2022年12月28日水曜日

進行したCKDにおけるレニン・アンギオテンシン系の抑制

NEJM,2022,vol.387,no.22
Renin-Angiotensin System Inhibition in Advanced Chronic Kidney Disease

オープンラベルの多施設前向き研究(STOP-ACEi研究)。英国の39施設で、eGFR<30のCKDの成人で過去2年間でACEiまたはARB(RAS阻害薬)を処方された患者を対象とし、1対1で同薬を中止、継続に割付し観察。主要評価項目は3年後のeGFR。17290人中1210人がスクリーニングされ最終411人(63歳、男性68%、eGFR中央値18、eGFR<15は29%)がランダム化された。3年後のeGFRが中止群12.6vs継続群13.3で有意差なし。二次評価項目で末期腎不全+腎代替療法は62%vs56%でハザード比1.28(0.99-1.65)で有意差なし。有害事象では心血管イベントは中断群108vs継続群88で同様であった(52%vs43%で同様?)。

2022年12月14日水曜日

NVAFにおいて家庭血圧は脳卒中リスク、出血リスクを予測する。ANAFIE研究より

Hypertension,2022,vol.79
Home Bood Pressure Can Predictive the Risk for Stroke/Bleeding Events in Elderly Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation From the ANAFIE Registry

ANAFIE研究はNVAFで75歳以上の3万人以上のリアルワールドの前向き観察研究で、家庭血圧を1日4回(朝2回、夕2回)測定している人のデータを検討した。4933人(81.4±4.8歳、男性56.2%、CHA2DS2-VAScスコア4.4±1.3、HAS-BLEDスコア1.8±0.8)でH-BP:127.8/72.6であった。2年間観察し、脳卒中+全身性塞栓症115人、主要出血イベント76人発生した。脳卒中+塞栓症群、主要出血群、脳出血群は有意にH-BPが高値で、H-BP<125群に比して、H-BP>145群は脳血管障害のハザード比1.92、脳卒中+塞栓症のハザード比1.88、主要出血ハザード比2.92、頭蓋内出血3.07で有意に増加していた。全死亡のハザード比は1.19で有意差なし。H-BP<125に比してH-BP125-135群、135-145群はそれぞれ有意差なし。

2022年12月7日水曜日

ぺマフィブラートによる心血管リスクを下げるための中性脂肪低下

NEJM,2022,vol.387,no.21
Triglyceride Lowering with Pemafibrate to Reduce Cardiovascular Risk

PROMINENT試験、スポンサー、コーワ。24か国、876施設での二重盲検試験。2型糖尿病でTG200-499で、男性50歳、女性55歳以上のCV疾患の既往のない一次予防コホート、18歳以上のCV疾患既往ありの二次予防コホート。2017-2020年、10538人を1対1でペマフィブラート0.2㎎×2とプラセボに割付。主要評価項目:複合CVイベント(MI+虚血性脳卒中+不安定狭心症による入院+予定外のPCI+心血管死)。実薬群で年齢64.0歳、女性27.5%、白人85.4%、アジア系5.6%、BMI:32.0、スタチン併用95.8%、高用量スタチン69.4%、GLP-19.5%、SGLT2阻害薬17.1%、HbA1c中央値7.3。3.4年観察。2022年3月の中間解析(75%のイベント発生)の時点で、終了が勧告され、試験終了。結果はTG値の変化は実薬群vs対照群で-31.1vs-6.9で有意に減少していたが、複合CVイベントは実薬群で572vs560、100人年あたりでは3.60vs3.51で、ハザード比1.03(0.91-1.15)で有意差なしであった。有害事象では腎障害でハザード比1.12(1.04-1.20)で増加。肝障害はHR0.83(0.69-0.99)、非アルコール性脂肪肝疾患0.78(0.63-0.96)で有意に減らしていた。

2022年11月30日水曜日

脳卒中の原因となる単一遺伝子の変異の浸透率での血管リスクと遺伝的リスクの関連

JAMA Neurology,2022
Association of Vascular Risk Factors and Genetic Factors With Penetrance of Variants Causing Monogenic Stroke

脳卒中に関連する単一遺伝子異常として、CADASILの原因となるNOTCH3変異、CADASIL2のHTRA1変異、および微小血管脳卒中、脳出血に関連するCOL4A1/2変異が知られている。CADASILはこれまで10万人に4人程度と報告されてきたが、最近の報告ではNOTCH3変異の陽性は452人に1人程度とされており、英国のUKバイオバンクのデータを用いて検討した。
UKバイオバンクでの40-69歳、2006年-2010年に集められたデータでの前向き研究。454756人の全エクソン解析が行われ、遺伝子解析にはPLINK formatが用いられた。内38332人では3TのMRIにて、拡散テンソル画像等にて、WMH容積、PSMD(骨格化平均拡散率ピーク幅)などを評価した。NOTCH3変異キャリアは973人(467人に1人)、HTRA1変異は546人(832人に1人)、COL4A1/2変異は336人(1353人に1人)で、NOTCH3変異では全脳卒中のハザード比(HR)2.16(1.67-2.74)、虚血性脳卒中2.65(1.96-3.50)、脳出血2.42(1.23-4.22)、血管性認知症5.42(3.11-8.74)などに有意に関連していた。HTRA1変異では全脳卒中1.86(1.30-2.59)、虚血性脳卒中2.01(1.27-3.00)などで有意に関連し、COL4A1/2変異は脳出血3.56(1.34-7.53)でのみ有意に関連していた。MRIでの解析との関連では、NOTCH3変異、HTRA1変異ではWMH容積、PSMDともに有意に増加。中央値12.6年の観察でもNOTCH3変異は脳卒中、血管性認知症、HTRA1変異は脳卒中の発症と関連していた。血管リスクの影響に関しては、フラミンガムリスクスコアFRSにて検討したところ、高FRSは遺伝子変異キャリア、非キャリアともに関連していたが、統計学的には非キャリアのみが有意に関連し、変異キャリアにおいては倍数的相互作用は見られなかった。ただし、NOTCH3変異、HTRA1変異ではFRSでの血管リスクは追加的相互作用は見られた。
このコホート研究では脳卒中の原因となる単一遺伝子異常はこれまで考えられたより頻度が高く、脳卒中、認知症に関連していた。

2022年11月16日水曜日

CKDにおけるエンパグリフロジン

NEJM,2022
Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease

CKDに対してSGLT2阻害薬であるダパグリフロジンは有用性を示したが、eGFR<30の症例に限定されていた。ENPA-KIDNEY試験によるエンパグリフロジンの評価。ベーリンガー・インゲルハイム社の提供あり。8カ国241施設で実施。対象はeGFR20-45のCKDおよびeGFR45-90で尿アルブミン・クレアチニン比200以上のCKD。主要評価項目は末期腎障害への進行(透析、腎移植、eGFR<10、ベースラインのeGFRの40%以下、腎疾患死)。6609人(63.8歳、女性33.2%、糖尿病なし54.0%、平均eGFR37.3±14.5、eGFR<30が34.5%)、中央値2.0年観察、624人が最初の主要イベントとなり、正式な中間評価にて試験終了となった。末期腎障害への進行+腎疾患死はエンパグリフロジン群3304人中432人13.1%vs対照群3305人中558人16.9%で、ハザード比0.72(0.64-0.82,p<0.001)で有意に減らしていた。全入院は24.8vs29.2入院/100人・年でハザード比0.86(0.78-0.95)で減少。心不全入院、全死亡は差なし。末期腎障害への進行のハザード比0.71(0.59-0.89)。有害事象では重篤な尿路感染で1.6%vs1.6%、高カリウム血症2.8%vs3.3%、急性腎障害3.2%vs4.1%で差なし。サブグループ解析でも糖尿病の有無、eGFRの程度によっても主要イベントに差なし。尿アルブミン・クレアチニン比では300以上でエンパグリフロジン群で改善を認めた。

2022年11月9日水曜日

せん妄のリスクを有する948人の患者でのせん妄予防でのラメルテオンとスボレキサントの実臨床での有効性

J Clin Psychiatry,2020,vol.81,no.1
Real-Worid Effectiveness of Ramelteon and Suvorexant for Delirium Prevention in 948 Patients With Delirium Risk Factors

日本の総合病院9施設で2017-2018年の1年間、65歳以上の急性疾患および予定手術で入院し、せん妄リスク(認知症、MCI、股関節骨折、重症疾患、せん妄・不眠の病歴)のあるものを対象とし、訓練されたリエゾン精神科医によって評価を受け、ラメルテオン8mgを19時、ズボレキサント15mgを21時に服用が提案された。
967人の患者(79.6±9.1歳)が評価され、541人がせん妄なし、425人がせん妄ありとされた。せん妄リスクがあるが、せん妄なし541人のうち、ラメルテオン、ズボレキサント投与は401人、投与なし125人でせん妄悪化は15.7%vs24.0%で、多変量解析ではオッズ比0.48(0.29-0.80;P=0.005)で有意に減らした。
せん妄がすでに出ている425人のうち、ラメルテオン、ズボレキサント投与は333人、投与なし89人では、せん妄悪化は39.9%vs66.3%で、オッズ比0.36(0.22-0.59;P<0.0001)で有意に減らした。

2022年11月2日水曜日

結腸直腸癌とその関連死に対して、大腸内視鏡検査によるスクリーニングが影響するか

NEJM,2022,vol.387,no.17
Effect of Colonoscopy Screening on Risks of Colorectal Cancer and Related Death

2009年~2014年で、ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダ(オランダのデータは新しい同国の法的規制により使用できず)の55-64歳で、一般市民登録された健康な男女から無作為に抽出された人をスクリーニングとして大腸内視鏡検査を1回受ける様に招待する群と、通常群に、1:2に割付し、フォローアップした(NordICC研究)。主要エンドポイントは10-15年後の大腸癌と、その関連死。84585人の参加者(招待群2822人、通常群56365人、年齢59歳、中央値10.0年観察)で、招待群で実際に大腸内視鏡スクリーニング検査を受けたのは42.0%(ノルウェー60.7%>ポーランド33.0%、60-64歳43.1%>55-59歳40.9%)であった。招待時の内視鏡スクリーニングで、大腸癌と診断されたのは65人0.5%で、腺腫が指摘されたのは30.7%、ポリペクトミー関連の消化管出血は15人0.13%であった。穿孔や内視鏡関連死は認めず。
10年後の大腸癌は招待群vs通常群では0.98%vs1.20%で、リスク比0.82(0.70-0.93)でリスクが18%減少し、10年間で大腸癌1例を予防するためのNNTは455であった。大腸癌による死亡は0.28%vs0.31%、リスク比0.90(0.64-1.16)で差を認めず。全死亡でリスク比0.99であった。

2022年10月26日水曜日

肺機能が保たれ、症状のある喫煙者における気管支拡張剤

NEJM,2022,vol.387,no.13
Bronchodilators in Tobacco-Exposed Persons with Symptoms and Preserved Lung Function

喫煙歴があり、有意な呼吸器症状がある一方で、スパイロ検査で呼吸機能に大きな異常がない場合でも薬物治療をする事が多いが、そのエビデンスは乏しい。今回、RETHING研究のデータと用いて検討した。40-80歳、10パック年以上、CATスコア≧10、FEV1/FVC>0.70、FVC≧予測値70%を対象とし、喘息や肺疾患のあるもの、LAMA+LABAの定期使用、LABA+ステロイドの定期使用者などは除外。SABA使用者は30日のウォッシュアウト。参加者をインダカテロール27.5μg+グリコピロレート15.6μg×2回吸入とプラセボ群に1対1に割付。主要評価項目は12週後のSGRQスコア4点以上低下、二次評価項目はCATスコア2点以上低下など。780例が登録され、535例がランダム化、LABA、LAMA吸入薬群261例、プラセボ群274例に割付。ベースラインは58.8±9.7歳、男性48.6%、現喫煙者64.1%、BMI:29.5±5.1、CATスコア:17.6、SGRQスコア:38.2、吸入後%FVC:93.6、FEV1/FVC:0.78。ITT解析でSGRQスコアが4点以上改善は、56.4%vs59.0%で有意差なし。%FEV1の変化量は2.48%ポイントvs-0.09%ポイント、最大吸気量の変化量は0.12Lvs0.02Lであった。肺機能が保たれている、症状のある喫煙者において、LABA、LAMA吸入療法は自覚的な呼吸器症状を改善しなかった。

2022年10月19日水曜日

慢性腎臓病でのレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系阻害薬に関連した高カリウム血症での同薬を中止での臨床転帰

Am J Kidney Dis,2022,vol.80
Hyperkalemia-Related Discontinuation of Renin-Angiotensin-Aldosterone System Inhibitors and Clonical Outcomes in CKD : A Population Based  Cohort Study

CKDでのレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬の抗蛋白尿作用、CVイベント抑制効果は確立しているが、CKDにおける慢性の高カリウム血症ではRAAS阻害薬の中止、減量が一般的であるが、この戦略の長期予後は不明であり、住民ベースのコホート研究で検討した。カナダ、マニトバ州での診療データ(18歳以上)、オンタリオ州の診療データ(66歳以上)を用いて検討。eGFR<60のCKD患者で、RAAS阻害薬投与中でK≧5.5の初回高カリウム血症が指摘されたもので、90日が経過したもの(急性の高カリウム血症による死亡や転帰不良を除外するため)を対象とし、その時点でRAAS阻害薬を継続、中止群で検討。主要評価項目は全死亡。二次評価項目はCV死亡、CVイベント、透析導入。時間依存性共変量での解析も実施。マニトバコホートは7200人、74歳、女性47.5%、eGFR40.9、オンタリオコホートは71290人、79歳、女性51.7%、eGFR41.2。中止群は継続群に比して有意に高齢でカリウム値高値であった。カプラン・マイヤー曲線での生存率は継続群が有意に良好で、年齢や合併症、併用薬、カリウム値、eGFR等で調整したハザード比では、全死亡では継続群に比して中止群はマニトバでHR1.32(1.22-1.41)、オンタリオで1.47(1.41-1.52)で中止群の方が不良であり、CV死亡HR1.28、CVイベントHR1.17、透析導入HR1.65でどちらもコホートも同様の結果であった。時間依存性共変量での解析も同様の結果。またマニトバで35%、オンタリオで40%の患者がRAAS阻害薬を最大量で使用していたが、最大量継続、減量、中止で検討しても、透析導入を除く全死亡、CV死亡、CVイベントでは最大量継続が有意に良好であった。ベースラインのカリウム値が5.8以上や、AKI、敗血症でも同様の結果であった。

2022年10月12日水曜日

2型糖尿病での血糖降下

NEJM,2022,vol.387,no.12
Glycemia Reduction in Type 2 Diabetes -Glycemic Outcomes-

メトホルミンの次の血糖降下薬の選択において、長期的な比較研究は多くない。今回、GRADE研究として検討した。30歳以上で診断され、発症後10年未満、メトホルミンを少なくとも500mg以上内服中で、他の薬剤を使用していないものを対象とした。ランダム化前の準備期間6-14週でメトホルミンは最低1000mgまで増量。次に無作為にグラルギン20単位、グリメピリド1-8mg、リラグラチド0.6-1.8mg、シタグリプチン50-100mgに割付。主要評価項目はHbA1c:7.0%未達成。2013-2017年に登録され、57.2±10.0歳、男性63.6%(41.5%が60歳以上)、DM歴4.2年、無作為化時のメトホルミン1944mg、平均HbA1c:7.5±0.5%。平均5.0年観察(85.8%が4年以上)。最終観察時のHbA1c:7.0%未達成はグラルギン67.4%、グリメピリド72.4%、リラグラチド68.2%、シタグリプチン77.4%で、グラルギンに比してグリメピリド、シタグリプチンは有意に不良であった。4年の時点での平均のHbA1cはグラルギとリラグラチド7.1%、シタグリプチン7.2%、グリメピリド7.3%で差は小さかった。

2022年10月5日水曜日

ARBは軽度認知機能障害(MCI)から認知症への進行するリスクを下げる事に関連している

Hypertension,2022,vol.79
Angiotensin Receptor Blockers Are Associated With a Lower Risk of Progression From Mild Cognitive Impairment to Dementia

アンギオテンシンⅡ、Ⅳはそれぞれの受容体を介して神経保護的に作用する可能性が指摘され、ARBはAβ、タウの蓄積、脳萎縮、認知機能低下を抑制する報告がある。しかし、これらはMCIから認知症への進行抑制で、ACE阻害薬に比してARBが優れているかは明確ではない。今回は後方視的コホートで検討した。アルツハイマー病画像診断イニシアチブ(ANDI)のデータベースから、高血圧を有しMCIと診断された403人(74.0±7.3歳、女性37.7%)で中央値3.0年観察し、39.2%が認知症に進行した。認知症への進行のARBの調整ハザード比はACEIに比して0.45(0.25-0.81)p=0.023、他の降圧剤に比して0.49(0.27-0.89)、降圧剤なしに比して0.31(0.16-0.58)と有意にリスクを減らした。他の認知機能スコアである、MMSE、ADAS-Cog-13もARBがACEI、他の降圧剤に比して、低下が軽度であった。

2022年9月28日水曜日

父親の出生前の喫煙の曝露と自閉症スペクトラム障害の関連の可能性

Autism,2021,vol.25,no.7
Prenatal Exposure to Paternal Smoking and likelihood for Autism Spectrum Disorder

自閉症スペクトラム障害(ASD)は世界で1.6-3.0%の有病率の神経発達障害で、社会的コミュニケーションの障害と制限された反復的行動、興味が特徴とされる。韓国の2つのコホート研究で、ASDに対する父親の喫煙の影響を検討し、複製サンプルを使用し父親の喫煙タイミングがリスクに影響するかも検討した。DS研究では2009-2011年に韓国で実施したSAFARI研究の15981人中の10503人、RS研究では2007-2008年にチョナン市で実施したアンケート調査30552人のデータで検討した。ASDの表現型はアンケート調査ASSQを用いて検討し、ASSQスコア(0-54)が15以上を高可能性スコア、10-14を中可能性スコアとした。DS、DSで平均9.61歳、9.19歳で、ASD傾向中6.9%、7.2%、高4.3%、5.3%であった。DSでの父親の妊娠中の喫煙でのASD傾向がある子は修正オッズ比1.27(1.10-1.47)でRSでもaOR:1.26と同様であった。DSでは家族の精神疾患歴が父親の喫煙なしで4.49%、喫煙あり7.08%で有意に関連していた。喫煙は精子に突然変異を起こす事、妊娠中の母親への間接喫煙による毒性効果がASDリスクに関連している可能性があり、禁煙は子供のASDリスクを減らす可能性があるかもしれない。

2022年9月21日水曜日

昏迷、頭痛、発熱をきたした32歳男性

NEJM,2022,vol.387,no.10
Case Records of the MGH
Case 27-2022: A 32-Year-Old Man with Confusion, Headache, and Fever

10年来のベーチェット病の治療歴のある男性。2週間前からの昏迷。子供の年齢を正しく答えられない、日付を正しく言えないなどの症状で気づかれる。頭痛と項部硬直あり。2日前には発熱もあり。1日前より昏迷、眠気の悪化を認め受診。過去にベーチェット病に関連した肺塞栓、腸骨動脈瘤解離、ぶどう膜炎、腎梗塞の既往あり。ベーチェット病の治療にはアザチオプリン、シクロスポリン、プレドニゾロンあり、2年前に免疫抑制剤からアダリムマフ→インフリキシマブ→ゴリムマブに変更。アピキサバン中止72時間後に髄液検査施行。髄液蛋白正常、細胞数88(リンパ球97%)、CT、CTアンギオ異常なし。バンコマイシン、セフトリアキソン、アンピシリン、アシクロビル開始。発熱は改善したが、患者の認知機能は改善なし。髄液再検査、細胞数284(リンパ球72%、好中球13%)HSVのDNA検査陰性、クリプトコッカス抗原、エンテロウイルスRNA陰性。

鑑別診断
急性昏迷性脳症:自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎、抗LGI1受容体脳炎など)
急性脳炎:神経ベーチェット病による無菌性髄膜炎。ベーチェット病での小血管炎による脳炎は多い合併症ではない。ベーチェット病に合併する脳静脈洞血栓症。
TNF阻害薬による中枢神経合併症(脱髄病変により運動、感覚まれに認知機能が障害される)
感染症による脳炎:ニューイングランドでは東部馬脳炎、西ナイル熱など。リステリア症。
原発性CNS血管炎

診断:入院5日目のMRI、FLAIR画像で、橋、中脳、視床、右レンズ核、右内包、右尾状核に高信号→神経ベーチェットによる脳炎を支持する所見。5日目より陰部潰瘍の悪化が出現し、ベーチェット病を支持する症状。
治療:メチルプレドニゾロン静注。本例ではその後、ステロイド、ゴリムマブにMTXを追加。
注意事項:ベーチェット病の眼病変に効果のあるシクロスポリンは神経ベーチェットのリスクに関連があるとされる。

2022年9月14日水曜日

肛門周囲、陰茎の潰瘍、肛門痛、皮疹を認めた31歳男性

NEJM,2022,vol.387,no.6
Case Records of the MGH
Case 24-2022 : A 31-Year-Old Man with Perianal and Penile Ulcers,  Rectal Pain, and Rash

9日前からの肛門周囲の潰瘍で発症。その後、陰茎の潰瘍、肛門痛に増悪。肛門周囲、陰茎の潰瘍は周囲が硬く隆起。直腸からの出血、悪臭のある分泌物あり。その後、悪寒、発熱あり。体幹、手掌、足底に膿疱、水疱をきたす皮疹あり。口腔内には病変なし。その後、圧痛のある鼠径部リンパ節腫脹。肛門痛は強く、座れないほど。
患者は2人のルームメイト、猫と同居。14年前に2期梅毒の診断を受けPCGでの治療歴あり。口唇ヘルペスで時々バラシクロビル内服あり。さらにエムトリシタビン、テノホビルのHIV暴露前予防内服(PrEP)を受けている。2週間前にカナダへ旅行し男性のパートナーと予防具なしに性行為をしている。トレポネーマ抗体陽性、RPRは1:1陽性。血液HIV検査陰性、尿・直腸粘膜の検体での淋菌、クラミジアの核酸増幅検査陰性。

鑑別診断:陰部ヘルペス、帯状疱疹、伝染性軟属腫、淋病、梅毒、性病性リンパ肉芽腫、軟性下疳。梅毒では陰茎潰瘍、直腸炎では疼痛は乏しく、否定的。
本例ではカナダでの性交渉の相手二人も同様の症状が出ている事も判明。マサチューセッツ州の公衆衛生研究所のリアルタイムPCR検査およびCDCにも検体を送り、前者では非天然痘オルソポックスウイルスDNA陽性、後者でサル痘ウイルスのPCRテスト陽性が判明。最終診断:サル痘。経過は症状は自然に軽快、入院9日で全ての皮疹が痂皮化し退院。

2022年9月7日水曜日

若年2型糖尿病での週1回デュラグルチド

NEJM,2022,vol.387,no.5
Once-Weekly Dulaglutide for the Treatment of Youths with Type 2 Diabetes

若年の2型DMではメトホルミンの血糖コントロール不良例が多いことがTODAY研究で示され、成人より若年のT2DMではインスリン抵抗性やβ細胞機能障害が重度であるとされる。若年T2DMのGLP-1作動薬であるデュラグルチドの効果を検討した(AWARD-PEDS研究)。フェイズ3の無作為化RCTで、9カ国46施設で実施。研究のプロトコル、統計学的解析はスポンサーであるイーライリリー社がデザインした。10歳以上18歳未満で、BMIが85パーセンタイル以上、HbA1c6.5-11.0%のT2DMで、4週の観察期間後、プラセボ、デュラグルチド0.75mg、1.5mg群に1:1:1で割付。主要評価項目は26週後のHbA1cの変化。154人(14.5±2.0歳、女性71%、BMI:34.1±8.8、、メトホルミンのみあり63%、メトホルミン+基礎インスリンあり25%、HbA1c:8.1±1.3%)が無作為化され、26週95%、52週90%が完遂した。26週の時点で、HbA1cの変化量は+0.6pts、-1.2、-1.5でデュラグルチド群で有意に低下。HbA1c<7.0の割合は14%、55%、48%で有意に多かった。26週でのBMIの変化量は0.0、-0.2、-0.1で差は認めず。

2022年8月31日水曜日

ADHDにおける腸内細菌叢とプロビオティクス(生菌)療法

Progress in Neuropsycopharamacology & Biological Psychiatry,2021
Gut microbiota and probiotic therapy in ADHD: Areviw of current knowledge

ADHD注意欠陥多動性障害は多動、注意障害、衝動的行動を特徴とする神経発達障害で、子供の7.2%が関連するとの報告がある。多因子性であるが、双子の研究から遺伝的要因がよく知られ、ドパミン、セロトニンの伝達遺伝子であるDRD4、DRD5受容体遺伝子の関連が指摘されている。しかしADHDに関連する特定の遺伝子は同定されていない。最近のメタ解析では12の独立した遺伝子、染色体7のFOXP2の重要性が指摘。新しい研究では腸内細菌叢の変化、不均衡の関与が示された。
脳の発達等に腸内細菌叢の影響が報告され、うつ病、統合失調症、自閉症スペクトラム、過敏性腸症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病などですでに報告された。腸内細菌叢はドパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、GABAの生成、代謝に関連する。
最近ではADHDと腸内細菌叢の関連を示唆した論文は10本ある。腸内細菌叢のプロフィールを16sRNA遺伝子配列解析し、さらにそれらのシャノン指数を用いて検討した。ADHD の病因と症状の原因となる特定の細菌株を明確に示す結果は現時点はない。論文中の潜在的な指標には、ビフィズス菌、ナイセリア、バクテロイデス、フェカリバクテリウム、およびルミノコッカス属などが示された。
小児の研究では抑欝、不安、ストレスに対するプロバイテイクス療法で好ましい結果が示された。ADHDの小児では胃腸重症度指数が高く、便秘や鼓腸の頻度が高い事が報告された。ADHDでのプロバイオティクス補給のRCTの総説では7論文中、認知機能への有効性が示されたのは1論文のみであった。ある予備的なRCTでは32人(4-17歳)のADHDで、ラクトバシラスのプロバイオティクス療法で血清サイトカインの改善を報告した。
今後の研究では、研究方法の統一、同じ年代層の患者比較などが必要。

2022年8月24日水曜日

糖尿病と心不全進展(ARIC研究から)

JACC,2022,vol.79,no.23
Diabetes and Progression of Heart Failure 
-The Atherosclerosis Risk In Communities(ARIC) Study-

ARIC研究は米国4地域15792人が参加した研究であるが、その5回目、2011-2013年の観察6538人で心エコー検査を実施。心不全ステージCやデータ欠損を除外した4774人(75.4±5.1歳、女性58%、DM30%、ステージAのHF32.5%)で検討した。主要評価項目は急性非代償性HFまたは慢性安定HF。8.6年観察し、470HFイベント発生。ステージAのHFでDMなしではHFイベントは3.6/1000人・年に対し、DMありで5.7であった。腎機能、LDLコレステロール、血圧、血圧治療などで調整したハザード比ではステージAでDMなしに対し、DMありでHR1.56(0.86-2.85)、ステージB、DMなしでHR4.16(2.78-6.21)、ステージB、DMありでHR5.32(3.48-8.13)であった。さらにHbA1c≧7.0でみると、DMなし、ステージAに対し、HbA1c≧7.0、ステージAのHFイベントはHR1.52(0.53-4.38)であったが、イベント発生の年齢は若年化し、ステージB、HbAic≧7.0でHR7.56(4.68-12.20)であった。
ステージA、BでのDM管理がHF進展阻止に重要であることが示された。

2022年8月17日水曜日

胆嚢癌とその播種での遺伝子モデル

Annals of Oncology,2014,vol.25
A genetic model for gallbladder carcinogenesis and its dissemination

胆嚢癌自体は2人/10万人の多くない疾患。一方、チリやインドでは3.9~8.6/10万と多い。胆嚢癌では異形成、過形成が重要。胆石症は関連する因子。K-rasやp53変異は癌化に重要。胆石での慢性炎症での化生(metaplasia)も重要。胆嚢癌の播種の関連する遺伝子:p53変異は胆嚢癌の進行での早期に見られる変化の一つ。過形成からの胆嚢癌の経路としてp16/cyclin d1/CDK4の役割も強調された。KRAS変異は癌の59%、胆石関連異形成の73%で認められる。COX-2の過剰発現が胆嚢の癌化の早期に見られた。
胆嚢癌ではEGFR(上皮成長因子受容体)が高頻度(11.3~100%)で発現。正常胆嚢から化成/過形成、異形成でのEGFRの役割の検討が研究中。胆嚢疾患では9つの独立した上皮ムチン遺伝子が同定され、胆嚢疾患ではMUC5ACが過剰生成が見られ、血清MUC5ACレベルが予後不良の予測因子と報告された。
進行した胆嚢癌ではこれまで、ゲムシタビンや5FUなどの化学療法が実施されてきたが、最近の報告では腫瘍形成モデルでの理解から、抗-血管新生、抗HER2/neu、MEK阻害剤の可能性が指摘された。

2022年8月10日水曜日

二分脊椎

NEJM,2022,vol.387,no.5
Spina Bifida review article

妊娠3週の時点で神経管が閉鎖しないと発生し、頭蓋レベルでは無脳症、脊髄レベルでは脊髄髄膜瘤となり、両方だと頭蓋脊椎裂と呼ばれる。神経管閉鎖障害は遺伝的な要因、環境因子によるとされ、後者は母体のDM、高体温、抗てんかん薬、肥満などが関連するとされる。遺伝子は単一遺伝子ではなく複数の遺伝子異常となれ、げっ歯類のモデルではヒトの複雑な症状のモデルは作れていない。環境因子では葉酸が関連し、米国では葉酸の内服およびある種の食品への葉酸の添加が義務付けられている。10万出生あたりの頻度は最貧国で300以上、中所得国54-87、先進国34-37となっている。葉酸の内服時期、量、タイプなどはまだエビデンスがない。ケースコントロールスタディで、母体の赤血球中の葉酸レベルと神経管閉鎖障害が関連するという報告が一つある。
出生前手術を評価したMOMS研究では18歳以上、BMI35以下、妊娠19-26週で前向き、RCTが実施され、脊髄髄膜瘤では出生前手術が出生後手術に比して、30ヶ月の運動機能が優れている、1年後の水頭症の頻度(40%vs82%)、キアリ2型奇形(64%vs96%)であった事が示され、さらにその後の5-10歳での評価(MOMS2研究)でも出生前手術群のADL自立度が優れていた。水頭症に対してVPシャントが施行されるが、1年後のシャント不全が30-40%と報告され、神経内視鏡による第3脳室開窓術が実施されるようになっている。さらに神経内視鏡による脈絡叢のアブレーションも併用され、115人のウガンダでの病児の研究では70%がシャント不要と報告された。さらに東アフリカでの多施設研究が実施中である。二分脊椎でのシャント不全は画像上の悪化を示さない事がある。キアリ2型奇形での重要な症状悪化も画像では悪化を示さず、下部脳神経障害、呼吸障害のみの場合がある。
二分脊椎では膀胱機能の維持が重要で、泌尿器科医の役割が重要。また家族の半数の悩みは排便障害である。また下肢の拘縮、変形、側弯の整形的管理、褥瘡、ラテックスアレルギーへの対応が重要であり、それぞれの専門家での学際的対応が重要である。
今後、胎児鏡治療、硬膜閉鎖での組織エンジニアリング、幹細胞技術、膀胱神経刺激治療、側弯症での磁気制御成長ロッドなどの進歩が期待される。

2022年8月3日水曜日

妊娠中のワクチン接種と乳児のCovid-19による入院リスク

NEJM,2022,vol.387,no.2
Maternal Vaccination and Risk of Hospitalization for Covid-19 among Infants

妊娠中のCovid-19ワクチンにより、臍帯血、母乳、乳児の血清から抗体が検出される事、さらに妊娠中のワクチン接種は妊娠中のCovid-19感染よりも最初の6ヶ月は高い抗体価が得られる事が報告されている。診断陰性例コントール試験のデザインで、6ヶ月未満の乳児の妊娠中のワクチン接種の効果を検討した。2021年7月~2022年3月、米国22州30病院に入院した1327例を登録。妊娠前にワクチン接種が済んでいるものの大部分は除外して検討。コロナ症例537例(181例はデルタ株優勢期、356例はオミクロン株優勢期)、コロナ陰性の対照例512例で検討した。ワクチンはファイザー社製、モデルナ社製。平均年齢は2ヶ月。コロナ群19%、対照群24%に1つ以上の基礎疾患あり。234例が妊娠中にワクチン接種を受けた。コロナ群の妊娠中ワクチン接種あり16%、対照群29%。コロナ群でワクチン接種なし、ありではICU入室23%vs13%、重症12%vs9%。妊娠中のワクチン接種で、6ヶ月未満の乳児のコロナ入院予防の有効率52%(95%CI:33-65)、ICU入室には70%(42-85)であった。デルタ株優勢期では80%(60-90)、オミクロン株で38%(8-58)。妊娠20週以降のワクチン接種で有効率69%(50-80)、20週以内の接種で38%(3-60)であった。

2022年7月27日水曜日

高血圧と感染性心内膜炎の関連

Hypertension,2022,vol.79
Association Between Hypertension and Incident Infective Endocarditis

感染性心内膜炎は年間10万人あたり3-7人発生するとされる。英国の長期コホート研究では降圧は慢性の心血管疾患やIE、リウマチ性心疾患などの感染性疾患を減らす可能性を示唆した。韓国の健康保険(NHIS)のデータを用いて検討した。2009年から400万人のデータを平均9.2年観察。平均47.12歳、男性55.08%、IEは812人に発症。10万人・年あたりの発生率は血圧正常群(SBP<120)0.93、前高血圧群(120≦SBP<140)1.39、高血圧群(SBP>140)2.57、高血圧治療群5.96で、血圧正常群に比してハザード比は1.33(1.06-1.68)、1.98、2.56で血圧に応じてリスクが増加していた。サブ解析では年齢<65歳、運動なし、脂質異常なしでは、血圧が単独でIEリスクになっていた。IE高リスク群(先天性心疾患、心臓デバイス、弁置換術後)では血圧正常でIEのハザード比26.9、高血圧+IE高リスクでハザード比39.5であった。

2022年7月20日水曜日

脳卒中予防のための心臓手術中の左心耳閉鎖術

NEJM,2021,vol.384,no.22
Left Atrial Appendage Occlusion during Cardiac Surgery to Prevent Stroke

LAAOSⅢ研究。多施設ランダム化試験。18歳以上で、心房細動があり、CHA2DS2-VAScスコア2点以上の人で、他の目的の心臓手術時に、Webで1対1にランダム化して左心耳閉鎖術の追加を割付。手術前に外科医にeメールで割付を連絡。2012年から2018年に4811例が登録。主要評価項目は虚血性脳卒中と全身性塞栓症。最終的に2379例が左心耳閉鎖術群、2391例が対照群で解析された。平均年齢71歳、男性67.5%、CHA2DS2-VAScスコア4.2点。人工心肺時間は閉鎖術群119分、対照群113分。退院時に抗凝固療法は83.4%vs81.0%であった。平均3.8年観察され、脳梗塞+塞栓症は4.8%vs7.0%でハザード比0.67(0.53-0.85)で、有意にリスクを減らしていた。二次評価項目では全死亡22.6%vs22.5%、心不全入院7.7%vs6.8%で差なし。術後48時間以内の出血による再手術、術後30日以内の死亡でも差なし。(サブグループ解析では抗凝固療法なしでは5.1%vs6.4%で有意差なし、脳梗塞既往ありでは7.2%vs10.7%で有意差なし、CHA2DS2-VAScスコア5点以上でも7.2%vs9.2%で有意差がなかった)

2022年7月13日水曜日

プライマリケアにおける抗うつ薬の継続と中止

NEJM,2021,vol.385,no.14
Maintenance or Discontinuation of Antidepressants in Primary Care

ANTLER研究として、最低9か月以上投与した抗うつ薬の維持療法と治療終了を比較した。英国の150カ所の一般診療所で多施設無作為化二重盲検試験として実施。シタロプリム(日本未承認)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、フルオキセチン(日本未承認)、ミルタザピン(リフレックス)を内服中の患者を対象。英国ではプライマリケアでは広く使用されていないエスシタロプリム(レクサプロ)および中止時の離脱症状の可能性のあるパロキセチン(パキシル)は除外。継続群と中止群は1対1に無作為に割り付けられ、中止群に割り付けられると、薬局に連絡が行き、最初の1ヶ月は半量に減量、2か月目はプラセボと半量を交互に、3か月目はプラセボに変更される。主要評価項目は52週時点でのうつ病の再燃。うつ病再燃の定義はCIS-Rの抑うつ症状の新たなエピソードの発生とした。二次評価項目としてPHQ-9、GAD-7、SF-12などの8つの項目で評価。23553人から478人がランダム化され、238人(54±13歳、女性71%、既婚61%、セルトラリン17%、シタロプリム47%、フルオキセチン32%、ミルタザピン4%)が維持群、240人が中止群に割付。52週でうつ病再燃は維持群39%、中止群56%でハザード比2.06(1.56-2.70)であった。有害事象は維持群4%、中止群3%で、両群とも自死はなし。

2022年7月6日水曜日

代用塩の心血管イベント、死亡に対する効果

NEJM,2021,vol.385,no.12
Effect of Salt Substitution on Cardiovascular Events and Death

中国で実施されたSSaSS研究。中国の農村部の600の村を抽出し、通常の塩を使用する村、75%ナトリウム25%カリウムの代用塩を使う村に1:1で無作為に割付。各村より35人ずつ健康な人を選出し5年間健康観察を行った。その家庭で、代用塩が禁忌である人がいる場合やK保持性利尿薬、K製剤内服中もしくは重篤な腎疾患の人がいる場合は除外した。主要評価項目は脳卒中とし、二次評価項目は心血管イベント、心血管死、全死亡などとした。20995人が登録(65.4歳、女性49.5%、72.6%に脳卒中既往あり、88.4%に高血圧あり)。平均4.74年観察され、代用塩と通常塩での脳卒中の発症は29.14vs33.65/1000人・年で、レート比0.86(0.77-0.96;p=0.006)。心血管イベントは49.09vs56.29、レート比0.87(0.80-0.94;p<0.001)、全死亡レート比0.88(0.82-0.95)で有意にリスクを低下させていた。高K血症などの有害事象は3.35vs3.30、レート比1.04(0.80-1.37)で差を認めず。(ベースラインで脳卒中既往者の数が多いのが気になりますが…)

2022年6月29日水曜日

胸痛で受診した17歳少年

NEJM,2022,vol.386,no.23
Case Records of the MGH
Case 17-2022 : A 17-Year-Old Boy with Chest Pain

Covid19パンデミック前に17歳の少年が胸痛、意識消失、心電図異常、CK、トロポニンT上昇で小児ICU入室。5日前から発熱、嘔気、下痢、筋痛、胸痛発症。胸痛は左肩に放散し、深呼吸や臥位で増強。搬送時、指先でのデキストロメータでの血糖は24㎎/dlであった。搬送時、37.6度、指先は冷たく、色調不良であった。心エコーでは壁運動異常認めず。ICU入室24時間後、心電図異常、CK、トロポニンTは改善傾向で、退院。10日後の外来では胸痛消失。その9.5ヶ月後、15時間前から続く39.3度の発熱、胸痛、嘔吐、下痢、眼前暗黒感で受診。毛細血管再充満時間3-4秒。指先でのデキストロメータは22↓心電図は洞性頻脈。

鑑別診断:心膜炎、筋炎、ウイルス感染症、
自己免疫疾患:著明な血糖低値→偽低血糖:中枢静脈より末梢での血糖低値→末梢循環不全による。毛細血管再充満時間延長→レイノー現象の可能性。
追加検査:ANA>5120、speckled pattern。抗DsDNA抗体陰性、抗SS-A抗体・抗SS-B抗体陰性、抗Sm抗体陽性、抗U1-RNP抗体陽性、抗Scl-70抗体陰性。
診断:分類不能の自己免疫性疾患

2022年6月22日水曜日

虚血性脳卒中の後期けいれんの新しい診断モデル(SeLECTスコア)を使った予測

LANCET Neurol,2018,vol.17
Prediction of late seizure after ischemic stroke with a novel prognostic model (the SeLECT score) : a multivariable prediction model development and varication study

スイスの連続脳梗塞例を登録したコホート研究(1200例、71歳、男性58%)を用いて、後期けいれんの有無、それに関連する因子の検討および別のオーストリア、ドイツ、イタリアの脳梗塞の3つコホート研究(計1169例)で、関連する因子の実証を行った。全体では1年以内の後期けいれんは4%、5年以内は8%にみられた。単変量解析で関連している因子を抽出し、さらに多変量解析を実施したところ、後期けいれんに関連していたのは、脳卒中重症度、主幹動脈病変、早期けいれん、皮質病変、MCA領域の梗塞で、各項目に得点を付与し頭文字をとってSeLECTスコア(NIHSS:4-10点:1、11点以上:2、主幹動脈病変あり:1、早期けいれんあり:3、皮質病変あり:2、MCA領域:1で0-9点)を作成。SeLECTスコア1点ごとに後期けいれんのハザード比1.8増加。スコアのC統計量は0.77であった。スコアでは例えば1点で1年以内の後期けいれんのリスクは1%、9点で63%、5年以内の後期けいれんのリスクは1点で2%、9点で83%と推計された。

2022年6月15日水曜日

アルブテロール・ブデソニドの固定用量での喘息発作時の頓用吸入

NEJM,2022,vol.386,no.22
Albuterol-Budesonide Fixed-Dose Combination Rescue Inhaler for Asthma

中等症~重症の喘息でのステロイド+気管支拡張薬(ブデソニド+ホルメテロールの配合薬など)の発作時使用のデータは、限られている。MANDALA研究として、中等症~重症喘息での発作時のアルブテロール+ブデソニド配合薬使用とアルブテロール単独使用を評価した。
対象は4歳以上で、過去1年間に1回以上の重症喘息発作があり、中等量~高用量の吸入ステロイド使用もしくは低用量~高用量の吸入ステロイド+LABA使用者。COPD、過去3ヶ月にステロイド全身投与例を除いた。北米、南米、欧州、南アの295施設で実施。二重盲検試験で、アルブテロール180μg+ブデソニド160μg群、アルブテロール180+ブデソニド80群、アルブテロール180群を1:1:1に割り付け。主要評価項目は初回重症喘息発作でtime to event解析を実施。3132例(49.4歳、女性64.8%)が3群に割り付け。重症喘息発作は高用量群はアルブテロール単独群に比してハザード比0.74(0.62-0.89)と有位にリスクを減らし、低用量群は単独群に比してハザード比0.84(0.71-1.00)であった。重症喘息発作の年間発生率は高用量群は単独群に比してレート比0.75(0.61-0.91)、低用量群は単独群に比してレート比0.81(0.66-0.98)と減らしていた。(アビリオン社からの資金提供あり)

2022年6月8日水曜日

高齢心不全患者における左房の構造と機能

JACC,2022,vol.79
Association of Left Atrial Structure and Function With Heart Failure in Older Adults

従来の左房計測より、より詳しい左房計測の予後予測の有用性をARIC研究のデータを用いて検討した。ARIC研究は米国4地域の1987年から始まる15792人の住民コホート研究で、これまでに5回の心エコー検査を実施。主要評価項目は心不全入院と全死亡の複合。4901例(75.2±5.05歳、男性40.2%、高血圧81.2%、DM34.1%、BMI:27.7)で解析。イベントありは756例、イベントなし4145例。イベントあり群は、心エコー計測で、LVMi、LVEF、E/e’で有意差を認めたが、LAViMin(最小左房容積)、LAEF(左房エンプティフラクション)、LAリザーバー機能などの測定でも有意差を認めた。今回、左房測定の正常値を検討するために低リスク群301例のデータで10パーセンタイルを求め、その値より異常な場合のイベントのハザード比を算出すると、LAViMinで1.68、LAEFで2.37、LAリザーバ機能で4.10で、イベントと関連を認めた。最大左房容積はイベントとは関連を認めなかった。心不全の予後に従来の左房計測(最大左房容積)よりも詳細な左房計測が有用である。

2022年6月1日水曜日

片頭痛の予防治療としてのアトゲパント

NEJM,2021,vol.385,no.8
Atogepant for the Preventive Treatment of Migraine

アトゲパントは経口投与が可能な小分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体作動薬で、半減期11時間で、1-2時間後に最大血中濃度に達するとされる。ADVANCE研究は本剤の第3相二重盲検試験。本剤を10mg、30mg、60mg、プラセボを無作為に割付し、12週投与。対象は18-80歳で、1ヶ月の片頭痛の頻度が4-14日で、片頭痛発症が50歳未満のもの。慢性片頭痛、新たな持続性頭痛、1ヶ月15回以上の片頭痛等は除外。参加者は片頭痛時、トリプタン、エルゴタミン、オピオイド、NSAIDs等での治療は許可された。主要評価項目は12週後の1ヶ月あたりの頭痛の頻度の変化。873例で解析され、アトゲパント10mg群221例、30mg群228例、60mg群231例、プラセボ群222例(40.3±12.8歳、女性89.2%、BMI:30.8、1ヶ月の片頭痛9.5回)。12週後のベースラインからの変化量でのプラセボ群との平均差は10mg群-1.2(-1.8to-0.6)、30mg群-1.4、60mg群-1.7であった。1ヶ月の片頭痛の回数が過去3ヶ月の月平均回数の50%以上減少した患者数は55.6%、58.7%、60.8%で、プラセボとのオッズ比は3.1(2.0-4.6)、3.5、3.8であった。有害事象では便秘と嘔気が多く、便秘7.7%、嘔気5.0%(10mg群)にみられた。(アレルガン社からの資金提供あり)