2023年9月6日水曜日

SARS-CoV-2感染の脳や記憶への長期の影響

Cell Death Discovery,2023,vol.9
Long-term effects of SARS-CoV-2 infection on human brain and memory

COVID-19後、様々な症状が2ヶ月以上続く場合をLong-COVID症候群と呼ぶ様になっており、COVID-19後10-15%に見られるとされる。SARS-CoV-2の脳への考えられる感染経路。1)鼻腔粘膜細胞の多くにはACE2受容体が発現。嗅神経から直接、脳へ侵入。2)感染量が多い場合、全身のACE2受容体、可溶性ACE2受容体に結合し、BBBを細胞結合を介してまたはBBB周囲を破壊し脳へ侵入。3)結膜炎→視神経→脳へ侵入などが考えられている。脳内では脈絡叢細胞、灰白質や嗅球でACE2受容体が発現している。さらに嗅神経等に発現しているNRP1などもSARS-CoV-2感染に関連している。
SARS-CoV-2感染前後の脳MRIを比較して、脳容積減少のエビデンスがある。SARS-CoV-2は他のウイルスに比してパーキンソニズムの増加、アルツハイマー病様の神経病理を引き起こすエビデンスがある。
SARS-CoV-2感染ではウイルス複製とは別にスパイク蛋白による細胞融合=合胞体は、重症肺炎や重度の免疫反応を起こすが、神経変性疾患と関連するとされる。
SARS-CoV-2感染では記憶に影響する。それは小児でも報告されている。その機序はサイトカイン、合胞体形成が関連している。海馬でのミクログリアの活性化、IL-6などのサイトカイン増加により記憶が障害されるとされる。軽症~中等症でのCOVID-19では髄液中にウイルスRNAは検出できず、サイトカイン増加等が重要視される。重度のCOVID-19では10%に血液、心筋、脳に対する自己抗体が検出され、Long-COVIDでの症状を説明できるかもしれない。
SARS-CoV-2の3ヶ月以上の持続感染が報告されているが、脳でのサイトカイン発現の長期刺激が脳機能や記憶に影響を与えているかもしれない。さらにウイルスがなくてもスパイク蛋白のみで神経炎症、行動異常を引き起こすとする報告がある。

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