2023年9月27日水曜日

虚血性の左室機能低下でのPCI後の不整脈、死亡について-REVIVED-BCIS2研究での事前に明示された解析より

Circulation,2023,vol.148
Arrhythmia and Death Following Percutaneous Revascularization in Ischemic Left Vntricular Dysfunction: Prespecified Analyses From the REVIVED-BCIS2 Trial 

REVIVED-BCIS2研究では虚血性の左心機能低下でPCIは全死亡および心不全入院を減らさなかった。同研究で、全死亡+重大な不整脈イベントが減らせるか検討した。LVEF<35%の虚血性心疾患で、PCI+薬物療法群、薬物療法群のみの1対1に割付。経過中、ICDなどの植込みはそれぞれの裁量。主要評価項目は全死亡+予防された突然死(ICDの正常な作動、心停止からの救命)。2695人がスクリーニングされ、700例がランダム化され、347例がPCI群(70.0±9.0歳、男性87.0%、ICD13.0%、CRT-D9.0%、AF16.9%)、353例が薬物治療のみ群(OMT群、68.8±9.1歳)に割付。中央値41ヶ月観察され、全死亡+予防された突然死はPCI群vsOMT群で41.6%vs40.2%で、修正ハザード比1.02で有意差を認めず。二次評価項目の心血管死+予防された突然死で、ハザード比0.94で有意差を認めず。

2023年9月13日水曜日

発熱、下肢痛の18歳男性

NEJM,2023,vol.389,no.7
Case Records of the MGH
Case 25-2023: An 18-Year-Old Man with Fever and Foot Pain

ドラベ症候群(Naチャンネルα1サブユニットをコードする遺伝子変異による疾患)による痙攣を生後6か月で発症。発達障害、歩行障害を伴う。
2ヵ月前、両親は転倒後に左下肢の腫脹に気付き、ER受診しXPで異常なしとされた。2週前、左下肢腫脹が増悪し、下肢のMRIが施行され、足部に骨髄の浮腫が指摘されたが、骨折や関節水腫は認めず。副鼻腔炎の疑いでAMPC開始。その後38.3度の発熱。XPでは第2中足骨、立方骨に骨折あり。痙攣発作頻度が2-3日に1回から1日に2-3回に増加。歯肉炎があり、2週前より歯肉、鼻腔からの出血増加。軟便持続。CRP:2.39→7.4に悪化。鼻咽腔での感染症検査(SARS-CoV2、アデノ、ヒトメタニューモ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RS、ライノ、エンテロ等陰性。新たに圧痛のない紫斑が指、手、つま先に出現。患者はケトン食を実施していたが、7か月前にCOVID19を発症し、その際、嘔吐が改善するまでケトン食を減らしていた。

鑑別診断
骨髄炎
悪性疾患(リンパ腫、骨肉腫、ユーイング肉腫)
歯肉炎→ビタミンC欠乏、ビタミンC欠乏では血管脆弱性から出血傾向。ビタミンCは骨格系に重要な役割を果たし、骨芽細胞の遺伝子発現に関与し、ビタミンC欠乏では骨折リスクが増大。
診断的検査:ビタミンC濃度:0.1mg/dL以下(正常0.4-2.0)、ビタミンB1:68nmol/L(70-180)、B6:2μg/L(5-50)、25ヒドロキシビタミンD:23ng/mL(20-80)
診断:(ケトン食に関連した)ビタミンC欠乏

2023年9月6日水曜日

SARS-CoV-2感染の脳や記憶への長期の影響

Cell Death Discovery,2023,vol.9
Long-term effects of SARS-CoV-2 infection on human brain and memory

COVID-19後、様々な症状が2ヶ月以上続く場合をLong-COVID症候群と呼ぶ様になっており、COVID-19後10-15%に見られるとされる。SARS-CoV-2の脳への考えられる感染経路。1)鼻腔粘膜細胞の多くにはACE2受容体が発現。嗅神経から直接、脳へ侵入。2)感染量が多い場合、全身のACE2受容体、可溶性ACE2受容体に結合し、BBBを細胞結合を介してまたはBBB周囲を破壊し脳へ侵入。3)結膜炎→視神経→脳へ侵入などが考えられている。脳内では脈絡叢細胞、灰白質や嗅球でACE2受容体が発現している。さらに嗅神経等に発現しているNRP1などもSARS-CoV-2感染に関連している。
SARS-CoV-2感染前後の脳MRIを比較して、脳容積減少のエビデンスがある。SARS-CoV-2は他のウイルスに比してパーキンソニズムの増加、アルツハイマー病様の神経病理を引き起こすエビデンスがある。
SARS-CoV-2感染ではウイルス複製とは別にスパイク蛋白による細胞融合=合胞体は、重症肺炎や重度の免疫反応を起こすが、神経変性疾患と関連するとされる。
SARS-CoV-2感染では記憶に影響する。それは小児でも報告されている。その機序はサイトカイン、合胞体形成が関連している。海馬でのミクログリアの活性化、IL-6などのサイトカイン増加により記憶が障害されるとされる。軽症~中等症でのCOVID-19では髄液中にウイルスRNAは検出できず、サイトカイン増加等が重要視される。重度のCOVID-19では10%に血液、心筋、脳に対する自己抗体が検出され、Long-COVIDでの症状を説明できるかもしれない。
SARS-CoV-2の3ヶ月以上の持続感染が報告されているが、脳でのサイトカイン発現の長期刺激が脳機能や記憶に影響を与えているかもしれない。さらにウイルスがなくてもスパイク蛋白のみで神経炎症、行動異常を引き起こすとする報告がある。