2025年4月30日水曜日

癌関連静脈血栓塞栓症に対する用量減量してのアピキサバン治療の延長

NEJM,2025,vol.392,no.14
Extended Reduced-Dose Apixaban for Cancer-Associated Venous Thromboembolism

癌患者は静脈血栓塞栓症の高リスクであり、その場合、6ヶ月の経口抗凝固療法またが低分子ヘパリンが推奨されている。今回、API-CAT研究として、下肢深部静脈血栓症、肺塞栓症で抗凝固療法6ヶ月実施後のアピキサバン2.5㎎×2回の非劣性を検討した。
1766例(69歳、61-75歳、男性43.4%、乳癌22.7%、結腸癌15.2%、婦人科癌12.1%、肺癌11.3%、体重75.7㎏、BMI:27.0)が無作為化され、866例が減量群、900例が通常群に割付。主要評価項目は12ヶ月後の血栓塞栓症の再燃(incidental含む)。11.8ヶ月後の血栓塞栓症の再燃は2.1%vs2.8%で差なし。出血2.9%vs4.3%、全死亡17.7%vs19.6%、血栓塞栓症の再燃+出血+全死亡で19.9%、22.1%で差なく非劣性であった。

2025年4月23日水曜日

咳、体重減少をきたした79歳女性

NEJM,2025,vol.392,no.15
Case Records of the MGH
Case 11-2025: A 79-Years-Old Woman with Cough and Weight Loss

4週前に感冒様症状の後、咳、痰が持続し、睡眠障害を伴う。昨年から10.4㎏の体重減少あり。5年前に南アフリカ、4年前に南米、6か月前に東南アジアに渡航歴あり。母親リンパ腫の既往。血液検査:血沈:55mm、CRP:1.19、胸部XPにて右胸水。胸水穿刺にて1.3L排液。胸水検査にて、赤血球14000/μL、有核細胞6300で10%が好中球、30%がリンパ球、5%マクロファージ、54%分類不能な細胞。胸水蛋白5.6g/dL、LDH:230

鑑別診断:
胸水のパターンはLight基準より滲出性。滲出性胸水:感染症、炎症、癌。
非感染性滲出性胸水:肺塞栓症、SLEなどの全身性炎症性疾患、薬剤性胸水

診断的検査
胸水細胞の病理学的検討:胸水細胞→形質細胞
CT、PET-CTにて右肺に無気肺、右肺中葉にPET-CTでFDG取り込みあり。さらに胸腔内リンパ節、左上顎洞にFDG取り込みあり。
最終診断:低分化型B細胞リンパ腫
(境界型リンパ腫でのリンパ腫の家族歴は中等度リスク)
治療はリツキシマブ+ベンダムスチンで初回治療4年後の寛解は2/3。本患者はCD20-CD3抗体glofitamab、CD20モノクローナル抗体obinutuzumabの治験参加し、2か月後に寛解。

2025年4月16日水曜日

背部痛、呼吸困難をきたした24歳男性

NEJM,2024,vol.391,no.9
Case Records of the MGH
Case 27-2024: A 24-Year-Old Man with Pain and Dyspnea

1923年3月の症例。3日前までは元気だったが、全身倦怠感、頭痛、背部痛が出現。入院前日より発熱、乾性咳嗽、悪寒出現し、身体がカチカチになり体動困難。呼吸困難、前胸部痛で来院。高熱、頻脈(92-145)、頻呼吸(28-58)。膿性痰。胸部XPにて右上肺、左下肺にコンソリデーション、左肺門リンパ節腫脹。心尖部bruitあり。左手掌、右示指に小充血性斑あり。入院3日目、膿性痰増加、4日目にはさらに全身状態悪化し死亡。

鑑別診断
1918年からインフルエンザのパンデミックあり。

診断
インフルエンザによる気管支肺炎

2025年4月9日水曜日

意識の変容とアシデミアをきたした72歳女性

NEJM,2025,vol.392,no.11
Case Records of the MGH
Case 8-2025: A 72-Year-Old Woman with Altered Mental Status and Acidemia

5年前に膀胱癌の既往があり、フルオロウラシル、マイトマイシンCの化学療法の既往あり。2週間前に血尿、排尿困難があり、シプロフロキサシンの投与を受ける。4日前、膀胱鏡検査にて、放射線膀胱炎、尿管癌の診断を受け、膀胱全摘術が予定された。膀胱鏡検査の2日後、2.5kgの体重増加があり、トルセミド、スピロノラクトンスの投与を受けた。その夜、興奮状態となり、翌朝、娘が救急要請。
7ヶ月前から傾眠傾向があり、高CO2血症のため、BiPAP、利尿剤投与あり。2型DMのため、ダパグリフロジン、メトホルミンの投与、他の投薬あり。
胸部XPでは肺うっ血、両側胸水、無気肺を認めた。
ICU入室時、ABGでpH:7.19、PaCO2:87、PaO2:81、AG:16→23→32、アセトアミノフェン、エタノール、サリチル酸は検出せず。

鑑別診断
ショック状態:敗血症性ショック、心不全、血管内脱水。
代謝性アシドーシス:高AG、呼吸性アシドーシスの代償。しかし、ICU入室後、さらにAG高値。
高AG代謝性アシドーシスの原因:GOLDMARK
G:エチレングリコール、O:オキシプロリン、L:乳酸、D:D-乳酸(まれ)、M:メタノール、A:アスピリン、R:腎不全、K:ケトアシドーシス

血中βヒドロキシ酪酸:9.1(<0.4)高値

診断;血糖正常性糖尿病性ケトアシドーシス
血糖正常性ケトアシドーシスは診断が遅れがちで、診断基準は、アニオンギャップ高値の代謝性アシドーシス、血中ケトン体高値、重炭酸イオンの低値。
糖尿病性ケトアシドーシスの原因:感染症、インスリン治療の中断、心筋梗塞、脳血管障害、膵炎、1型糖尿病の新規発症。本例ではSGLT2阻害薬の使用が考えられた。