2023年4月26日水曜日

小児での髄膜炎菌血清型Bワクチンの効果

NEJM,2023,vol.388,no.5
Effectiveness of a Meningococcal Group B Vaccine(4CMenB) in Children

髄膜炎菌血清型Cワクチン導入後、欧州では血清型Bの髄膜炎菌が侵襲型髄膜炎菌感染症の主原因となっている。2013年に欧州で4成分B型髄膜炎菌ワクチン(4CMenB)が認可され、2015年9月よりスペインで使用可能となった。2015年10月~2019年10月までの期間で、生後60ヶ月未満の小児に対する接種を行い、その効果を多変量条件付きロジスティック解析にて検討した。
スペインでの感染症サーベイランスでは侵襲性髄膜炎菌感染症は全例報告となっており、1例報告の度に4例の誕生日や居住地をマッチさせた対照群をピックアップ検討した。髄膜炎菌感染症患者306例に対し対照群1224例で、患者群ではワクチン接種なし88.6%、接種あり11.4%、対照群では接種なし75.7%、24.3%で、条件を整えたオッズ比では1回以上接種で髄膜炎菌感染0.32(0.21-0.50)、フル接種では0.24(0.13-0.43)で、それぞれワクチン効果は68%、76%であった。

2023年4月19日水曜日

慢性化した小児喘息での肺機能の成長と低下のパターン

NEJM,2016,vol.374,no.19
patterns of Growth and Decline in Lung Function in Persistent Childhood Asthma

1993年-1995年に登録、実施された5-12歳の小児を対象に実施されたCAMP研究(ブデソニド、ネドクロミルの吸入療法のRTC)での長期フォローで喘息を罹患した児のその後の肺機能を検討した。1年に最低1回スパイロ実施。684人が検討可能。1秒量の成長カーブが正常の25%パーセンタイル以上を正常成長、それ以下を低成長、二つでの測定点で正常より1秒量が早く低下する場合を早期低下とした。23-30歳(26.0±1.8歳)までフォローされ、684人中、正常成長、早期低下なしは170人25%で、それ以外の514人75%は異常パターンを示した。178人26%は正常成長、早期低下、160人23%は低成長のみ、176人26%は低成長、早期低下を示した。これらは最大の肺機能の年齢に有意差を認め、男性が有意に多く、登録時のBMIが関連していた。また登録時の1秒量も関連していた。最終測定時(26.0±1.8歳時)の気管支拡張剤吸入後の肺機能で11%がFEV1/FVC<0.7のGOLD基準のCOPDを満たし、低成長群で%FEV1が50-80%のStage2が4%、低成長+早期低下群で11%であった。

2023年4月12日水曜日

プロテインC活性が低い患者でのワーファリン誘発性皮膚壊死

Acta Medica Iranica,2016
Warfarin-Induced Skin Necrosis in Patients With Low Protein C Levwls

後天的なプロテインC活性低下は、急性塞栓症、ワーファリン治療、肝臓病、ビタミンK不足、DIC、敗血症などでも起こりうる。この様な場面での抗凝固療法は皮膚壊死が起こりうる。
50歳女性、運動失調、構音障害、めまい、嘔吐で発症。心房細動あり。CT、MRIで上小脳動脈領域の脳塞栓。CHADS-VAScスコア5点。プロテインC活性0.39(0.7-1.4)。ワーファリン5㎎/日より開始。ワーファリン開始後の2日目、左ふくらはぎに疼痛を伴う後半で周囲に血性水疱あり。WISNと診断され、ただちに、未分画ヘパリン、ビタミンK、新鮮凍結血漿にて治療開始。症状改善し、ダビガトランにて治療継続。
WISNはワーファリン治療患者の0.01-0.1%に発生。中年女性に多く、胸部、臀部、大腿に多い。男性では陰茎にも発生。突然発症し、疼痛を伴い、境界明瞭な出血成分を伴う紅斑、浮腫性紅斑の場合はWISNを疑い早期に治療を開始すべき。ワーファリン治療を開始する前にプロテインC、S、高リン脂質抗体のスクリーニングを実施すべき。

血栓塞栓症予防での抗凝固療法、プロテインC欠損症でのワーファリン誘発性皮膚壊死の一例

BMJ Case Rep,2017
Anticoagulation therapy for thromboembolism prevention: a case of warfarin-induced skin necrosis in the setting of protein C deficiency

41歳男性。DVT、肺塞栓の既往あり。5年前に肺塞栓の際にプロテインC欠損症と診断。プロテインC活性12%。37歳時に下大静脈フィルター留置。ワーファリン治療中であったが、皮膚の皮下出血を繰り返すために、治療コンプライアンス不良であった。
今回、PT-INR:0.90で、PT-INR:2-3を目標にワーファリン再開。4日後、両下肢に痛みを伴う皮下壊死が出現、増悪。プロテインC欠損症があるため、ワーファリン誘発性皮膚壊死WISNが疑われ、リバロキサパンに変更。あまり症状改善なし。また、彼の健康保険がリバロキサパンを保険外としたため、同薬内服できず。症状増悪。その後、再入院し、下肢エコーでは静脈にプラーク、閉塞は認めず。エノキサパンで治療開始。その後、ダビガトランに変更し、治療継続。疼痛、皮膚壊死は改善した。

2023年4月5日水曜日

重症市中肺炎でのヒドロコルチゾン治療

NEJM,2023
Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia

市中肺炎のグルココルチコイドの有用性については、過去のメタ解析では生存率の改善はないもの入院期間を短縮できた、別の解析ではバイアスのリスクはるものの死亡を減らしたと報告された。今回、重症市中肺炎でICU入室した患者で、28日後の全死亡を改善するか検討(CAPECOD研究)。二重盲検のRCTで、フランスの31施設で実施。18歳以上、P/F比300以下の市中肺炎を対象。二重盲検で1対1に割付し、実薬群はヒドロコルチゾン200㎎を4日間、4日目に評価し、さらに条件を満たす場合、漸減して14日間継続。主要評価項目は28日後の全死亡。2015年10月から登録を開始、2回目の中間解析(ヒドロコルチゾン群401例)で、有意差が見られ、試験の終了が勧告された。800例が割付られ、ヒドロコルチゾン群400例、対照群395例で解析された。対照群で年齢67(58-78歳)、COPD26.6%、挿管人工呼吸21.5%、NIV22.8%、ネイザルハイフロー41.0%、リザーバマスク14.7%。昇圧剤治療12.9%、ICU入室まで5.2時間、ICU入室から介入まで14.6時間。結果は28日後の死亡で6.2%vs11.9%(p=0.006)、90日の死亡9.3%vs14.7%、28日の累積挿管人工呼吸HR:0.59(0.40-0.86)、累積NIVでHR:0.60(0.32-1.15)。昇圧剤使用HR:0.59(0.43-0.82)。消化管出血は2.2%vs3.3%、HR:0.68(0.29-1.59)。7日間のインスリン使用量35.5単位vs20.5単位。ヒドロコルチゾンは市中肺炎の28日後の全死亡を減らした。