2024年10月30日水曜日

頭部外傷における輸血の制限なし、制限ありストラテジー

NEJM,2024,vol.391,no.8
Liberal or Restrictive Transfusion Strategy in Patients with Traumatic Brain Injury

頭部外傷(TBI)で重症例では貧血が脳組織へ影響し、転帰不良の可能性がある。重症患者でのHb値での維持の死亡へのベネフィットは証明されていない。しかし、これらの重症例で、神経学的転帰については示されておらず、PROBE研究として検討した。GCS≦12、Hb≦10の成人TBIで、Hb≦10、Hb≦7で輸血。主要評価項目は6ヶ月後のグラスゴー転帰スケール(GOS-E)、二次評価項目は6ヶ月後のFIM等。742例が登録され、制限なし群369例(48.9歳、女性24.1%、自動車事故15.7%、二輪事故20.3%、歩行中の自動車事故10.6%、暴行4.1%、頭蓋外外傷の合併64.5%)、制限あり群367例。Hb値13.3vs13.1、無作為化時のHb値9.1vs9.1。無作為化までの時間55時間。6ヶ月後のGOS-Eで転帰不良群は制限なしvsありで、68.4%vs73.5%で有意差なし。6ヶ月後の死亡で26.8%vs26.3%、FIMで119vs115で有意差を認めず。

2024年10月23日水曜日

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を識別するのに有用な指標

j of gastroenterology and hepatology,2024
Usefulness of health checkup-based indices in identifying metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease

岐阜大学の検診を受けた627例(46歳)でALT、FLI(fatty liver index)、HIS(hepatic steatosis index)等を検討した。アルコール男性30g、女性20g以上は除外。全例、超音波検査実施。MASLDと診断されたものは177例(28%)。ROC解析を行い、ALTのAUCは0.79。ALTのカットオフ値は最適、ルールアウト、ルールインで、21、13、29であった。MASLDの拾い上げに際してはALT>30が適していた。

2024年10月16日水曜日

パーキンソン病への淡蒼球への集束超音波による熱凝固治療

NEJM,2024,vol.388,no.8
Trial of Globus Pallidus Focused Ultrasound Ablation in Parkinson's Disease

PDに対する淡蒼球内節(GPi)への収束超音波治療(FUSA)では小規模のオープンラベルの試験で、ジスキネジアを含む運動障害に対して、高周波熱凝固での淡蒼球破壊術と同様の成績と報告された。PDでのGPiへのFUSAの安全性、有効性をランダム化試験にて検討した。対象はlevodopaでUPDRSⅢが30%以上改善するPDで、UPDRSⅢが20点以上で、UPDRSⅣで2点以上のジスキネジア又はUPDRSⅣで2点以上の症状動揺とし、Hoehn-Yahrスケール3以上は除外、MMSE24点以下も除外。主要評価項目は3か月後のUPDRSⅢ、UDysRS(ジスキネジアの標準スケール)のどちらかが3点以上改善した割合。二次評価項目はUPDRSのⅣ、Ⅲ、Ⅱのベースラインからの変化。166人が登録、94人が無作為化され、FUSA群69例(64.2歳、女性37%)、sham群25例(63.3歳、女性42%)でlevodopa投与量は1051㎎、1044㎎/日。3か月後の主要評価項目で改善は69%vs32%で有意差を認め、UPDRSⅣのベースラインからの改善は5.1点vs0.3点(p<0.001)、Ⅲで6.0点vs1.5点(p=0.04)、Ⅱで2.8点vs0.1点(p=0.06)であった。sham群25例中20例が3か月後、FUSAへオープンラベルで実施。FUSA群では12か月後で70%に反応を認めた。FUSA群で3か月後で反応のあった45例中9例は12か月後の時点で反応が消失していた。有害事象として、3ヶ月間に構音障害、歩行障害、味覚障害を各2例ずつ認め、構音障害1例は12か月の時点でも残存。術後1週の時点で非致死性の肺塞栓例があり、重度有害事象として登録された。

2024年10月9日水曜日

重症低酸素血症における24時間または15時間酸素療法の長期経過

NEJM,2024,vol.391,no.11
Long-Trem Oxgen Therapy for 24 or 15 Hours per Day in Severe Hypoxemia

酸素療法を24時間または15時間施行する場合の有用性をランダム化試験、REDOX研究で検討した。スウェーデンの全国患者登録Swedevoxのデータを用いて、18歳以上で、PaO2<55またはSpO2<88またはPaO2<60で心不全症状を有するかHt>54のものを登録し同意を得てランダム化した。15h群、24h群に割り付けし、酸素流量はPa2>60またはSpO2 >90で調整した。主要評価項目は生存時間解析での1年以内の入院または全死亡。2018-2022年で1693人でスクリーニングされ、241人がランダム化され、24h群117例(76.4±7.3歳、男性36.8%)、15h群124例(75.0±7.5歳、46.0%)。COPDが68.4%、74.2%、肺線維症17.1%、11.3%であった。1年以内の入院・死亡は124.7/100人・年vs124.5で差は認めなかった。ハザード比で0.99(0.72-1.36)。二次評価項目の1年以内の全死亡は31.6%vs27.4%、HR1.26(0.79-2.01)。健康指標のCATスコア、QOLの指標であるEQ-5D VASスコアでも差を認めなかった。

2024年10月2日水曜日

蕁麻疹と癌のリスク:デンマーク国民コホート研究より

Br J Delmatol,2024
Urticaria and the risk of a cancer : a Danish population-based cohort study

蕁麻疹が不顕性癌と関連しているとする報告がある。しかし、蕁麻疹と癌の疫学的な関連を調べた研究は2本のみで、スウェーデンの研究は関連がないとされ、台湾の研究では慢性蕁麻疹では癌のリスクが2倍と報告された。
人口580万人のデンマークでは税金によって運営されるヘルスケアに自由にアクセスできる。今回の研究は3つ(デンマーク市民登録システムCRS、デンマーク全国患者登録DNPR、デンマーク癌登録DCR)のデータベースを用いた。蕁麻疹についてはDNPRで1980年~2022年で、一次・二次病院ER、入院患者で蕁麻疹と診断されたもの。87507人が登録され、50歳以上22%、58.1%が女性。これらを中央値10.1年フォローした。全癌リスクは0.7%。標準化発生比SIRは1.09(1.06-1.11)。蕁麻疹後、最初の1年間で癌と診断されたものは588人で、SIRは1.49(1.38-1.62)。最初の1年間では、それぞれの癌ではホジキン病でSIR;5.35(2.56-9.85)、非ホジキン型リンパ腫で2.91、リンパ性白血病で2.46,多発骨髄腫2.53、肺癌1.95等であった。