2022年9月28日水曜日

父親の出生前の喫煙の曝露と自閉症スペクトラム障害の関連の可能性

Autism,2021,vol.25,no.7
Prenatal Exposure to Paternal Smoking and likelihood for Autism Spectrum Disorder

自閉症スペクトラム障害(ASD)は世界で1.6-3.0%の有病率の神経発達障害で、社会的コミュニケーションの障害と制限された反復的行動、興味が特徴とされる。韓国の2つのコホート研究で、ASDに対する父親の喫煙の影響を検討し、複製サンプルを使用し父親の喫煙タイミングがリスクに影響するかも検討した。DS研究では2009-2011年に韓国で実施したSAFARI研究の15981人中の10503人、RS研究では2007-2008年にチョナン市で実施したアンケート調査30552人のデータで検討した。ASDの表現型はアンケート調査ASSQを用いて検討し、ASSQスコア(0-54)が15以上を高可能性スコア、10-14を中可能性スコアとした。DS、DSで平均9.61歳、9.19歳で、ASD傾向中6.9%、7.2%、高4.3%、5.3%であった。DSでの父親の妊娠中の喫煙でのASD傾向がある子は修正オッズ比1.27(1.10-1.47)でRSでもaOR:1.26と同様であった。DSでは家族の精神疾患歴が父親の喫煙なしで4.49%、喫煙あり7.08%で有意に関連していた。喫煙は精子に突然変異を起こす事、妊娠中の母親への間接喫煙による毒性効果がASDリスクに関連している可能性があり、禁煙は子供のASDリスクを減らす可能性があるかもしれない。

2022年9月21日水曜日

昏迷、頭痛、発熱をきたした32歳男性

NEJM,2022,vol.387,no.10
Case Records of the MGH
Case 27-2022: A 32-Year-Old Man with Confusion, Headache, and Fever

10年来のベーチェット病の治療歴のある男性。2週間前からの昏迷。子供の年齢を正しく答えられない、日付を正しく言えないなどの症状で気づかれる。頭痛と項部硬直あり。2日前には発熱もあり。1日前より昏迷、眠気の悪化を認め受診。過去にベーチェット病に関連した肺塞栓、腸骨動脈瘤解離、ぶどう膜炎、腎梗塞の既往あり。ベーチェット病の治療にはアザチオプリン、シクロスポリン、プレドニゾロンあり、2年前に免疫抑制剤からアダリムマフ→インフリキシマブ→ゴリムマブに変更。アピキサバン中止72時間後に髄液検査施行。髄液蛋白正常、細胞数88(リンパ球97%)、CT、CTアンギオ異常なし。バンコマイシン、セフトリアキソン、アンピシリン、アシクロビル開始。発熱は改善したが、患者の認知機能は改善なし。髄液再検査、細胞数284(リンパ球72%、好中球13%)HSVのDNA検査陰性、クリプトコッカス抗原、エンテロウイルスRNA陰性。

鑑別診断
急性昏迷性脳症:自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎、抗LGI1受容体脳炎など)
急性脳炎:神経ベーチェット病による無菌性髄膜炎。ベーチェット病での小血管炎による脳炎は多い合併症ではない。ベーチェット病に合併する脳静脈洞血栓症。
TNF阻害薬による中枢神経合併症(脱髄病変により運動、感覚まれに認知機能が障害される)
感染症による脳炎:ニューイングランドでは東部馬脳炎、西ナイル熱など。リステリア症。
原発性CNS血管炎

診断:入院5日目のMRI、FLAIR画像で、橋、中脳、視床、右レンズ核、右内包、右尾状核に高信号→神経ベーチェットによる脳炎を支持する所見。5日目より陰部潰瘍の悪化が出現し、ベーチェット病を支持する症状。
治療:メチルプレドニゾロン静注。本例ではその後、ステロイド、ゴリムマブにMTXを追加。
注意事項:ベーチェット病の眼病変に効果のあるシクロスポリンは神経ベーチェットのリスクに関連があるとされる。

2022年9月14日水曜日

肛門周囲、陰茎の潰瘍、肛門痛、皮疹を認めた31歳男性

NEJM,2022,vol.387,no.6
Case Records of the MGH
Case 24-2022 : A 31-Year-Old Man with Perianal and Penile Ulcers,  Rectal Pain, and Rash

9日前からの肛門周囲の潰瘍で発症。その後、陰茎の潰瘍、肛門痛に増悪。肛門周囲、陰茎の潰瘍は周囲が硬く隆起。直腸からの出血、悪臭のある分泌物あり。その後、悪寒、発熱あり。体幹、手掌、足底に膿疱、水疱をきたす皮疹あり。口腔内には病変なし。その後、圧痛のある鼠径部リンパ節腫脹。肛門痛は強く、座れないほど。
患者は2人のルームメイト、猫と同居。14年前に2期梅毒の診断を受けPCGでの治療歴あり。口唇ヘルペスで時々バラシクロビル内服あり。さらにエムトリシタビン、テノホビルのHIV暴露前予防内服(PrEP)を受けている。2週間前にカナダへ旅行し男性のパートナーと予防具なしに性行為をしている。トレポネーマ抗体陽性、RPRは1:1陽性。血液HIV検査陰性、尿・直腸粘膜の検体での淋菌、クラミジアの核酸増幅検査陰性。

鑑別診断:陰部ヘルペス、帯状疱疹、伝染性軟属腫、淋病、梅毒、性病性リンパ肉芽腫、軟性下疳。梅毒では陰茎潰瘍、直腸炎では疼痛は乏しく、否定的。
本例ではカナダでの性交渉の相手二人も同様の症状が出ている事も判明。マサチューセッツ州の公衆衛生研究所のリアルタイムPCR検査およびCDCにも検体を送り、前者では非天然痘オルソポックスウイルスDNA陽性、後者でサル痘ウイルスのPCRテスト陽性が判明。最終診断:サル痘。経過は症状は自然に軽快、入院9日で全ての皮疹が痂皮化し退院。

2022年9月7日水曜日

若年2型糖尿病での週1回デュラグルチド

NEJM,2022,vol.387,no.5
Once-Weekly Dulaglutide for the Treatment of Youths with Type 2 Diabetes

若年の2型DMではメトホルミンの血糖コントロール不良例が多いことがTODAY研究で示され、成人より若年のT2DMではインスリン抵抗性やβ細胞機能障害が重度であるとされる。若年T2DMのGLP-1作動薬であるデュラグルチドの効果を検討した(AWARD-PEDS研究)。フェイズ3の無作為化RCTで、9カ国46施設で実施。研究のプロトコル、統計学的解析はスポンサーであるイーライリリー社がデザインした。10歳以上18歳未満で、BMIが85パーセンタイル以上、HbA1c6.5-11.0%のT2DMで、4週の観察期間後、プラセボ、デュラグルチド0.75mg、1.5mg群に1:1:1で割付。主要評価項目は26週後のHbA1cの変化。154人(14.5±2.0歳、女性71%、BMI:34.1±8.8、、メトホルミンのみあり63%、メトホルミン+基礎インスリンあり25%、HbA1c:8.1±1.3%)が無作為化され、26週95%、52週90%が完遂した。26週の時点で、HbA1cの変化量は+0.6pts、-1.2、-1.5でデュラグルチド群で有意に低下。HbA1c<7.0の割合は14%、55%、48%で有意に多かった。26週でのBMIの変化量は0.0、-0.2、-0.1で差は認めず。