1.47(1.41-1.52)で中止群の方が不良であり、CV死亡HR1.28、CVイベントHR1.17、透析導入HR1.65でどちらもコホートも同様の結果であった。時間依存性共変量での解析も同様の結果。またマニトバで35%、オンタリオで40%の患者がRAAS阻害薬を最大量で使用していたが、最大量継続、減量、中止で検討しても、透析導入を除く全死亡、CV死亡、CVイベントでは最大量継続が有意に良好であった。ベースラインのカリウム値が5.8以上や、AKI、敗血症でも同様の結果であった。

2022年10月12日水曜日

2型糖尿病での血糖降下

NEJM,2022,vol.387,no.12
Glycemia Reduction in Type 2 Diabetes -Glycemic Outcomes-

メトホルミンの次の血糖降下薬の選択において、長期的な比較研究は多くない。今回、GRADE研究として検討した。30歳以上で診断され、発症後10年未満、メトホルミンを少なくとも500mg以上内服中で、他の薬剤を使用していないものを対象とした。ランダム化前の準備期間6-14週でメトホルミンは最低1000mgまで増量。次に無作為にグラルギン20単位、グリメピリド1-8mg、リラグラチド0.6-1.8mg、シタグリプチン50-100mgに割付。主要評価項目はHbA1c:7.0%未達成。2013-2017年に登録され、57.2±10.0歳、男性63.6%(41.5%が60歳以上)、DM歴4.2年、無作為化時のメトホルミン1944mg、平均HbA1c:7.5±0.5%。平均5.0年観察(85.8%が4年以上)。最終観察時のHbA1c:7.0%未達成はグラルギン67.4%、グリメピリド72.4%、リラグラチド68.2%、シタグリプチン77.4%で、グラルギンに比してグリメピリド、シタグリプチンは有意に不良であった。4年の時点での平均のHbA1cはグラルギとリラグラチド7.1%、シタグリプチン7.2%、グリメピリド7.3%で差は小さかった。

2022年10月5日水曜日

ARBは軽度認知機能障害(MCI)から認知症への進行するリスクを下げる事に関連している

Hypertension,2022,vol.79
Angiotensin Receptor Blockers Are Associated With a Lower Risk of Progression From Mild Cognitive Impairment to Dementia

アンギオテンシンⅡ、Ⅳはそれぞれの受容体を介して神経保護的に作用する可能性が指摘され、ARBはAβ、タウの蓄積、脳萎縮、認知機能低下を抑制する報告がある。しかし、これらはMCIから認知症への進行抑制で、ACE阻害薬に比してARBが優れているかは明確ではない。今回は後方視的コホートで検討した。アルツハイマー病画像診断イニシアチブ(ANDI)のデータベースから、高血圧を有しMCIと診断された403人(74.0±7.3歳、女性37.7%)で中央値3.0年観察し、39.2%が認知症に進行した。認知症への進行のARBの調整ハザード比はACEIに比して0.45(0.25-0.81)p=0.023、他の降圧剤に比して0.49(0.27-0.89)、降圧剤なしに比して0.31(0.16-0.58)と有意にリスクを減らした。他の認知機能スコアである、MMSE、ADAS-Cog-13もARBがACEI、他の降圧剤に比して、低下が軽度であった。