2024年4月17日水曜日

4例の重度麻痺に対する植込み型血管内電極によるブレイン・コンピュータ・インターフェイスの安全性評価

JAMA Neurol,2023,vol.80,no.3
Assessment of Safety of a Fully Implanted Endovascular Brain-Computer Interface for Severe Paralysis in 4 Patients
-The Stentrode With Thought-Controlles Digital Switch(SWITCH) Study-

内頚静脈から上矢状静脈洞に16の電極のあるデバイスを前中心回に留置。豪の王立メルボルン病院にて、2019~2021年に5例のALS、PLSの患者(平均61歳、全例白人男性)が登録され、1例は横静脈洞欠損のため除外。全身麻酔で実施、手術時間232分、被爆時間43分。12ヶ月の観察期間中、死亡や重大な有害事象なし。静脈洞血栓の発生なし。電極の位置移動なし。4例ともアイ・トラッキングを伴うPC使用は何回かの訓練で可能となり、文字入力は16.6文字/分。最終的に1例はアイ・トラッキングなしにYes-Noの入力が正答率97.4%で可能となる。全例、満足感、充足感を表明された。

2024年4月10日水曜日

体動困難の84歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.20
Case Records of the MGH
Case 9-2024: A 84-Year-Old Man with Fall

3週間前に一過性肉眼的血尿。1週間前に失語、右上肢しびれ(その2週前よりリバロキサパン開始)。他院に入院し、MRIでは微小血管虚血性変化を認めるのみで、TIAと診断。経胸心エコーではLVEF:60%、中等度MR、軽度AR。今回、浴室で倒れていたのが発見されER搬送。全身的な筋力低下、ふらつきあり。既往歴はAF、心不全、COPD、高血圧、抑うつ状態、前立腺がん。発熱なし、左肘屈側に紅斑あり。同部はエコーにて血流のない低エコー病変(1.7×0.5×1.3㎝)があるも、形成外科にて特に外科的処置を要しないとのコメント。尿培養でMSSA検出。また、第1入院病日の血培でグラム陽性球菌が4検体中1つから検出。体部造影CTでは、左副腎に結節影、胸部大動脈瘤あり。第3入院病日、突如、胸痛を訴え、動けない状態。 

鑑別診断
尿培養でMSSA検出されているが、尿道カテーテルがない場合、血行性の感染を考えるべき。
診断的検査
CTA再検にて仮性胸部大動脈瘤の拡大(19→30mm)あり。血培のグラム陽性球菌はMSSA。
最終診断:MSSAによる菌血症、感染性大動脈瘤
治療:
VCM中止しCEZに変更。胸部大動脈瘤に対しては、ステントグラフト挿入術。6週間の抗菌薬点滴後、長期の経口抗菌薬治療へ。

2024年4月3日水曜日

高齢AF患者におけるカテーテルアブレーションによる認知症リスク、死亡リスク

J Am Geriatr Soc,2023,vol.71
Catheter ablation and lower risk of incident dementia and mortality in older adults with atrial fibrillation

米国のヘルスネットワークのTriNetXの2022年9月のデータを用いて検討した。65歳以上のAF患者でカテーテルアブレーションを実施したAF患者44施設、20747人、対照群としてカテーテルアブレーション非実施のAF患者58施設76万7千人から、プロペンシティスコアをマッチさせた20747人を抽出し、比較検討した。年齢は68.4歳、男性59.1%。経口抗凝固薬16.6%。5年間の観察期間で、新たな認知症発症はCA群253人、1.2%、非CA群439人、2.1%で、HR 0.52(0.19-0.61)で有意に認知症発症リスクを減らしていた。ADでHR 0.30(0.19-0.45)、脳血管性認知症でHR 0.54(0.35-0.82)であった。サブ解析ではほぼ全てのサブ因子でCA群で認知症リスクを減らしていたが、抗凝固療法なしでは有意差を認めず。総死亡についてはCA群で2447人11.8%vs3509人16.9%、HR 0.58(0.55-0.61)で有意に総死亡を減らしていた。

2024年3月13日水曜日

発熱、咳の17歳女性

NEJM,2022,vol.387,no.2
Case Records of the MGH
Case 21-2022: A 17-Year-Old Girl with Fever and Cough

Covid-19パンデミック中の発熱、咳。倦怠感、眼瞼結膜発赤、咽頭痛、鼻閉、鼻汁、筋痛。SARS-CoV-2のPCR陰性。BMI:35.9.クレアチニン:2.0、Hb:6.7g/dL、WBC:11890、PLT:52.6万、尿RBC:100/HPF、尿赤血球円柱+。肺CTで斑状のすりガラス影が両側末梢優位に多発。CTRX、アジスロマイシンで治療開始。

鑑別診断:貧血の原因、ウイルス性疾患、多系統炎症性症候群、SLE、GPA
腎生検:球状、分節状の壊死性病変、フィブリン沈着糸球体、細胞性半月→壊死性半月体性糸球体腎炎
血液検査:PR3-ANCA強陽性(21504U)
診断:GPA(granulomatosis with polyangitis)
高用量グルココルチコイド、シクロフォスファミド、リツキシマブで治療開始、しかしクレアチニン4.38に悪化。血漿交換+エクリズマブにて血尿、クレアチニン、C3改善。14か月後にはクレアチニン正常化。

2024年3月6日水曜日

倦怠感、寝汗の21歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.8
Case Records of the MGH
Case 6-2024: A 21-Year-Old Man with Faigue and Night Sweats

4週前まで健康。4週前、嘔気、嘔吐。その後、倦怠感増悪。その後、徐々に動けなくなり、ER受診。汎血球減少、ビリルビン上昇、LDH>2500。ダニ刺傷既往なし。血尿なし。違法薬物使用なし。アルコール歴なし。検査データ:Hb値5.7、WBC:2110、PLT:14.1、MCV:101.8、網状赤血球3.8%、LDH:2947、総ビリルビン:1.9、直接ビリルビン:0.2。直接クームス陰性。

鑑別診断:先天性:GATA2欠損、ファンコニー貧血、ウィスコット・アルドリッチ症候群
感染症:CMV、EBV、パルボウイルス、アデノウイルス、バベシア症
リンパ腫などの悪性疾患
自己免疫疾患:免疫介在性貧血、PNH
栄養障害:B12欠乏、葉酸欠乏
末梢血白血球過分葉あり。B12<150pg/mL、葉酸:4.9ng/mL、抗胃壁細胞抗体陽性、抗内因子抗体陽性。B12筋注にて改善。

2024年2月28日水曜日

心不全に対する心臓再同期‐除細動療法の長期転帰

NEJM,2024,vol.390,no.3
Long-Term Outcome of Resynchronization-Defibrillation for Heart Failure

RAFT研究では植込み型除細動器治療より心臓再同期‐除細動治療の方が5年生存で成績が良好であったが、今回、さらなる長期成績を検討した。NYHAクラスⅡ、ⅢでLVEF<30%、QR幅120msec以上の心不全の患者をICD単体またがCRT-D群に無作為に割付。主要評価項目は全死亡、二次評価項目は全死亡、心移植、左心補助デバイス使用の複合。1798例が登録され、1050例で長期予後検討。中央値7.7年(3.9-12.8年)、生存患者は中央値13.9年(12.8-15.7年)フォロー。ICD群530例、66.8歳、LVEF22.1%、PCIあり24.2%、CABGあり36.6%、CRT-D群520例、66.3歳。全死亡はICD群76.4%vsCRT-D群71.2%、加速係数0.80(0.69-0.92;p=0.002)。二次評価項目の複合転帰も77.7%vs75.4%。

2024年2月14日水曜日

同種幹細胞による急性期脳梗塞の細胞治療、TRESURE研究フェーズ2/3

JAMA Neurol,2024
Allogenic Stem Cell Therapy for Acute Iscemic Stroke The Phase 2/3 TREASURE Randomized Clinical Trial

同種幹細胞の大量生産品MultiStem用いた日本44施設での多施設二重盲検試験。NIHSS:8-20のラクナ梗塞、脳幹梗塞を除く急性期脳梗塞、20歳以上(途中で84歳以下に制限)で発症後18-36時間以内に1回MultiStemを投与。主要評価項目は90日時点でのmRS等。207例でランダム化され、105例でMultiStem、102例でプラセボが投与された。MultiStem群の年齢中央値79歳、NIHSS:14点、tPA投与23.1%、機械的血栓除去術(MT)30.8%(tPAとMT併用は除外されている)。90日後のmRS1以下は14.4%vs11.6%、mRS2以下は35.1%vs24.2%で差なし。層別化した探索的検討では、DWIでの梗塞巣≧50mLではmRS2以下は29.6%vs8.1%でp=0.04で有意に良好であった。64歳未満でも良好な傾向を認めた。365日時点でのBI≧95では35.6%vs22.5%でp=0.05で有意に良好であった。