2026年4月15日水曜日

意識の変容、低血糖をきたした12歳女性

NEJM,2026,vol.394,no.12
Case Records of the MGH
Case 9-2026: A 12-Year-Old Girl with Altered Mental Status and Hypoglycemia

当日朝、起こしてもなかなか起きず、視線も定まらず、言葉も出ない状態。前夜までは普通。体温35.4度、手足の自発的な運動は認められた。血糖30。ブドウ糖静注で意識レベル改善。頭部CT異常なし。この1年で体重減少4kgあり。圧痛を認めない腹部膨満あり。その後も持続的ブドウ糖静注にもかかわらず持続的低血糖あり。βヒドロキシ酪酸、インスリン、Cペプチドは検出感度以下、プロインスリン0.6pmol/L(3.6-22.0)であった。

鑑別診断
インスリノーマ、人為的低血糖、先天性高インスリン血症、インスリン自己免疫症候群
非膵島細胞腫瘍性低血糖症(IGF-Ⅱ産生腫瘍)

検査
グルカゴン負荷試験:血糖46→142と増加
IGF-Ⅱ:IGF-Ⅰ比8.6:1(正常<3:1)
腹部CTにて28×21の下腹部に充実性腫瘤(間葉系腫瘤、癌、転移性サルコーマ、リンパ腫、非定型奇形腫)
コア生検が実施。免疫組織染色、遺伝子検査等にて良性平滑筋腫と診断され、外科的切除。

2026年4月8日水曜日

急性呼吸不全における超音波診断の妥当性

 Chest,2008,vol.134
Relevance of Lung Ultrasound in the Diagnosis of Acute Respiratory Failure:
 The BLUE Protocol

5MHzのプローベを用い、前胸壁、側胸壁、後側胸壁でICU入室20分以内に3分未満で実施。Aラインは肺胞内または気胸による反復性の水平なアーチファクト。Bラインは彗星の尾の様な、Aラインを消失し、肺スライディングを伴うアーチファクトで、1つの画面に3本以上見られる場合をBライン+とする。AプロファイルはAラインと肺スライディングが見られるもので、COPD、肺塞栓、背部肺炎を示唆する。BプロファイルはBライン+が主なもので、心原性肺水腫を示唆する。ABプロファイルは通常肺炎に関連する。
急性呼吸不全260例(68歳(22-91歳)で検討。Aライン+肺スライディングは89%の感度、97%の特異度で、喘息(34例)、COPD(49例)を示した。複数のびまん性Bライン+肺スライディングは肺水腫を感度97%、特異度95%で示した。正常な前部プロファイルと深部静脈血栓症は肺塞栓症(21例)を感度81%、特異度99%で示した。肺スライディング消失+Aラインは感度81%、特異度100%で気胸を示した。前部肺胞コンソリデーション、肺スライディングの消失した前部びまん性Bライン、前部の非対称性間質性パターン、後部コンソリデーション、前部びまん性Bラインのない胸水は感度89%、特異度94%で肺炎を示した。これらのプロファイルの使用で90.5%で正確な診断が得られる。

2026年4月1日水曜日

成人の敗血症に対する抗菌薬De-Escalation

 JAMA int med,2026,vol.186,no.2
Antibiotics De-Escalation in Adults Hospilized for Community-Onset Sepsis

ミシガン病院安全コンソーシアム敗血症レジストリのデータを用いて検討した。敗血症として登録された36924例のうち、抗MRSAの広域抗菌薬を投与されたもの6926例、抗緑膿菌の広域抗菌薬を投与されたもの11149例で検討した。4日目にDe-EscalationされたものをDe-Escalation群とした。主要評価項目は90日の全死亡。2993例(43.2%)、2493例(22.4%)がそれぞれDe-Escalationされた。広域抗菌薬継続群とDe-Escalation群では90日全死亡は抗MRSAでオッズ比1.00(0.88-1.14)、抗緑膿菌で0.98(0.89-0.93)で有意差を認めず。14日目までの抗菌薬投与日数はDe-Escalation群で有意に短縮(リスク比0.91(0.89-0.93)、0.91(0.88-0.93))、入院日数の短縮(RR、0.88(0.85-0.92),RR0.91(0.88-0.93)を認めた。

2026年3月25日水曜日

老人施設入所者の高血圧治療の降圧剤漸減

 NEJM,2025,vol.393,no.20
Reduction of Antihypertensive Treatment in Nursing Home Residents

ランダム化オープンラベルの多施設研究、RETREAT-FRAIL研究。仏の108の老人施設の80歳以上の入所者で、降圧剤を1剤以上内服中で、血圧130未満のものをプロトコールに従い、減量していくステップダウン群と通常治療群に1対1に無作為に割付し4年間観察。主要評価項目は全死亡。1048例(90.1±5.0歳、女性80.7%、MMSE:13.4、臨床フレイルスコアで軽度29.9%、中等度22.0%、重度38.5%、ベースラインのSBP113±11)がランダム化され、ステップダウン群528例、通常群520例。降圧剤は中止が勧められるList1、必須のList2に分けられ、38.4か月の観察期間中、ステップダウン群は2.6±0.7剤→1.5±1.1剤に減量、通常群で2.5±0.7→2.0±1.1剤となっていた。終了時、血圧は4.1mmHg高かった。降圧剤を再開したのはステップダウン群で7例のみ。主要評価項目である全死亡は61.7%vs60.2%で差なし。AHF発生は12.7%vs11.0%、転倒50.0%vs50.0%、骨折7.8%vs9.2%で差を認めなかった。試験はステップダウン群での優越性を検証する試験。

2026年3月18日水曜日

低リスク群でのTAVRと外科的A弁置換術の7年の転帰

 NEJM,2026,vol.394,no.8
Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Low-Risk Paients at 7 Years

PARTER3研究の7年間の転帰。前向き、多施設、オープンラベル、ランダム化試験。SAPIEN3弁(バルン拡張型人工弁)でのTAVRと生体弁でのA弁置換術(SAVR)に低リスク患者を1対1に無作為に割付。主要評価項目は死亡、脳卒中、手技・心不全に関連する入院の複合。第2主要評価項目は死亡、脳卒中、関連する入院日数。71施設で1000人の患者(73歳、男性69.3%)が無作為化され、TAVR群503例、SAVR群497例。主要評価項目のイベントは34.6%vs37.2%で差はなし。死亡19.5%vs16.8%、脳卒中8.5%vs8.1%、関連入院20.6%vs23.5%であった。7年時点でのA弁圧格差平均は13.1±8.5mmHg vs12.1±6.3、生体弁の機能不全6.9%vs7.3%で、両群で差を認めなかった。TAVR群で最初の数年で弁の血栓症リスクがやや増大するが、後に同様となり、また、心筋梗塞もTAVR群で初期に多い傾向があるも、後に同様となっていた。

2026年3月11日水曜日

eGFR、尿中アルブミン量で層別化した場合のSGLT2阻害薬での腎・心転帰、RCTでのメタ解析

 Kidney Medicine, 2021, vol.3
SGLT2 Inhibitors and Kidney and Cardiac Outcomes According to Estimated GFR Albuminuria Levels: A Meta-analysis of Randomized Contolled Trials

18歳以上で、2型DM、CKD、心不全でのSGLT2阻害薬のRCT論文を検索し、471論文から最終10のRCTでメタ解析を行った。評価項目での腎転帰はCr値の2倍化、eGFRの40%以上の低下、末期腎不全、腎不全死。心転帰は心不全入院、心血管死。計71533人(64.8歳、女性34.4%)でeGFR<60は39.9%、UACR>300㎎/gは26.4%であった。eGFRの層別化で、45未満、45-60、60以上で、SGLT2阻害薬は心転帰を16.0,9.5,1.9/1000・年減らした。UACRの層別化で300以上、30-300、30未満で腎転帰を17.3,1.4,2.2/1000人・年減らし、心転帰を14.8、8.7、2.1/1000人・年減らした。

2026年3月4日水曜日

入院での血液培養での一ヶ所vs複数ヶ所採血

Am J Infction Control, 2025, vol.53
Single-site sampling strategy versus multisite sampling strategy in blood culture collection within the hospital setting: A systematic review

2013論文から7論文を選択し、計18901人、延べ24955回の血培を評価した。7論文中、5論文では一ヶ所での採血で、採血量が多い程、病原体の検出率は向上、コンタミネーションの割合が低かった。40mL採血の2論文では一ヶ所採血(SSS)、複数ヶ所採血(MSS)で、血培陽性率97.4%vs95.5%、77.5%vs54.1%。3論文でのコンタミ率はSSSで2.8-3.6%、MSSで5.6-7.9%であった。

2026年2月25日水曜日

咳と低酸素血症をきたした80歳女性

 NEJM,2026,vol.394,no.5
Case Records of the MGH
Case 4-2026: An 80-Year-Old Woman with Cough and Hypoxemia

8週間前から咳、鼻汁、頭痛、倦怠感、食思不振。3週後には鼻汁、頭痛は改善したが、咳、倦怠感、食思不振は持続。5週前、左側腹部に掻痒のある水疱を認め、帯状疱疹と診断され、バラシクロビルが投与。体重は6㎏減少。
既往歴として、1年前に左腋窩LN腫脹があり、原発不明の扁平上皮癌と診断。患者は独身で、マサチューセッツ州に居住。6年前にケニア、ルワンダ、タンザニア等へ旅行歴がある。
酸素飽和度93%、NT-proBNP:704pg/mL、RSVなどのウイルスパネル検査陰性、百日咳、クラミジア、マイコプラズマは陰性。肺CTでは肺尖部優位に両側にびまん性に末梢より中枢優位に、すりガラス影を認めた。

鑑別診断
感染症、癌、自己免疫性疾患
免疫抑制状態
風土病(ヒストプラズマ症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症)
HIV-1陽性、CD-4:33↓、βDグルカン強陽性(500以上)
HIV-1感染に伴うニューモシスチス肺炎
ST合剤で治療。本患者ではBAL液でC.neoformansが検出。このため、髄液検査追加→陰性。AIDSに対してはその後ART治療。

2026年2月18日水曜日

急性期虚血性脳卒中に対するミノサイクリンの効果と安全性、EMPHASIS研究、多施設二重盲検無作為化試験

 Lancet,2026
Efficacy and safety of minocycline in patients with acute ischaemic stroke(EMPHASIS): a multicetre, double-blind, randomised controlled trial

ミノサイクリンは虚血性脳卒中のモデルでミクログリアの抑制、MMPの阻害、脳実質への白血球遊走の抑制により、神経学的な転帰の改善が期待されるが、臨床試験の結果は一貫していない。中国の58施設で実施。18-80歳で、脳梗塞発症72時間以内、NIHSS:4-25点の患者を1:1にランダム化し、ランダム化後30分以内にミノサイクリン200mgを経口(経管)投与し、その後4日間、12時間毎に100mgを投与。その他の通常治療はガイドラインに従い経静脈的血栓溶解療法、血管内血栓回収療法を含めて許可。主要評価項目は90日後のmRS 0-1。
2023年5月から2024年5月に登録され、1724人がランダム化され、862人づつ割付。平均年齢65歳、NIHSS中央値5(4-7)、最初の投薬までの時間41.3H、tPA投与12.2%、血管内血栓回収療法2.4%、TOAST分類ではLAA:45.0%、脳塞栓5.7%、SVD:39.4%、その他3.5%、分類不能6.4%。90日後のmRS 0-1はミノサイクリン群52.6%vsプラセボ群47.4%で修正RR1.11(1.03-1.20)で有意に良好であった。hs-CRPは両群で差は認めず。90日の再発、有害事象に差を認めず。

2026年2月4日水曜日

入院を減らすための高用量インフルエンザワクチン

NEJM,2025,vol.393,no.23
High-Dose Influenza Vaccine to Reduce Hospitalization

 スペイン、ガリシア州で実臨床でのオープンラベル、ランダム化試験。65-79歳、2023-2024(59490人)、2024-2025(74986人)の2シーズンで、それぞれ実施。72.3±4.3歳、男性53.6%。主要評価項目はインフルエンザまたは肺炎による入院。主要評価項目のイベントは高用量群で174/67093(0.26%)、標準用量群227/66789(0.34%)、相対的ワクチン効果23.7%(95%CI、6.6-37.7)。インフルエンザによる入院は0.09%vs0.14%、相対的ワクチン効果31.8%(5.0-51.3)。重篤な有害事象は両群で差なし。

2026年1月28日水曜日

高齢者における心臓ストレス状態と血圧管理、ASPREE研究の事後解析から

 Circulation,2025,vol.152
Heart Stress and Blood Pressure Management in Older Adults: Post Hoc Analysis of the ASPREE Trial

NT-proBNPは心筋壁へのストレスを反映するバイオマーカーであり、その評価が血圧管理でCVDリスクの層別化に役立つかをASPREE研究の事後解析として検討した。ASPREE研究は70歳以上の豪、65歳上の米に住む地域住民19114人で実施された低用量のアスピリンのCVDリスクへの効果の研究で、65-79歳、80歳以上で層別化し、NT-proBNPは65-74歳では150pg/mL以上、75歳以上では300以上を心臓ストレス状態(以下HS)と定義し、主要評価項目はCVDイベント(MI、脳卒中、虚血性心疾患死、心不全入院)、二次評価項目はMACEs(MI、脳卒中、虚血性心疾患死の複合)。ASPREE研究の観察期間は中央値8.3年。HSは全体の25.8%にみられた。HSなし、高血圧(140以上)なしの参照群に比して、高血圧あり+HSなし群ではCVDイベントの修正ハザード比は1.41(1.18-1.70)、高血圧なし+HSある群1.79(1.34-2.39)、高血圧あり+HSあり群2.32(1.89-2.84)。HSなし群ではCVDイベントは血圧に対してU字型で、SBP130-139が最もリスクが低かったが、HSあり群では、リスクは線形に増加しSBP120以下が最もリスクが低かった。

2026年1月21日水曜日

発熱、腹痛をきたした50歳女性

NEJM,2026,vol.394,no.2
Case records of the MGH
Case 1-2026: A 50-Year-Old Woman with Fever and Abdominal Pain

直前までブラジルに旅行。4日前、全身倦怠感。3日前、下痢、腹痛、軽度腹部膨満感。前日、悪寒戦慄、頭痛、下肢痛出現。黄疸、下血、血尿、皮疹、胸痛、咳、目耳鼻の症状などは認めず。既往に住血吸虫症があり、非肝硬変性の門脈圧亢進症、食道静脈瘤、脾腫、慢性血小板減少症、慢性白血球減少症の合併あり。10年前の肝臓エコーでのエラストグラフィでは肝硬度上昇あり。ER初診時、体温38.4,血圧76/44,意識レベル低下、点状出血が軟口蓋にあり。ER到着後、乳酸リンゲル1L開始。VCM、CTRX、アジスロマイシン開始。胸部XPで両肺にびまん性に間質影、気胞陰影を認め、PIPC/TAZも開始。晶質液2L点滴するも血圧73/41.血液検査、WBC:22800、PLT:2.9万、乳酸13.2(0.5-2.0)、Dダイマー>7650(500未満)、静脈pH:7.15

鑑別診断  
腸チフス、サルモネラ、ビブリオ  熱帯熱マラリア、シャーガス病、デング熱
バベシア症
細菌感染による敗血症性ショック(腎盂腎炎、髄膜炎菌性敗血症)
典型的な髄膜炎菌性敗血症では小出血斑、点状出血がみられるが、見られない場合もあい。下肢痛は髄膜炎菌性敗血症に多い症状。脾機能障害、肝硬変は低補体血症の原因となり、髄膜炎のリスクになる。

血液塗抹グラム染色検査:グラム陽性球菌に見えた
MALDI-TOF検査(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)にて、髄膜炎菌で矛盾しない
グラム染色再検にてグラム陰性双球菌、最終的な血清型はW135。
患者はその後、ショック状態から離脱できず、これ以上の救命処置は希望されず、ER到着12時間後死亡。

2026年1月7日水曜日

経口抗凝固薬内服中の慢性冠症候群でのアスピリン投与

NEJM,2025,vol.393,no.16
Aspirin in Patients with Chronic Coronary Syndrome Receiving Oral Anticoagulation

フランスの51施設での抗凝固療法単独vs抗凝固療法+アスピリンの前向き二重盲検ランダム化試験。対象は6ヶ月以上経過した冠動脈ステントの患者で、抗凝固療法中の者。主要評価項目は心血管死+MI、脳卒中、塞栓症、冠動脈PCI、四肢虚血の複合。二次評価項目はネット臨床イベント(全死亡+心血管イベント+大出血)等。
2020-2024年にかけて872人がランダム化され、433人が併用群、439人が単独群に割付。71.7歳、男性85.3%、全例PCI歴あり、PCI後平均3年、72.7%がMI既往。89%がAFあり。抗凝固薬はアピキサバン62.2%、リバロキサバン24.7%、ダビガトラン2.9%。試験中に全死亡が併用群で過剰に発生したため、試験は早期終了。観察期間2.2年。
主要評価項目の心血管死+心血管イベントはアスピリン併用群16.9%vs単独群12.1%、修正ハザード比1.53(1.07-2.18)、全死亡+心血管イベント+大出血で28.6%vs17.3%、ハザード比1.85(1.39-2.46)全死亡13.4%vs8.4%、ハザード比1.72、心血管死7.6%vs4.3%、ハザード比1.90でいずれも有意にアスピリン併用群でリスクが高かった。大出血は10.2%vs3.4%、ハザード比3.35。本研究では先行研究に比して、ハイリスク群が中心で、心血管イベントが先行研究では1-2%に比して、約7-8倍であった。