2025年2月26日水曜日

高血圧患者における降圧剤治療前後の自宅心拍数と死亡リスク:HOMED-BP研究の事後解析から

J Am Heart Assoc,2024,vol.13
Home Pulse Rate Before and During Antihypertensive Treatment and Mortality Risk in Hypertensive Patients : A Post Hoc Analysis of the HOMED-BP Study

HOMED-BP研究は日本で実施された多施設前向きRCTで高血圧の厳格治療群、通常治療群の比較試験で、その事後解析。40‐79歳、中等度高血圧、457クリニックで最終3022人(59.4±9.9歳、女性50.2%、BMI≧25,38.6%、自宅心拍数69.0、自宅SBP151.8、自宅DBP90.1)のデータを解析した。心拍数で5分割して解析。心拍数の低い第1五分位(心拍数41-61)に対して、心拍数の早い第5五分位(心拍数76-108)は有意に、若年、飲酒率、喫煙率、糖尿病、自宅DBPが高値であったが、自宅SBPや貧血は差がなかった。7.3年(4.8-9.1年)のフォローアップで72例が死亡し、50例で主要心血管イベントが発生。心血管イベントは心拍数での差は認めなかったが、全死亡は第3五分位以上で有意に死亡が多く、1SDの心拍数(安静時で9.4/分、フォローアップ期間中で9.9/分)増加で、ハザード比1.54(1.24-1.92)、1.70(1.39-2.08)であった。ROC解析では、ベースラインの心拍数67.8/分がカットオフポイントで、AUC0.578、感度0.71、特異度0.48であった。

2025年2月19日水曜日

インスリン治療なしの2型糖尿病でのインスリン・エフシトラ(週1回)vsデルグデク(1日1回)

NEJM,2024,vol.391,no.23
Insulin Efsitora versus Degludec in Type 2 Diabetes without Previous Insulin Treatment 

週1回のエフシトラのフェーズ3試験。オープンラベルのRCT、10ヵ国121施設。18歳以上、BMI45以下、HbA1C7.0-10.5で、最低3か月以上非インスリンでの薬物療法歴あるものを対象。主要評価項目は52週後のHbA1Cでのデルグデクに対する非劣性。2022年6月~2024年4月に1267人がスクリーニングされ、928人がランダム化され、エフシトラ群466人(57.6±10.6歳、男性60.3%、アジア人35.0%、HbA1C:8.21±0.96、BMI:30.4、GLP-1併用49.8%、SGLT2I併用38.4%)、デルグデク群462人。52週後のHbA1CはE群8.21→6.97、D群8.24→7.05で、優位性は示せなかったが、非劣性は示された。GLP-1併用の有無でも同様の結果。52週の時点の使用量はE群314.7U/週、D群334.4U/週で、有意にE群で少なかった。有症状の低血糖はE群130例、253件、D群97人、190件でレート比1.34(0.97-1.85)で有意差を認めず。

2025年2月12日水曜日

痛風発作時のコルヒチンを用いた尿酸低下療法の導入による心血管イベント、新規患者での後方視的コホート研究

Lancet,2024
Cardiovascular events in patients with gout initiating urate-lowering therapy with or without colchicine for flare prophylaxis: a retrospective new-user cohort study using linked primary care, hospitalisation, and mortality data

痛風発作後、最初の数か月に尿酸低下療法を導入すると、痛風発作が誘発されるおそれがあり、最初の3-6か月の痛風予防には、コルヒチンが第1選択として推奨されているが、実際には10-20%しか投与されていない。臨床研究データリンクAurumのデータを用いて、コルヒチンの心血管イベント予防について検討した。1997年-2021年のデータ。NSAIDsやコルヒチンの過去の使用歴のあるものは除外。42万人のデータのうち、99800人が解析され、16028人(63.5歳)が新規にコルヒチンが投与され、83772人(62.7歳)がNSAIDsもコルヒチンも投与されていなかった(予防治療なし群)。コルヒチンは平均47.3±33.7日、0.97±0.16mg投与。175.5日フォローアップされ、主要評価項目である心血管イベントは1.4%vs1.8%で、加重IRでは28.8/1000人・年vs35.3で加重ハザード比は0.82(0.69-0.94)(ITT解析)でリスクを減らしていた。

2025年2月5日水曜日

2型糖尿病に合併した慢性腎臓病でのフィネレノンの心血管および腎臓への長期効果、FIDELITY統合解析

Euro Heart J,2022,vol.43
Cardiovascular and kidney outcomes with finerenone in patients with type2 diabetes and chronic kidney disease : FIDELITY pooled analysis

ミネラルコルチコイド受容体の過活動は心、腎、血管の炎症、線維化を引き起こす。MR受容体拮抗薬であるフィネレノンはFIDELIO-DKD研究で腎転帰を改善し、FIGARO-DKD研究では心血管転帰を改善した。そのデータの統合研究。両研究棟もT2D+CKDで、RAS阻害薬が耐容量まで投与中、K値≦4.8で、FIDELIO研究はT2D+CKDで、尿アルブミンクレアチニン比(UACR)30-300、eGFR:25-60またはUACR≧300、FIGARO研究はUACR:30-300,eGFR:25-90またはUACR:300-5000、eGFR≧60のものを対象とし、主要評価項目は心血管転帰、腎転帰とした。統合データでは13026人(フィネレノン群6519人、プラセボ群6507人、64.8±9.5歳、男性69.8%、HbA1C:7.7±1.4、eGFR:57.6、UACR30-300,26.4%、UACR≧300,66.7%、インスリン58.6%、GLP17.2%、SGLT26.7%併用)が解析された。複合心血管転帰(心血管死、MI、脳卒中、心不全入院)ではハザード比0.86(0.78-0.95)であった。腎転帰ではベースラインからeGFRが57%以上低下を腎悪化とした場合の複合腎転帰でハザード比0.77(0.67-0.88)、末期腎不全(透析+腎移植)でHR0.80(0.64-0.99)、eGFR<15は0.70(0.60-0.83)でリスクを低下させていた。全死亡は8.5%vs9.4%で、HR0.89(0.79-1.00,p=0.051)であった。有害事象である高K血症は14.0%vs6.9%で、持続的な高K血症による投与不能例は1.7%vs0.6%であった。