2025年12月3日水曜日

腹部膨満、浮腫、胸水をきたした82歳女性

NEJM,2025,vol.393,no.16
Case Records of the MGH
Case 30-2025: A 82-Year-Old Woman with Abdominal distention, Edema, and Pleural Effusion

3週間前、特にトラブルなく南米の友人宅で過ごした。1週間前、帰国後より下肢浮腫が出現悪化し、身の回りの事ができなくなった。胸部XP、CTでは少量の胸水。心電図異常なし。既往歴、心房細動、心原性脳塞栓、DCでの除細動、カテーテルアブレーション、HFpEF。メトプロロール、アピキサバン、フロセミド内服あり。全身浮腫、聴診上、収縮期雑音あり。尿蛋白2+、尿比重1.006。血液検査:Hb:10.9、PLT:24.8、Alb:1.7、T-Chol:152。補体値正常。ANA陰性。IgA:829↑、IgG:544↓、免疫グロブリン軽鎖カッパが48.5↑、2つのIgAラムダのMコンポーネントが見られた。

鑑別診断
全身浮腫:膜透過性異常(血管浮腫、敗血症、熱傷、膵炎等)、膠質浸透圧異常(粘液水腫、リンパ浮腫等)、心不全、腎不全など
南米旅行:シャーガス病、フィラリア症、リューシュマニア、マラリア、住血吸虫症など考慮
ネフローゼ症候群:尿蛋白3.5g/日以上。本例では尿比重が低い状態(正常1.010-1.030)で、尿蛋白定性2+はかなり大量の尿蛋白が示唆される→ネフローゼ症候群の可能性。
IgAラムダのM蛋白→ALアミロイドーシス

追加検査
血清c ANCAが弱陽性→ANCA関連血管炎によるRPGNが否定できない
→腎生検実施→メサンギウムにラムダ軽鎖沈着→ALアミロイドーシス
→骨髄生検実施→形質細胞腫瘍あり、5-10%、フローサイトメトリーでCD38、CD138の表現あり。

治療
CD38抗体薬ダラツムマブ、デキサメサゾンで治療開始。症状軽快、1年後も血清フリーラムダ・カッパ軽鎖減少持続。