2023年10月11日水曜日

意識の変容および新規発症のけいれんをきたした38歳、男性

NEJM,2021,vol.385,no.20
Case Records of the MGH
Case 34-2021: A 38-Year-Old Man with Altered Mental Status and New Onset of Seizures

前夜まで健康。妻によると午前4時頃、ベッドから転落し、床で痙攣。警察が呼ばれ、救急搬送。DX:110mg/dL。ER到着時、全身性強直間代性痙攣、2分持続。ロラゼパム静注投与。彼の妻、兄、妹から病歴聴取。元来健康で、腹腔鏡下虫垂切除術の既往。20年前にグアテマラからボストンに移住。ごくたまに飲酒するが、喫煙、ドラッグはしない。体温36.4度、脈拍120、酸素飽和度95%、開眼し、不随意に眼球の上転あり。GCS:6点。
7分後、ロラゼパム追加。患者は昏迷状態で、体動著明。気管内挿管。

鑑別診断
グアテマラからの移住→風土病、寄生虫の中枢神経感染
有鉤条虫症:有鉤条虫による。遅発性石灰化による痙攣で発症。中枢神経の画像上の病変のあるものの10-50%でてんかんを発症。米国では南カリフォルニア、テキサス、NYでは条虫症は広く認められる。
トキソプラズマ症:けいれんをきたす他の寄生虫疾患。トキソプラズマ症による脳炎では発熱、頭痛、痙攣を伴い、画像ではリングエンハンスされる多発病変。しかし、正常免疫状態では稀。
脳腫瘍:成人の新規発症痙攣の別の原因。
ほかのmimic:脳血管障害、TIA、中毒、意識消失発作、片頭痛、精神症状

脳CT(単純):右前頭葉、左後頭葉、右側頭葉内側に小さな石灰化影。
ガドリニウム造影脳MRI:右前頭葉の病変はリングエンハンスあり、FLAIRではその周囲に浮腫あり。
EITB(Enzyme-linked immunoelectrotransfer blot assay)による有鉤嚢虫抗体は陰性
トキソプラズマ、糞線虫、梅毒トレポネーマ、結核IGRA等は陰性。
有鉤条虫症の病変が石灰化病変のみの場合のEITBの感度は低い。
→有鉤条虫症と診断、アルベンザゾール、プラジカンテル、ステロイド、レベチラセタムで治療。

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