2026年1月28日水曜日

高齢者における心臓ストレス状態と血圧管理、ASPREE研究の事後解析から

 Circulation,2025,vol.152
Heart Stress and Blood Pressure Management in Older Adults: Post Hoc Analysis of the ASPREE Trial

NT-proBNPは心筋壁へのストレスを反映するバイオマーカーであり、その評価が血圧管理でCVDリスクの層別化に役立つかをASPREE研究の事後解析として検討した。ASPREE研究は70歳以上の豪、65歳上の米に住む地域住民19114人で実施された低用量のアスピリンのCVDリスクへの効果の研究で、65-79歳、80歳以上で層別化し、NT-proBNPは65-74歳では150pg/mL以上、75歳以上では300以上を心臓ストレス状態(以下HS)と定義し、主要評価項目はCVDイベント(MI、脳卒中、虚血性心疾患死、心不全入院)、二次評価項目はMACEs(MI、脳卒中、虚血性心疾患死の複合)。ASPREE研究の観察期間は中央値8.3年。HSは全体の25.8%にみられた。HSなし、高血圧(140以上)なしの参照群に比して、高血圧あり+HSなし群ではCVDイベントの修正ハザード比は1.41(1.18-1.70)、高血圧なし+HSある群1.79(1.34-2.39)、高血圧あり+HSあり群2.32(1.89-2.84)。HSなし群ではCVDイベントは血圧に対してU字型で、SBP130-139が最もリスクが低かったが、HSあり群では、リスクは線形に増加しSBP120以下が最もリスクが低かった。

2026年1月21日水曜日

発熱、腹痛をきたした50歳女性

NEJM,2026,vol.394,no.2
Case records of the MGH
Case 1-2026: A 50-Year-Old Woman with Fever and Abdominal Pain

直前までブラジルに旅行。4日前、全身倦怠感。3日前、下痢、腹痛、軽度腹部膨満感。前日、悪寒戦慄、頭痛、下肢痛出現。黄疸、下血、血尿、皮疹、胸痛、咳、目耳鼻の症状などは認めず。既往に住血吸虫症があり、非肝硬変性の門脈圧亢進症、食道静脈瘤、脾腫、慢性血小板減少症、慢性白血球減少症の合併あり。10年前の肝臓エコーでのエラストグラフィでは肝硬度上昇あり。ER初診時、体温38.4,血圧76/44,意識レベル低下、点状出血が軟口蓋にあり。ER到着後、乳酸リンゲル1L開始。VCM、CTRX、アジスロマイシン開始。胸部XPで両肺にびまん性に間質影、気胞陰影を認め、PIPC/TAZも開始。晶質液2L点滴するも血圧73/41.血液検査、WBC:22800、PLT:2.9万、乳酸13.2(0.5-2.0)、Dダイマー>7650(500未満)、静脈pH:7.15

鑑別診断  
腸チフス、サルモネラ、ビブリオ  熱帯熱マラリア、シャーガス病、デング熱
バベシア症
細菌感染による敗血症性ショック(腎盂腎炎、髄膜炎菌性敗血症)
典型的な髄膜炎菌性敗血症では小出血斑、点状出血がみられるが、見られない場合もあい。下肢痛は髄膜炎菌性敗血症に多い症状。脾機能障害、肝硬変は低補体血症の原因となり、髄膜炎のリスクになる。

血液塗抹グラム染色検査:グラム陽性球菌に見えた
MALDI-TOF検査(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)にて、髄膜炎菌で矛盾しない
グラム染色再検にてグラム陰性双球菌、最終的な血清型はW135。
患者はその後、ショック状態から離脱できず、これ以上の救命処置は希望されず、ER到着12時間後死亡。

2026年1月7日水曜日

経口抗凝固薬内服中の慢性冠症候群でのアスピリン投与

NEJM,2025,vol.393,no.16
Aspirin in Patients with Chronic Coronary Syndrome Receiving Oral Anticoagulation

フランスの51施設での抗凝固療法単独vs抗凝固療法+アスピリンの前向き二重盲検ランダム化試験。対象は6ヶ月以上経過した冠動脈ステントの患者で、抗凝固療法中の者。主要評価項目は心血管死+MI、脳卒中、塞栓症、冠動脈PCI、四肢虚血の複合。二次評価項目はネット臨床イベント(全死亡+心血管イベント+大出血)等。
2020-2024年にかけて872人がランダム化され、433人が併用群、439人が単独群に割付。71.7歳、男性85.3%、全例PCI歴あり、PCI後平均3年、72.7%がMI既往。89%がAFあり。抗凝固薬はアピキサバン62.2%、リバロキサバン24.7%、ダビガトラン2.9%。試験中に全死亡が併用群で過剰に発生したため、試験は早期終了。観察期間2.2年。
主要評価項目の心血管死+心血管イベントはアスピリン併用群16.9%vs単独群12.1%、修正ハザード比1.53(1.07-2.18)、全死亡+心血管イベント+大出血で28.6%vs17.3%、ハザード比1.85(1.39-2.46)全死亡13.4%vs8.4%、ハザード比1.72、心血管死7.6%vs4.3%、ハザード比1.90でいずれも有意にアスピリン併用群でリスクが高かった。大出血は10.2%vs3.4%、ハザード比3.35。本研究では先行研究に比して、ハイリスク群が中心で、心血管イベントが先行研究では1-2%に比して、約7-8倍であった。