2023年12月27日水曜日

糖尿病のない肥満患者でのセマグルチドによる心血管イベント予防

NEJM,2023,vol.389,no.24
Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes

多施設二重盲検試験、41か国、804施設で実施。ノボ・ノルディスク社の資金提供あり。45歳以上で、BMI≧27、糖尿病なしで心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患)の既往のあるもの。HbA1c≧6.5、90日以内のGLP-1作動薬使用歴のあるもの、NYHAⅣの心不全、末期腎不全は除外。1:1に割付し、セマグルチド群は4週ごとに0.5→1.0→1.7→2.4㎎/週まで増量。妊娠、膵炎発症、カルシトニン濃度≧100ng/Lになれば、中止。主要評価項目は心血管死+心筋梗塞+脳卒中の複合。2018年10月~2021年3月まで実施、17604例がランダム化され、セマグルチド群8803例(61.6歳、男性72.2%、白人83.9%、BMI:33.3)対照群8801例。観察期間39.8ヶ月。心血管死+心筋梗塞+脳卒中は6.5%vs8.0%でハザード比0.80(0.72-0.90、p<0.001)であった。体重減少は-9.39%vs-0.88%。有害事象は16.6%vs8.2%で、胃腸障害が10.0%vs2.0%であった。

2023年12月20日水曜日

英国での心不全で鉄欠乏性貧血の患者での鉄デリイソマルトースの静脈投与(IRONMAN研究)

Lancet,2022,vol.400
Intravenous ferric derisomaltose in patients with heart failure and iron deficiency in the UK(IRONMAN): an investigator-initiated, prospective, randomised, open-label,blinded-endopoint trial

英国で70施設でPROBE法で実施。18歳以上、フェリチン<100μg/Lまたはトランスフェリン飽和度<20%で、LVEF<45%で、6か月以内に心不全入院歴があり、NT-proBNPが洞調律で250以上、AFで1000以上を対象とした。フェリチン≧400、Hb<9は除外。Hb≧14(男)、Hb≧13(女)も除外。デルイソマルトース第二鉄群(以下、鉄静注群)は同剤を20mg/㎏投与。主要評価項目は心不全入院+心血管死。2016年8月~2021年10月まで実施され、鉄静注群569例(73.2歳、女性25%、NYHA Ⅱ58%、Ⅲ40%、AF50%、LVEF32%)、通常治療群568例(73.5歳、女性28%)。中央値2.7年(IQR:1.8-3.6)観察され、心不全入院+心血管死は22.4%vs27.5%で、推計治療効果0.82(0.66-1.02,p=0.070)であった。二次評価では心血管死+心不全・脳卒中・心筋梗塞の入院で37%vs43%、推計治療効果0.83(0.69-1.00,p=0.045)であった。
デルイソマルトース第二鉄の静脈内投与は、心不全や心血管死による入院リスクの低下と一定関連していた。

2023年12月13日水曜日

高次医療機関での成人重症患者でのズボレキサント、レンボレキサントによるせん妄予防

J Clin Psychiatry,2023,vol.84,no.1
Evaliation pf Suvorexant and Lemborexant for the Prevention of Delirium in Adult Critically Ill Patients at an Advanced Critical Care Center : A Single-Center, Retrospective, Observational Study

デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)の重症疾患でのせん妄予防効果を観察的研究として検討した。佐賀医大付属病院ERに2018-2021年に入院した重症患者。DORAを内服していないもの、およびせん妄出現後にDOPAが開始されたものを対照群とし、DORA(ズボレキサント、レンボレキサント)内服群と比較検討した。3346例が登録され、入院期間が72時間以内のもの、18歳未満、頭蓋内占拠病変のあるもの、退院まで昏睡状態のもの、アルコール離脱症状の高リスク群などを除外した633例で、DORA群123例(71歳、男性57.7%)、対照群510例(69歳、男性63.5%)で検討した。
Cox回帰分析では、せん妄増悪のハザード比は、ズボレキサントで0.56(0.36-0.86)、レンボレキサントで0.26(0.11-0.62)と低くなっていた。せん妄リスク因子で調整すると、ズボレキサント0.34(0.20-0.58)、レンボレキサント0.21(0.08-0.52)であった。ラメルテオンの併用率はDORA群48.8%、対照群15.5%であった。

2023年12月6日水曜日

右股関節痛をきたした鎌状赤血球症の29歳男性

NEJM,2023,vol.389,no.22
Case Records of the MGH
Case 37-2023:A 29-Year-Old Man with Sickle Cell Disease and Right Hip Pain

年に3-4回、鎌状赤血球症(SCD)による血管閉塞痛の入院歴あり。SCDによる阻血性骨壊死により、両股のTHAの既往あり。胸椎の圧迫骨折もあり。2日前より、いつもと異なる右股関節痛。37.8度発熱。白血球15680、CRP:100.6mg/L、赤沈113mm。

鑑別診断
下肢静脈血栓症、骨壊死、骨髄炎
好気性ボトルの血培2セットにて、グラム陰性桿菌。MALDI‒TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)によりキャンピロバクター・フェトゥスと判明。
診断
キャンピロバクター・フェトゥスによる菌血症、骨髄炎