2025年8月13日水曜日

腸骨大腿動脈狭窄での血管内治療は大動脈負荷を減らす事によりHFpEFの左室拡張能を改善する

Circulation:Heart Failure,2024,vol.17
Endovascular Treatment of Flow-Limiting Iliofemoral Stenosis Improves Left Ventricular Diastolic Function in Patients With HFpEF by Reducing Aortic Pulsatile Load

腸骨大腿動脈狭窄に対するEVTがLV拡張能を改善し、NYHAなどの予後を改善するか検討した。対象はPADでラザフォード分類Ⅱ~Ⅲ(安静時痛~限局性皮膚病変あり)で、LVEF≧50%、ESCのHFA-PEFFスコア≧5のHFpEFを併存するもの。AF、弁膜症は除外。
デュッセルドルフ大学単施設で計30例で解析。EVT群25例(65.5歳、男性64%、BMI:25.9)非実施群5例(背景に有意差なし)。EVT群ではABI:0.67→0.88、PWV:11.7→9.6、Augmentaion Index(AIx):32.5→28.0と有意に改善。LV拡張能の指標であるE/e':16.0→13.9、LAVI:36.4→34.1、LVMI:154→154→147とEVT後、およびフォローアップ中に改善した。NYHAはⅡ56%、Ⅲ40%→Ⅰ12%Ⅱ80%、Ⅲ4%と有意に改善した。

2025年8月6日水曜日

頭痛、運動失調をきたした69歳男性

NEJM,2025,vol.393,no.2
Case Records of the MGH
Case 19-2025: A 69-Year-Old Man with Headache and Ataxia

3年前にびまん性大細胞型びまん性リンパ腫DLBCLと診断、ベンダムスチン、リツキシマブで治療。1年後、右手脱力増悪し、造影MRIにて左半卵円中心に造影される病変を認め、脳生検にてEBV陽性のCNS病変再燃と診断され、CAR-T細胞療法、イブルチニブで治療。その後、クリプトコッカス肺炎にてイブルチニブ休止。
2週間前、転倒、背部打撲。その後、歩行障害、上肢機能悪化し、ER受診。患者は以前より、アシクロビル、アピキサバン、フルコナゾール、AT合剤、タムスロシン等を内服し、周期的に感染予防にIVIG療法実施。ニューイングランドの郊外に居住し、屋外での水泳、ボート漕ぎ、庭仕事をし、最近、数回、ダニに刺された。
構音障害+、視方向性眼振+、両上肢失調+、右上肢脱力、反射亢進+、感覚障害なし。梅毒、ライム病検査陰性。髄液検査はアピキサバン内服中で中止。MRIでの左前頭葉病変変化なし。
入院4日目に、意識障害、運動失調増悪し、両側の外転神経麻痺出現。経静脈的アシクロビルに変更。髄液検査では細胞数21、77%リンパ球。糖51,蛋白74,グラム染色陰性。フローサイトメトリーではモノクローナルなB細胞認めず。MRIでは新たに両側小脳皮質、脳幹に高信号出現。

鑑別診断
進行性の小脳症状
癌、感染症、免疫異常、外傷、代謝性障害、薬剤・中毒
免疫異常の6%に小脳症状→PCA-1または抗Yo抗体(女性の卵巣癌、肺癌)、男性ではホジキンリンパ腫でのPCA-Tr抗体。他にADEM
感染症:マイコプラズマ、クリプトコッカス、結核。水辺での屋外レジャーでは原発性アメーバ性髄膜脳炎(ネグレリア症)
細菌性では髄液検査では化膿性髄膜炎は否定。リステリア、ボレリア症。ライム病検査は陰性だが、免疫不全状態であり、抗体上昇不十分の可能性。ロッキー山紅斑熱。
ウイルス感染症:西ナイル熱、VZV、EBV。
本例ではダニ刺症後の症状悪化→ポワサンウイルス脳炎

治療
HSV、VZV対策;経静脈的アシクロビル継続し、PCR陰性確認後終了。リステリア症否定できないのて、CTRX,VCM継続、ライム病も否定できないのでCTRX継続。免疫抑制状態であり、節足動物関連ウイルス感染(アルボウイルス感染症)に対する適応外治療として、IVIG療法。第14日、ポワサンウイルスのPCR検査陽性判明。