2026年2月4日水曜日

入院を減らすための高用量インフルエンザワクチン

NEJM,2025,vol.393,no.23
High-Dose Influenza Vaccine to Reduce Hospitalization

 スペイン、ガリシア州で実臨床でのオープンラベル、ランダム化試験。65-79歳、2023-2024(59490人)、2024-2025(74986人)の2シーズンで、それぞれ実施。72.3±4.3歳、男性53.6%。主要評価項目はインフルエンザまたは肺炎による入院。主要評価項目のイベントは高用量群で174/67093(0.26%)、標準用量群227/66789(0.34%)、相対的ワクチン効果23.7%(95%CI、6.6-37.7)。インフルエンザによる入院は0.09%vs0.14%、相対的ワクチン効果31.8%(5.0-51.3)。重篤な有害事象は両群で差なし。

2026年1月28日水曜日

高齢者における心臓ストレス状態と血圧管理、ASPREE研究の事後解析から

 Circulation,2025,vol.152
Heart Stress and Blood Pressure Management in Older Adults: Post Hoc Analysis of the ASPREE Trial

NT-proBNPは心筋壁へのストレスを反映するバイオマーカーであり、その評価が血圧管理でCVDリスクの層別化に役立つかをASPREE研究の事後解析として検討した。ASPREE研究は70歳以上の豪、65歳上の米に住む地域住民19114人で実施された低用量のアスピリンのCVDリスクへの効果の研究で、65-79歳、80歳以上で層別化し、NT-proBNPは65-74歳では150pg/mL以上、75歳以上では300以上を心臓ストレス状態(以下HS)と定義し、主要評価項目はCVDイベント(MI、脳卒中、虚血性心疾患死、心不全入院)、二次評価項目はMACEs(MI、脳卒中、虚血性心疾患死の複合)。ASPREE研究の観察期間は中央値8.3年。HSは全体の25.8%にみられた。HSなし、高血圧(140以上)なしの参照群に比して、高血圧あり+HSなし群ではCVDイベントの修正ハザード比は1.41(1.18-1.70)、高血圧なし+HSある群1.79(1.34-2.39)、高血圧あり+HSあり群2.32(1.89-2.84)。HSなし群ではCVDイベントは血圧に対してU字型で、SBP130-139が最もリスクが低かったが、HSあり群では、リスクは線形に増加しSBP120以下が最もリスクが低かった。

2026年1月21日水曜日

発熱、腹痛をきたした50歳女性

NEJM,2026,vol.394,no.2
Case records of the MGH
Case 1-2026: A 50-Year-Old Woman with Fever and Abdominal Pain

直前までブラジルに旅行。4日前、全身倦怠感。3日前、下痢、腹痛、軽度腹部膨満感。前日、悪寒戦慄、頭痛、下肢痛出現。黄疸、下血、血尿、皮疹、胸痛、咳、目耳鼻の症状などは認めず。既往に住血吸虫症があり、非肝硬変性の門脈圧亢進症、食道静脈瘤、脾腫、慢性血小板減少症、慢性白血球減少症の合併あり。10年前の肝臓エコーでのエラストグラフィでは肝硬度上昇あり。ER初診時、体温38.4,血圧76/44,意識レベル低下、点状出血が軟口蓋にあり。ER到着後、乳酸リンゲル1L開始。VCM、CTRX、アジスロマイシン開始。胸部XPで両肺にびまん性に間質影、気胞陰影を認め、PIPC/TAZも開始。晶質液2L点滴するも血圧73/41.血液検査、WBC:22800、PLT:2.9万、乳酸13.2(0.5-2.0)、Dダイマー>7650(500未満)、静脈pH:7.15

鑑別診断  
腸チフス、サルモネラ、ビブリオ  熱帯熱マラリア、シャーガス病、デング熱
バベシア症
細菌感染による敗血症性ショック(腎盂腎炎、髄膜炎菌性敗血症)
典型的な髄膜炎菌性敗血症では小出血斑、点状出血がみられるが、見られない場合もあい。下肢痛は髄膜炎菌性敗血症に多い症状。脾機能障害、肝硬変は低補体血症の原因となり、髄膜炎のリスクになる。

血液塗抹グラム染色検査:グラム陽性球菌に見えた
MALDI-TOF検査(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)にて、髄膜炎菌で矛盾しない
グラム染色再検にてグラム陰性双球菌、最終的な血清型はW135。
患者はその後、ショック状態から離脱できず、これ以上の救命処置は希望されず、ER到着12時間後死亡。

2026年1月7日水曜日

経口抗凝固薬内服中の慢性冠症候群でのアスピリン投与

NEJM,2025,vol.393,no.16
Aspirin in Patients with Chronic Coronary Syndrome Receiving Oral Anticoagulation

フランスの51施設での抗凝固療法単独vs抗凝固療法+アスピリンの前向き二重盲検ランダム化試験。対象は6ヶ月以上経過した冠動脈ステントの患者で、抗凝固療法中の者。主要評価項目は心血管死+MI、脳卒中、塞栓症、冠動脈PCI、四肢虚血の複合。二次評価項目はネット臨床イベント(全死亡+心血管イベント+大出血)等。
2020-2024年にかけて872人がランダム化され、433人が併用群、439人が単独群に割付。71.7歳、男性85.3%、全例PCI歴あり、PCI後平均3年、72.7%がMI既往。89%がAFあり。抗凝固薬はアピキサバン62.2%、リバロキサバン24.7%、ダビガトラン2.9%。試験中に全死亡が併用群で過剰に発生したため、試験は早期終了。観察期間2.2年。
主要評価項目の心血管死+心血管イベントはアスピリン併用群16.9%vs単独群12.1%、修正ハザード比1.53(1.07-2.18)、全死亡+心血管イベント+大出血で28.6%vs17.3%、ハザード比1.85(1.39-2.46)全死亡13.4%vs8.4%、ハザード比1.72、心血管死7.6%vs4.3%、ハザード比1.90でいずれも有意にアスピリン併用群でリスクが高かった。大出血は10.2%vs3.4%、ハザード比3.35。本研究では先行研究に比して、ハイリスク群が中心で、心血管イベントが先行研究では1-2%に比して、約7-8倍であった。

2025年12月24日水曜日

市中肺炎に対するステロイド投与に対する実際的な臨床試験

NEJM,2025,vol.393,no.22
A Pragmatic Trial of Glucocorticoids for Community-Acquired Pneumonia

十分な医療資源の環境下において、補助的なグルココルチコイドの使用は、重症市中肺炎(CAP)患者の死亡率を低下させる可能性がある。これらの薬剤が、診断および治療施設が限られている環境において有益であるか検討した。ケニアの18病院で実施。実践的、非盲検、無作為化、対照試験として実施。CAPと診断(胸部XPは必須ではない)された成人患者を、CAP標準治療群、標準治療+10日間の経口低用量グルココルチコイド投与群に割付。主要評価項目は30日後の全死亡。合計2180人の患者が無作為化され、(G群1089人、標準群1091人)。患者の年齢53歳(四分位範囲38~72歳)で、46%が女性、胸部XP実施39%、HIV陽性15.2%、DM:6.4%。30日目の全死亡530人(24.3%)で、G群22.6%vs標準群26.0%でハザード比0.84(0.73-0.97、P=0.02)で有意に死亡リスクを減らした。有害事象および重篤な有害事象の頻度は両群で同程度。グルココルチコイド投与に関連すると考えられる重篤な有害事象は、5例(0.5%)に発生した。

2025年12月10日水曜日

低ナトリウム血症の診断と治療 総説

JAMA,2022,vol.328,no.3
Diagnosis and Management of Hyponatremia

低Na血症は成人の約5%、入院患者の35%に発生。軽度低Na血症であっても、入院期間の延長や死亡率の上昇と関連。前向き研究では、低Na血症ではNa値正常者と比較して転倒頻度が高く( 23.8%vs16.4%)、平均7.4年間での新規骨折率も有意に高率(23.3%vs17.3%)。低Na血症は骨粗鬆症の二次的な原因でもある。
尿素とバプタンは、心不全患者の不適切抗利尿症候群および低ナトリウム血症に対する効果的な治療薬となりうるが、副作用として尿素の味、胃不耐症、バプタンの低Na血症の過剰補正、口渇増加がある。重篤な症状を伴う場合(傾眠、意識障害、昏睡、発作、心肺機能低下の徴候)は緊急事態であり、米国・欧州のガイドラインでは、高張食塩水のボーラス投与により、血清ナトリウム濃度を1~2時間以内に4~6mEq/L上昇させ、24時間以内に10mEq/L(補正限界)を超えないように治療する事が推奨。

2025年12月3日水曜日

腹部膨満、浮腫、胸水をきたした82歳女性

NEJM,2025,vol.393,no.16
Case Records of the MGH
Case 30-2025: A 82-Year-Old Woman with Abdominal distention, Edema, and Pleural Effusion

3週間前、特にトラブルなく南米の友人宅で過ごした。1週間前、帰国後より下肢浮腫が出現悪化し、身の回りの事ができなくなった。胸部XP、CTでは少量の胸水。心電図異常なし。既往歴、心房細動、心原性脳塞栓、DCでの除細動、カテーテルアブレーション、HFpEF。メトプロロール、アピキサバン、フロセミド内服あり。全身浮腫、聴診上、収縮期雑音あり。尿蛋白2+、尿比重1.006。血液検査:Hb:10.9、PLT:24.8、Alb:1.7、T-Chol:152。補体値正常。ANA陰性。IgA:829↑、IgG:544↓、免疫グロブリン軽鎖カッパが48.5↑、2つのIgAラムダのMコンポーネントが見られた。

鑑別診断
全身浮腫:膜透過性異常(血管浮腫、敗血症、熱傷、膵炎等)、膠質浸透圧異常(粘液水腫、リンパ浮腫等)、心不全、腎不全など
南米旅行:シャーガス病、フィラリア症、リューシュマニア、マラリア、住血吸虫症など考慮
ネフローゼ症候群:尿蛋白3.5g/日以上。本例では尿比重が低い状態(正常1.010-1.030)で、尿蛋白定性2+はかなり大量の尿蛋白が示唆される→ネフローゼ症候群の可能性。
IgAラムダのM蛋白→ALアミロイドーシス

追加検査
血清c ANCAが弱陽性→ANCA関連血管炎によるRPGNが否定できない
→腎生検実施→メサンギウムにラムダ軽鎖沈着→ALアミロイドーシス
→骨髄生検実施→形質細胞腫瘍あり、5-10%、フローサイトメトリーでCD38、CD138の表現あり。

治療
CD38抗体薬ダラツムマブ、デキサメサゾンで治療開始。症状軽快、1年後も血清フリーラムダ・カッパ軽鎖減少持続。