2024年5月29日水曜日

気管支喘息における三剤単一吸入療法、総説、実臨床

Allergy,2022,vol.77
Single inhaler triple therapy(SITT) in asthma: Systemic review and practice implications

ICS/LABA吸入療法でもコントロール不能な気管支喘息患者において、長時間作用型抗ムスカリン作用薬(LAMA)は喘息の管理を改善する。近年、三剤単一吸入療法(SITT)がコントロール不良な喘息に用いられる様になっている。
TRIMAN研究はBDP/FF/GLYvsBDP/FF、TRIGGER研究はBPP/FF/GLYvsBPP/FF+Tiotの試験で、いずれも26週でのFEV1が高値で、12ヶ月間の急性増悪の頻度を減らした。IRIDIUM研究はMF/IND/GLY、1日1回vsMF/INDまたはFP/SLMの試験で26週のFEV1は著名に改善したが、ACQ7や急性増悪は有意差を認めず。

2024年5月22日水曜日

起立性低血圧、高血圧治療、心血管疾患との関連

JAMA,2023,vol.330,no.15
Orthostatic hypotension, Hypertension Treatment, and Cardiovascular Disease
-An Individual Participant Meta-Analysis-

成人高血圧患者の10%以上で起立性低血圧を有するとされ、降圧剤使用が関連するだけでなく、心血管疾患イベントや死亡に関連するとされる。近年、我々は9論文のメタ解析により、強化降圧治療と起立性低血圧は関連がないと報告したが、今回、起立性低血圧、立位低血圧が心血管疾患イベントや死亡と関連するかを検討した。MEDLINE、EMBASE、CENTRALのデータベースより500人以上、6ヶ月以上等で検索し9論文、29235人(69.0±10.9歳、女性48%、中央値4年観察)の個人データを用いた。起立性低血圧は座位から立位でSBP20以上、DBP10以上低下、立位低血圧は立位でSBP110以下、DBP60以下とした。ベースラインで9%に起立性低血圧、5%に立位低血圧を認めた。ベースラインで起立性低血圧のある者は有意に心血管疾患イベント・死亡リスクが高かった(HR,1.14;1.04-1.26)。立位低血圧でも同様(HR,1.39;1.24-1.57)であった。強化降圧治療群では起立性低血圧ありでHR,0.83;0.70-1.00、起立性低血圧なしでHR,0.81:0.76-0.86と心血管疾患イベント+死亡リスクを下げた。立位低血圧なしでは強化降圧治療はCVDイベント+死亡リスクをHR,0.80;0.75-0.85と有意に下げたが、立位低血圧ありではリスクを下げなかった、HR, 0.94;0.75-1.18。

2024年5月15日水曜日

意識障害(昏迷)、失語、頭部異常像を認めた58歳女性

NEJM,2024,vol.390,no.15
Case Records of the MGH
Case 12-2024: A 58-Year-Old Woman with Confusion, Aphasia, and Abnormal Head Imaging

16か月前までは健康。16ヶ月前、昏迷、失語。脳MRI、T2WI、FLAIRにて左側頭葉に異常信号。髄液検査にて蛋白上昇、細胞数正常。HSV-DNA陰性。血液、髄液の自己抗体パネルは陰性。血清免疫電気泳動検査正常。脳波は徐波化はあるが、てんかん性放電なし。自己免疫性脳炎の診断で、グルココルチコイド静注、経口PSL。昏迷、失語は改善。聴覚性の失語は残存。腹部CTにて骨盤内に5cm大の腫瘤を認め、腹腔鏡下に切除、病理は奇形腫。6か月前に昏迷が再燃し、左側頭葉の病変のサイズアップあり。ステロイド治療にてやや改善。3ヶ月前、昏迷再燃。右側頭葉、左後頭葉に新たな病変あり。
既往歴、2型糖尿病、高血圧、感音性難聴(45歳時診断)

鑑別診断
自己免疫性脳炎(不必要な免疫抑制治療を避けるためにも、他の疾患の除外は重要)
感染症:HSV、西ナイル熱、多発病変ではトキソプラズマ症
CNSリンパ腫
脱髄性疾患:PML(JCウイルス)
前医の血液検査で血清乳酸値12.4mmol/Lと著明高値
→ミトコンドリア脳筋症疑い(身長157㎝と低身長、難聴、糖尿病、繰り返す脳卒中様病変)
筋生検
最終診断:MELAS

2024年5月8日水曜日

心停止、心原性ショック、低酸素血症をきたした55歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.11
Case Records of the MGH
Case 8-2024: A 55-Year-Old Man with Cardiac Arrest, Cardiogenic Shock, and Hypoxemia

レストランで夕食を食べていた男性が意識を失い、第1発見者がAEDで除細動、CPR施行。4分後に救急隊がVF確認し除細動。アミオダロン、エピネフリン経静脈的投与。VT持続。ERに搬送され、心電図にて下壁誘導にST上昇型心筋梗塞所見。到着時、心拍数123、BP188/107。BMI:27.0。RCAに薬剤湧出性ステント導入。カングレロール、アミオダロン、バンコマイシン、セフェピム開始。経皮的LVAD(左室補助心臓)装着。ノルエピネフリン4μg/分、LVAD補助最大でもBP81/72。
SARS-CoV-2RNA陽性。侵襲的心拍出量モニタリングのデータでは、中心静脈血酸素飽和度56.6%、混合静脈血酸素飽和度76.8%、動脈血酸素飽和度93.0%。

鑑別診断
RCAにステント留置、経皮的LVADにも関わらず心原性ショック、低酸素血症増悪。
心係数(CI):1.7であれば、混合静脈血酸素飽和度は40%が予想。
肺動脈カテーテルが正しい位置にあるとして、急性心筋梗塞で予想より混合静脈血酸素飽和度が上昇するのは1)心外AVシャント、2)分布異常ショックを伴う心原性ショック、3)乳頭筋破裂・心室中隔破裂
診断
心エコー再検にて中隔下部に16mmの欠損、左右シャント。
最終診断
下壁梗塞に伴う心室中隔破裂、急性乳頭筋破裂