2025年1月29日水曜日

好酸球増加型の重症喘息に対するデペモキマブ年2回投与治療

NEJM,2024,vol.391,no.24
Twice-Yearly Depemokimab in Severe Asthma with Eosinophilic Phenotype

デペモキマブはIL-5に結合する超持続作用型薬剤で、SWIFT-1、SWIFT-2研究として多施設二重盲検試験として実施。11カ国、131施設。12歳以上、2年以上の喘息罹患歴。過去に末梢好酸球数300以上、またはスクリーニング時に150以上で、吸入ステロイドを過去12ヶ月、中~高用量定期吸入中。デペモキマブ群、プラセボ群を2:1に割り付け。主要評価項目は52週間の急性増悪率。792人がランダム化され、762人が解析された。(SWIFT-1のプラセボ群で年齢53.6歳、女性60%、経口ステロイド10%、経口ステロイド8.5mg、気管支拡張症吸入前の対標準1秒量60.8)52週間の急性増悪回数はSWIFT-1で0.46vs1.11、RR:0.42(0.30-0.59,p<0.001)、SWIFT-2で0.56vs1.08でRR:0.52(0.36-0.73,p<0.001)で、急性増悪を減らしていた。二次評価項目である、質問紙法のSGRQでは有意な差を認めず。対標準1秒量も有意差認めず。

2025年1月22日水曜日

前高血圧からの高血圧進行に対して尿酸はリスクの指標である

Hypertension,2018,vol.71
Uric Acid Is a Strong Risk Marker for Developing Hypertension From Prehypertension
-A 5-Year Japanese Cohort Study-

単施設(聖路加国際病院)での後方視的研究。2004年~2009年のデータを使用。30-85歳で、高血圧で治療中の者を除外。正常血圧(BP<120/80)群、男2557人、女4330人、前高血圧(BP:120-140/80-90)群、男2081人、女1503人で検討。高尿酸血症は男>7.0㎎/dL、女>6.0とした。血圧正常群の5年後の高血圧発症は2.9%で、高尿酸血症有無では5.6%vs2.6%(p<0.001)。高血圧への移行の尿酸の閾値は男8.0、女5.0であった。前高血圧群の5年後の高血圧発症は25.3%で、高尿酸血症有無では30.7%vs24.0%(p<0.001)。リスクファクターを調整した前高血圧から高血圧発症のリスクのオッズ比は、BMI高値1.051、ベースラインのSBP高値1.072、ベースラインのDBP高値1.085に対して、高尿酸血症は1.149であった。尿酸値の4分位の最低群に対し、最高群の5年後の高血圧発症の修正オッズ比は女1.970、男1.369であった。

2025年1月15日水曜日

女性での高感度CRP、コレステロール、リポ蛋白aでの30年間の心血管イベントの転帰

NEJM,2024,vol.391,no.15
Inflammation, Cholesterol, Lipoprotein(a), and 30-Year Cardiovascular Outcomes in Women

Women's Health Study(WHS研究)は1992-1995年に登録された39876人の女性、医療従事者でのコホート研究。主要評価項目は心筋梗塞、脳卒中、冠動脈インターベンション、心血管死など。27939人(54.7歳、白人94.0%、BMI:25.9)が評価。中央値27.4年(22.6-28.5年)観察。心血管イベントは3662発生。高感度CRP、LDL-c、Lipoprotein(a)の30年の修正ハザード比は、一番低い5分位に比して一番高い5分位では、1.70(1.52-1.90)、1.36(1.23-1.52)、1.33(1.21-1.47)。スタチンの内服者は57.5%あり、スタチン内服時点以後での修正ハザード比でも1.65、1.62、1.42であった。3662件の心血管イベント例では2151例がスタチン内服していた。

2025年1月8日水曜日

呼吸困難、嚥下困難、構音障害をきたした72歳女性

NEJM,2024,vol.391,no.15
Case Records of the MGH
Case 32-2024: A 72-Year-Old Woman with Dyspnea, Dysphagia, and Dysarthria

2年前からの亜急性の労作性呼吸困難。この数ヶ月で徐々に悪化し、歩行中の酸素飽和度は91-94%に悪化。血液検査は正常、胸部XPでは軽度心拡大、両側の間質性陰影。体重はこの間、5kg減。Dダイマー:3259ng/mL、その後、中断。10ヶ月前に部屋間の移動で息切れ。一時的な顔面の左右差で、左の口唇から流涎。電話での対応時に声が不明瞭なのに親族が気づく。その2ヶ月後の心エコーでは卵円孔開存、左右シャント、中等度TR、右室圧60mmHg。その後、両下肢の筋力低下があり、歩行器を使用。既往歴は重度肥満、心房粗動、高血圧、脂質異常症、副甲状腺機能亢進症。動脈血ガスではPCO2:74,PO2:89、pH:7.32
入院時の神経学的所見では、頻呼吸、忘れっぽさ、構音障害、右の顔面筋の麻痺、右眼瞼下垂軽度、両側の近位筋の筋力低下、左上肢のバレー試験での回内。右バビンスキー反射陽性。MRIでは梗塞巣認めず。

鑑別診断
脳血管障害(脳、脳幹、本例では脳MRI異常なし)
MND(ALS)(本例では腱反射亢進なし、筋萎縮なし、fasciculationなし)
神経根
末梢神経 GBS(純粋な運動神経のみのGBSはある。眼瞼下垂はGBSにはまれ。一過性の顔面筋麻痺も説明つかない)
神経筋接合部 筋無力症(MG)の60%は顔面や眼瞼の非対称を認める。
筋 眼咽頭筋型筋ジストロフィ 

抗MuSK抗体陽性のMGでは40%の患者で嚥下困難、構音障害が初発症状で、眼瞼下垂はないかあっても軽度、筋力低下もほとんどないとされる。

診断的検査、治療
反復刺激誘発筋電図検査では検査前に比して18%電位低下あり。
抗AChR抗体12.5nmol/L(正常≦0.02)、抗MuMK抗体陰性、抗横紋筋抗体30720倍(正常120倍未満)
CTでは胸腺腫なし
5日間のIVIG療法、さらにPSL、アザチオプリン、リツキシマブでの免疫抑制治療。6週の時点で、球麻痺、眼症状、四肢筋力低下は改善。しかし、その後、重度の誤嚥を起こし、そのまま死亡。