2026年8月5日水曜日

BRASH症候群(徐脈、腎障害、房室結節阻害薬、ショック、高カリウム血症):臨床的特徴、転帰、治療

 Cures,2026,vol.18,no.1
Bradycardia, Renal Dysfunction, Atrioventricular Node Blockade, Shock, and Hyperkalemia(BRASH) Syndrome : Clinical Features, Outocmes, and Therapeutic Implications

BRASH症候群は2016年に正式に報告された。病態としては、軽度高K血症でも房室結節抑制をきたし、徐脈から、心拍出量低下、低潅流、腎機能低下、さらに高K血症増悪、徐脈増悪をきたす。高K血症の程度に比して、重度の徐脈がみられ、典型的な高K血症の心電図所見を示さない。
ポルトガルの一医療機関の2019-2022年で、徐脈でERを受診した患者725人の内、HR60以下の徐脈370人で、内、BRASH症候群の定義を満たす51人(79.8±10.6歳、女性51%)について検討。基礎疾患に心不全68%、AF53%、DM43%、CKD26%、利尿薬92%、β阻害薬82%、ACEI69%、ジゴキシン31%。臨床症状:徐脈100%、呼吸苦45%、倦怠感45%、意識障害35%、胸痛29%、めまい感28%。誘発因子:腎負荷暴露49%、感染症43%、低潅流33%、急性心不全33%、AV結節阻害薬の新規投与24%。
K値中央値6.5(ベースラインから2.0上昇)。全例AKIを呈し、クレアチニン値は1.2→2.6と上昇。多くの症例は標準的な高K血症の治療が施行され、GI療法73%、Ca剤静注73%、β刺激薬88%、重炭酸20%、K吸着薬82%。アトロピン投与39%であったが、多くは無効。
転帰:院内死亡16%、退院後90日以内の死亡7%。永久ペースメーカ挿入5例10%、透析6例(緊急HD4例)。退院後90日以内の再入院42%。
軽度高K血症、徐脈例でのBRASH症候群の早期認識が重要。

2026年7月29日水曜日

この患者は容量過負荷か?合理的な臨床検査

 JAMA,2026,vol.335,no.13
Dose This Patient Have Volume Overload?
The Rational Clinical Examnination

血管内の容量過負荷を示す所見:
肺エコー:B-line
エコーでの頚静脈、下大静脈拡張
呼吸での内頸静脈の拡張の変動が30%未満では容量過負荷の所見
下大静脈が2.1cm以上で吸気時50%以下の虚脱の場合、容量過負荷
BNP、NT-proBNP高値

容量過負荷の同定に関して、2873+7論文から40論文で精査、メタ解析。身体所見上の頚静脈拡張は特異度92%、感度35%。ラ音聴取:特異度81%、感度56%。下肢浮腫:特異度80%、感度44%。胸部XP肺うっ血:特異度91%、感度51%。肺エコーB-Line:特異度77%、感度93%。下大静脈虚脱率:感度82%、特異度79%。頚静脈怒脹8cm:感度81%、特異度71%。BNP高値:特異度87%、特異度87%。NT-proBNPは一貫性を示せず。

2026年7月22日水曜日

シンスライスCTでのデシジョンツリーを用いた市中肺炎の病原菌予想

 Jpn J Radiology,2025,vol.43
A decision tree for predicting the the causative pathogens of community-acquired pneumonia from thin-section computed tomography

CAPで区域性あり・なし→気管支壁肥厚・小葉中心性結節(以下BC)あり・なしで4分割。区域性あり+BCあり:マイコプラズマ(60歳未満)、Hインフルエンザ。区域性あり+BCなし:肺炎球菌、クラミジア肺炎、肺炎桿菌。区域性なし+BCあり:肺炎球菌、肺炎桿菌。区域性なし+BCなし:肺炎球菌、クラミジア肺炎、肺炎桿菌という決定木を作成。大分県立病院の原因菌上位10種によるCAP症例68例を無作為に選択し、2名の医学生、6名の研修医、8名の放射線科医が68例のCTを評価。原因菌を第1、第2、第3候補を推定させた。決定木を使用すると正答率が有意に向上した。

2026年7月15日水曜日

急性低酸素性呼吸不全における高流量酸素療法vs標準療法

 NEJM,2026
High-Flow or Standard Oxygen in Acute Hypoxemic Respiratory Failire

SOHO研究、仏の42施設で実施。多施設オープンラベルRCT。18歳以上、RR≧25、肺浸潤影あり、P/F≦200で、除外項目はPCO2≧45、慢性肺疾患、心原性肺水腫、循環動態不安定・昇圧剤使用、GCS<12、抜管・術後7日以内等。高流量群は高流量鼻カニューレで50L/分、標準群は10L以下の酸素マスク投与で酸素飽和度92-96%維持。主要評価項目は28日後の全死亡。1116人ランダム化。高流量群556人、標準群554人(63±13歳)。28日での死亡は14.6%vs14.6%で差なし。28日での再挿管率42.4vs48.4%で差は-5.93%ポイント(-11.78to-0.08)であった。

2026年7月8日水曜日

潜因性脳梗塞における高リスクを伴う高血圧、ARCADIA研究での探索的検討

 JAMA Neurology,2026,vol.83,no.6
Hypertension With High-Risk Features in Crptogenic Stroke
An Exploratory Analysis of the ARCADIA Randomized Clinical Trial

塞栓源不明脳塞栓における抗凝固療法の有用性は示せていない。これは原因不明脳梗塞の中で非塞栓性の高血圧関連の脳梗塞の除外が十分でないからとされる。高血圧リスクの層別化が有用との仮説で、ARCADIA研究を事後解析した。45歳以上の塞栓源不明脳塞栓で、心房心筋症(atrial cardiopathy)(V1のP波終末電位PTF>5000μV・ms、NT-proBNP>250、LAD index>3.0cm/m2のどれかを満たす)を伴うもの。ESUSは50%以上の主幹動脈狭窄があるもの、ラクナ梗塞、その他の原因の脳梗塞は除外。AF既往、EF<30%、抗血栓療法中、脳出血既往、crea>2.5は除外。高リスク群をSBP>160または心エコーで男性LVMI>115,女性>95のどちらかを満たすもの。1015例がランダム化され、945例で解析。ARCADIA研究ではアピキサバンとアスピリンに割り付けて、観察。主要評価項目は脳梗塞と全身性塞栓症。高リスク群は351例37.1%(アピキサバン群167,アスピリン群184)高リスクなし群594例(アピキサバン298、アスピリン296)。高リスクなしでは、アピキサバンでのイベントはHR、0.43(0.22-0.85)で再発を減らした。高リスクありでは、HR、1.68(0.78-3.62)で有意差はなかった。原因不明脳梗塞の二次予防の今後の研究では、従来の分類では高血圧関連脳血管疾患の把握が不十分であることを認識すべき。

2026年7月1日水曜日

敗血症性ショック初期での昇圧剤使用または大量輸液

 NEJM,2026
Vasopressors or Fluids in Early Septic Shock

輸液を制限して昇圧剤を使用する群と大量輸液する群で敗血症性ショックの転帰に差があるか研究(ARISE FLUIDS研究)
多施設オープンラベルのランダム化研究。豪を中心とする3カ国51施設で実施。最初の60分で500-1000mLの輸液を実施してもSBP90以下の敗血症性ショックが対象。昇圧剤群、大量輸液群に1対1に割付。昇圧剤群は最初250mL輸液し、その後は尿量0.5mL/kg/hrを目標に輸液。大量輸液群は最初の60分で1000mL、さらに追加で500-1000mL、その後は30mL/kgを3時間輸液。主要評価項目は90日後に入院していなかった日数。二次評価項目は28日、90日時点の生存率。
昇圧剤群481例、68歳、男性58.4%、輸液群482例、69歳。登録時の輸液量は両群とも1500mL。ランダム化前の昇圧剤、57%vs41%。感染巣(昇圧剤群)肺29.9%、尿路23.3%、腹腔内13.7%、皮膚13.3%。輸液量0-1hr:185vs1000。0-6hr:500vs1500。0-24hr:1140vs2248。昇圧剤投与:86.5%vs67.6%。90日後の非入院日数:76日vs76日。28日の死亡率:12.9vs10.0、90日の死亡率:16.4vs14.4でいずれも差なし。

2026年6月24日水曜日

心不全における血清カリウム値の至適濃度:メタ解析から

 Eur Heart J,2026
Optimal serum potassium consentration in heart failure : an individual patient data meta-analysis

心不全12論文(HFrEF7論文、HFpEF5論文)から血清K値と臨床転帰の関連を検討した。個別データで、K値で6群に層別化(K<3.5、3.5≦K<4.0、4.0≦K<4.5、4.5≦K<5.0、5.0≦K<5.5、5.5≦K)。主要評価項目は全死亡。HFrEFで24.2ヶ月、HFpEFで36.8ヶ月観察。HFrEFではJカーブを呈し、K値4.0-4.5に対してK値3.5未満群は全死亡リスクが修正HR:1.49(1.27-1.76)で有意に高かった。K値は高い場合も修正HRでは有意差なし。二字評価項目のCV死、心不全入院もK値3.5未満では有意に高リスク。HFpEFではK値による差は認めず。突然死ではK値4.0-4.5に対してK値5.5以上でHR:1.87(1.07-3.28)であった。
HFrEFでは低K血症が強く予後不良と関連した。HFrEFとHFpEFの双方に共通する血清K値の安全域は、4.2-5.0 mmol/Lであった。