2023年2月22日水曜日

COPDでの吸入ステロイド治療と全死亡の関係、60本のRCTでのメタ解析

Chest,2023,vol.163,no.1
Association of Inhaled Corticosteroids With All-Cause Motality Risk in Patients With COPD -A Meta-analysis of 60 Randomized Controlled Trials-

COPDの治療ガイドラインGOLDではICSを含む吸入療法が推奨されているが、ICSが全死亡を減らすか否かは結論が出ていない。近年の二つの大規模研究、IMPACT研究、ETHOS研究ではICSが全死亡を減らす事が示された。メタ解析にて検討した。全死亡をアウトカムに含むRCTで、2021年8月までの論文を収集し、3717論文を検討し、最終的に60論文、103034例でメタ解析を実施。Peto法での統合オッズ比では全体でICSありはICSなしに比して、OR,0.90(0.84-0.97)で全死亡減らしていた。ICS/LABA対LABAでもOR,0.89(0.84-0.97)、ICS/LABA対LABA/LAMAでOR,0.75(0.61-0.92)、Triple対monoICSでOR,0.73(0.59-0.91)、Triple対LABA/LAMAでOR,0.72(0.57-0.89)でいずれも全死亡を減らしていた。サブ解析では好酸球数が2%以上または200/μL以上、65歳未満、ICS中用量、ICS低用量で有意に全死亡を減らしていたが、65歳以上、好酸球数正常、ICS高用量では全死亡減少は有意ではなかった。

2023年2月15日水曜日

肥満症に対するチルゼパチド週1回投与

NEJM,2022,vol.387,no.3
Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity

GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)はGLP-1とは別の栄養刺激ホルモンで脳や脂肪組織でのエネルギーバランスを調整するとされる。チルゼパチドはネイティブのGIPシークエンスから設計され、GIPとGLP-1の両方に働くアゴニストであり、本研究ではフェーズ3の無作為化二重盲検試験、SURMOUNT-1試験として実施された。
対象はBMI:30以上(または合併症のあるBMI:27以上)で、糖尿病は除外。チルゼパチド5mg群、10mg群、15mg群、プラセボ群に割付て72週投与。複合エンドポイントはベースラインからの体重変化と5%以上の体重減少達成。9ヶ国119施設で実施。2539人(44.9歳、女性67.5%、体重14.8㎏、BMI:38.0)が4群に割付。ベースラインからの体重変化はそれぞれ-15.0%、-19.5%、-20.9%、-3.1%でプラセボに対して有意に減少。5%以上の減量達成はそれぞれ85%、89%、91%、35%であった。20%以上の減量達成はプラセボが3%であったのに対し10mg群50%、15mg群57%であった。チルゼパチドの有害事象の多くは消化器系の症状で軽度から中等度であり、有害事象での中断はそれぞれ4.3%、7.1%、6.2%、2.6%であった。膵炎はそれぞれ0.2%であった。

2023年2月8日水曜日

うつ病に対するシロシビンvsエスシタロプラム

NEJM,2021,vol.384,no.15
Trial of Psilocybin versus Escutalopram for Depression

SSRIは大うつ病に対する第1選択薬であるが、効果が出るのに数週間かかり、患者によっては反応しない場合もある。シロシビンとシロシンは精神興奮作用のあるマジック・マッシュルーム属に含まれ、シロシビンは20世紀半ばには気分障害に対する効果が確認されている。今回は中等症~重症の大うつ病に対する、シロシビン、エスシタロプラムの6週間のフェーズ2の二重盲検試験。ハミルトン抑うつスケール(0-52点)で17点以上のうつ病の患者を1対1で、シロシビン25mg群、エスシタロプラム10mg→20mg群に割付。主要評価項目はQIDS-SR16(16項目クイックうつ病自己評価スケール、0-27点)の変化。QIDS-SR16はベースラインでシロシビン群14.5、エスシタロプラム群16.4で、6週後の変化はシロシビン群で-8.0±1.0、エスシタロプラム群-6.0±1.0で有意差を認めず。QIDS-SR16での寛解(ベースラインより6点以上の改善)は57%vs28%であった。

2023年2月1日水曜日

鉄欠乏を伴う心不全患者へのデルイソマルトース鉄の静注療法、IRONMAN研究、オープンラベル前向き医師主導無作為化試験

Lancet,2022,vol.400
Intravenous ferric derisomaltose in patients with heart failure and iron deficiency in the UK (IRONMAN) : an invesigator-initiated, prospective, randomised, open-label, blinded-endpoint trial

英国の70施設で実施。18歳以上でLVEF≦45%の心不全で、血清鉄<100またはトランスフェリン<20%の患者を無作為にデルイソマルトース鉄静注群と通常治療群に割付。(Hb<9.0、フェリチン>400は除外)転帰はマスク。主要評価項目は心不全入院+心血管死。1869例がススクリーニング、1137例が無作為化され、デルイソマルトース鉄静注群569例(73.2歳、女性25%、NYHA2:58%、NYHA3:40%、AF50%、Hb値12.1)、通常群568例に割付。中央値2.7年フォローアップされ、心不全入院+心血管死は336(22.4人・年)vs411(27.5人・年)、レート比0.82(0.66-1.02)で低い傾向を認めたが、有意差を認めず。