2022年7月27日水曜日

高血圧と感染性心内膜炎の関連

Hypertension,2022,vol.79
Association Between Hypertension and Incident Infective Endocarditis

感染性心内膜炎は年間10万人あたり3-7人発生するとされる。英国の長期コホート研究では降圧は慢性の心血管疾患やIE、リウマチ性心疾患などの感染性疾患を減らす可能性を示唆した。韓国の健康保険(NHIS)のデータを用いて検討した。2009年から400万人のデータを平均9.2年観察。平均47.12歳、男性55.08%、IEは812人に発症。10万人・年あたりの発生率は血圧正常群(SBP<120)0.93、前高血圧群(120≦SBP<140)1.39、高血圧群(SBP>140)2.57、高血圧治療群5.96で、血圧正常群に比してハザード比は1.33(1.06-1.68)、1.98、2.56で血圧に応じてリスクが増加していた。サブ解析では年齢<65歳、運動なし、脂質異常なしでは、血圧が単独でIEリスクになっていた。IE高リスク群(先天性心疾患、心臓デバイス、弁置換術後)では血圧正常でIEのハザード比26.9、高血圧+IE高リスクでハザード比39.5であった。

2022年7月20日水曜日

脳卒中予防のための心臓手術中の左心耳閉鎖術

NEJM,2021,vol.384,no.22
Left Atrial Appendage Occlusion during Cardiac Surgery to Prevent Stroke

LAAOSⅢ研究。多施設ランダム化試験。18歳以上で、心房細動があり、CHA2DS2-VAScスコア2点以上の人で、他の目的の心臓手術時に、Webで1対1にランダム化して左心耳閉鎖術の追加を割付。手術前に外科医にeメールで割付を連絡。2012年から2018年に4811例が登録。主要評価項目は虚血性脳卒中と全身性塞栓症。最終的に2379例が左心耳閉鎖術群、2391例が対照群で解析された。平均年齢71歳、男性67.5%、CHA2DS2-VAScスコア4.2点。人工心肺時間は閉鎖術群119分、対照群113分。退院時に抗凝固療法は83.4%vs81.0%であった。平均3.8年観察され、脳梗塞+塞栓症は4.8%vs7.0%でハザード比0.67(0.53-0.85)で、有意にリスクを減らしていた。二次評価項目では全死亡22.6%vs22.5%、心不全入院7.7%vs6.8%で差なし。術後48時間以内の出血による再手術、術後30日以内の死亡でも差なし。(サブグループ解析では抗凝固療法なしでは5.1%vs6.4%で有意差なし、脳梗塞既往ありでは7.2%vs10.7%で有意差なし、CHA2DS2-VAScスコア5点以上でも7.2%vs9.2%で有意差がなかった)

2022年7月13日水曜日

プライマリケアにおける抗うつ薬の継続と中止

NEJM,2021,vol.385,no.14
Maintenance or Discontinuation of Antidepressants in Primary Care

ANTLER研究として、最低9か月以上投与した抗うつ薬の維持療法と治療終了を比較した。英国の150カ所の一般診療所で多施設無作為化二重盲検試験として実施。シタロプリム(日本未承認)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、フルオキセチン(日本未承認)、ミルタザピン(リフレックス)を内服中の患者を対象。英国ではプライマリケアでは広く使用されていないエスシタロプリム(レクサプロ)および中止時の離脱症状の可能性のあるパロキセチン(パキシル)は除外。継続群と中止群は1対1に無作為に割り付けられ、中止群に割り付けられると、薬局に連絡が行き、最初の1ヶ月は半量に減量、2か月目はプラセボと半量を交互に、3か月目はプラセボに変更される。主要評価項目は52週時点でのうつ病の再燃。うつ病再燃の定義はCIS-Rの抑うつ症状の新たなエピソードの発生とした。二次評価項目としてPHQ-9、GAD-7、SF-12などの8つの項目で評価。23553人から478人がランダム化され、238人(54±13歳、女性71%、既婚61%、セルトラリン17%、シタロプリム47%、フルオキセチン32%、ミルタザピン4%)が維持群、240人が中止群に割付。52週でうつ病再燃は維持群39%、中止群56%でハザード比2.06(1.56-2.70)であった。有害事象は維持群4%、中止群3%で、両群とも自死はなし。

2022年7月6日水曜日

代用塩の心血管イベント、死亡に対する効果

NEJM,2021,vol.385,no.12
Effect of Salt Substitution on Cardiovascular Events and Death

中国で実施されたSSaSS研究。中国の農村部の600の村を抽出し、通常の塩を使用する村、75%ナトリウム25%カリウムの代用塩を使う村に1:1で無作為に割付。各村より35人ずつ健康な人を選出し5年間健康観察を行った。その家庭で、代用塩が禁忌である人がいる場合やK保持性利尿薬、K製剤内服中もしくは重篤な腎疾患の人がいる場合は除外した。主要評価項目は脳卒中とし、二次評価項目は心血管イベント、心血管死、全死亡などとした。20995人が登録(65.4歳、女性49.5%、72.6%に脳卒中既往あり、88.4%に高血圧あり)。平均4.74年観察され、代用塩と通常塩での脳卒中の発症は29.14vs33.65/1000人・年で、レート比0.86(0.77-0.96;p=0.006)。心血管イベントは49.09vs56.29、レート比0.87(0.80-0.94;p<0.001)、全死亡レート比0.88(0.82-0.95)で有意にリスクを低下させていた。高K血症などの有害事象は3.35vs3.30、レート比1.04(0.80-1.37)で差を認めず。(ベースラインで脳卒中既往者の数が多いのが気になりますが…)