2023年5月24日水曜日

前立腺癌に対する、観察、手術、放射線治療後の15年での転帰

NEJM,2023,vol.388,no.17
Fifteen-Year Outocomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Prostate Cancer

限局性の前立腺癌の管理は議論の余地がある。ProtecT研究は1999年~2009年に英国で、50-69歳でPSA検査を契機に限局性前立腺癌と診断された1643人を無作為に積極的観察群、手術群、放射線治療群に割付し10年間フォローアップしたが、今回、さらに中央値15年フォローアップした。ベースラインのPSA:4.6(3.0-18.9)。最初の1年はPSAを3ヶ月毎、それ以降は6ヶ月毎測定。積極的観察群ではPSAが50%以上増加した時点で、改めて観察継続、精査、根治的治療、緩和ケアの選択する。手術群では断端陽性や術後PSA:0.2以上増加で、補助放射線治療を検討。放射線治療群では3D原体照射法74Gy、37区域後、抗アンドロゲン治療。全て群でPSA:10以上で骨シンチが推奨され、20以上で抗アンドロゲン治療を検討した。1643人中1610人(98.0%)がフォローアップを完遂。ベースラインではグリーソンスコア6のグリーソングレード1が76.0%であったが、現在のリスク層別化ツールでは24.1%が中等度リスク、9.6%が高リスクに相当した。15年の時点で主要評価項目の前立腺癌死は45例2.7%で、積極的観察群3.1%、手術群2.2%、放射線治療群2.9%で差を認めず。全死亡は356例21.7%で、3群に差を認めず。104例6.3%に転移を認め、積極的観察群9.4%、手術群4.7%、放射線治療群5.0%で、後2群は積極的観察群より少なかった。臨床的増悪はそれぞれ25.9%、10.5%、11.0%で認められた。積極的観察群は10年の時点で54.8%が根治的治療(手術or放射線)を受けていたが、15年の時点では61.6%であった。積極的観察群の24.4%が根治的治療および抗アンドロゲン治療を受けずに生存していた。サブ解析では65歳未満では放射線治療群より積極的観察群、手術群が前立腺癌死亡のリスクが低く、65歳以上では積極的観察軍より、手術群、放射線治療群が前立腺癌死亡が少なかった。
15年間のフォローアップでは前立腺癌死亡は治療の割付にかかわらず低く、限局性前立腺癌治療の選択に際しては利益と害を検討する必要がある。

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