2024年11月20日水曜日

ESBL産生性大腸菌による侵襲性尿路感染症に対するCMZvsMEPM

Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2023,vol.67,no.10
Effectiveness cefmetazole versus meropenem for invasive urinary tract infections caused by extended-spectrum β-lactamase-producing Escheihia coli

第3世代セファロスポリン耐性の大腸菌は36.6%とされる。ESBL産生はその主要なメカニズムであり、カルバペネムはその治療の第1選択ではあるが、その使用は菌の選択圧を増加させ、カルバペネムの節約が求められる。その候補としてTAZ/PIPCは最近のRCTでMEPMに対する非劣性を示せなかった。CMZはESBLによる加水分解に耐性があり、カルバペネム節約の候補の一つである。日本の10施設で前向き観察研究を行った。ESBL産生製大腸菌(ESBLEC)を尿もしくは血液から検出し、尿路感染以外に感染源のないものを対象とした。CMZ群81例、MEPM群46例で評価。CMZ群は高齢で、要介護状態、施設・長期療養病院入所者が多く、MEPM群はDMが多く、CRP、WBC高値が多かった。臨床効果、14日死亡、30日死亡、院内死亡はCMZ、MEPMで、96.1%vs90.9%、0%vs2.3%、0%vs12.5%、2.6%vs13.3%。プロペンシティスコアで調整すると、効果等は両群で差なく、30日死亡のみCMZが少なかった。薬剤動態の検討ではCCr>50でCMZ1g8時間毎、CCr30-50で1g12時間毎で、TAM>50%が維持されていた。ESBLECのCTX-MサブタイプはCTX-M27が47.6%(世界的な流行はCTX-M15)、bla OXA-1は11.3%で、日本のESBLECは独自の株となっていた。

2024年11月13日水曜日

AFを伴う急性虚血性脳卒中での抗凝固療法開始の最適な時期、多施設無作為化研究、OPTIMAS研究

Lancet,2024,vol.404
Optimal timing of anticoagulation after acute ischaemic stroke with atrial fibrillation (OPTIMAS) : a multicentre, blinded-endpoint, phase 4, randomised controlled trial

英国の100施設で実施。AFを伴う急性虚血性脳卒中に対して、4日以内にDOACを開始する早期群、7-14日に開始する遅延群に、脳卒中重症度を層別化して無作為化。主要評価項目は90日以内の脳梗塞再発+症候性頭蓋内出血+全身性塞栓症。2019年7月~2024年1月に登録し、3621例(78.5±9.9歳、男性54.7%、白人93.%、東・東南アジア人1.1%、DOAC内服32.2%、抗血小板剤11.2%、経静脈的血栓溶解療法22.0%、血管内治療7.3%、CKD15.0%)で無作為化。入院時のNIHSS中央値5、無作為化時中央値4、無作為化時NIHSS0-4:57.5%、5-10:27.9%、11-15:7.8%、16-21:4.9%、>21:1.9%。開始されたDOACはアピキサバン62.1%、エドキサバン28.9%他。主要評価項目は3.3%vs3.3%で差を認めず。脳梗塞再発:2.4%vs2.3%、症候性頭蓋内出血0.6%vs0.7%、全死亡8.8%vs8.9%で差を認めず、DOACの再開を遅延しても優越性を示せなかった。

2024年11月6日水曜日

感染性胸部大動脈瘤(MTAA)

Cureus,2022,vol.14,no.11
Mycotic Thoracic Aortic Aneurysm : Epidemiology, Pathophysiology, Diagnosis, and Management

MTAAは感染性大動脈瘤の30%でアテローム硬化性病変に起因。大動脈内膜は感染症に弱く、特にチフス菌、サルモネラ菌に弱い。免疫低下状態(糖尿病、アルコール症、ステロイド治療、化学療法、肝硬変、透析治療)ではMTAA起こしやすい。細菌が主で、まれに真菌で、ウイルス性のものの報告例はない。細菌学的にはブ菌、連鎖球菌、サルモネラが多く、サルモネラはセログループB、D、Cが多い。部位は下行Aoが75.7%、弓部23.6%、上行Ao0.7%。症状は発熱75%、背部痛60%、腹痛20%、悪寒16%。血培陽性24%。治療が外科的治療が主。院内死亡は高く、75-100%とされる。術前の抗菌薬治療は死亡のオッズ比を0.2に低下させ、術後の抗菌薬治療は死亡のハザード比を0.36にしていた。2007年以降は胸部大動脈ステントグラフト内挿術TEVARが施行されるようになり、30-90日の死亡率がTEVAR15%、開胸術7-20%と報告された。TEVAR後の感染再燃は2年後で81.2%が認めなかったと報告され、TEVAR後エンドリークは18.5%と報告された。

2024年10月30日水曜日

頭部外傷における輸血の制限なし、制限ありストラテジー

NEJM,2024,vol.391,no.8
Liberal or Restrictive Transfusion Strategy in Patients with Traumatic Brain Injury

頭部外傷(TBI)で重症例では貧血が脳組織へ影響し、転帰不良の可能性がある。重症患者でのHb値での維持の死亡へのベネフィットは証明されていない。しかし、これらの重症例で、神経学的転帰については示されておらず、PROBE研究として検討した。GCS≦12、Hb≦10の成人TBIで、Hb≦10、Hb≦7で輸血。主要評価項目は6ヶ月後のグラスゴー転帰スケール(GOS-E)、二次評価項目は6ヶ月後のFIM等。742例が登録され、制限なし群369例(48.9歳、女性24.1%、自動車事故15.7%、二輪事故20.3%、歩行中の自動車事故10.6%、暴行4.1%、頭蓋外外傷の合併64.5%)、制限あり群367例。Hb値13.3vs13.1、無作為化時のHb値9.1vs9.1。無作為化までの時間55時間。6ヶ月後のGOS-Eで転帰不良群は制限なしvsありで、68.4%vs73.5%で有意差なし。6ヶ月後の死亡で26.8%vs26.3%、FIMで119vs115で有意差を認めず。

2024年10月23日水曜日

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を識別するのに有用な指標

j of gastroenterology and hepatology,2024
Usefulness of health checkup-based indices in identifying metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease

岐阜大学の検診を受けた627例(46歳)でALT、FLI(fatty liver index)、HIS(hepatic steatosis index)等を検討した。アルコール男性30g、女性20g以上は除外。全例、超音波検査実施。MASLDと診断されたものは177例(28%)。ROC解析を行い、ALTのAUCは0.79。ALTのカットオフ値は最適、ルールアウト、ルールインで、21、13、29であった。MASLDの拾い上げに際してはALT>30が適していた。

2024年10月16日水曜日

パーキンソン病への淡蒼球への集束超音波による熱凝固治療

NEJM,2024,vol.388,no.8
Trial of Globus Pallidus Focused Ultrasound Ablation in Parkinson's Disease

PDに対する淡蒼球内節(GPi)への収束超音波治療(FUSA)では小規模のオープンラベルの試験で、ジスキネジアを含む運動障害に対して、高周波熱凝固での淡蒼球破壊術と同様の成績と報告された。PDでのGPiへのFUSAの安全性、有効性をランダム化試験にて検討した。対象はlevodopaでUPDRSⅢが30%以上改善するPDで、UPDRSⅢが20点以上で、UPDRSⅣで2点以上のジスキネジア又はUPDRSⅣで2点以上の症状動揺とし、Hoehn-Yahrスケール3以上は除外、MMSE24点以下も除外。主要評価項目は3か月後のUPDRSⅢ、UDysRS(ジスキネジアの標準スケール)のどちらかが3点以上改善した割合。二次評価項目はUPDRSのⅣ、Ⅲ、Ⅱのベースラインからの変化。166人が登録、94人が無作為化され、FUSA群69例(64.2歳、女性37%)、sham群25例(63.3歳、女性42%)でlevodopa投与量は1051㎎、1044㎎/日。3か月後の主要評価項目で改善は69%vs32%で有意差を認め、UPDRSⅣのベースラインからの改善は5.1点vs0.3点(p<0.001)、Ⅲで6.0点vs1.5点(p=0.04)、Ⅱで2.8点vs0.1点(p=0.06)であった。sham群25例中20例が3か月後、FUSAへオープンラベルで実施。FUSA群では12か月後で70%に反応を認めた。FUSA群で3か月後で反応のあった45例中9例は12か月後の時点で反応が消失していた。有害事象として、3ヶ月間に構音障害、歩行障害、味覚障害を各2例ずつ認め、構音障害1例は12か月の時点でも残存。術後1週の時点で非致死性の肺塞栓例があり、重度有害事象として登録された。

2024年10月9日水曜日

重症低酸素血症における24時間または15時間酸素療法の長期経過

NEJM,2024,vol.391,no.11
Long-Trem Oxgen Therapy for 24 or 15 Hours per Day in Severe Hypoxemia

酸素療法を24時間または15時間施行する場合の有用性をランダム化試験、REDOX研究で検討した。スウェーデンの全国患者登録Swedevoxのデータを用いて、18歳以上で、PaO2<55またはSpO2<88またはPaO2<60で心不全症状を有するかHt>54のものを登録し同意を得てランダム化した。15h群、24h群に割り付けし、酸素流量はPa2>60またはSpO2 >90で調整した。主要評価項目は生存時間解析での1年以内の入院または全死亡。2018-2022年で1693人でスクリーニングされ、241人がランダム化され、24h群117例(76.4±7.3歳、男性36.8%)、15h群124例(75.0±7.5歳、46.0%)。COPDが68.4%、74.2%、肺線維症17.1%、11.3%であった。1年以内の入院・死亡は124.7/100人・年vs124.5で差は認めなかった。ハザード比で0.99(0.72-1.36)。二次評価項目の1年以内の全死亡は31.6%vs27.4%、HR1.26(0.79-2.01)。健康指標のCATスコア、QOLの指標であるEQ-5D VASスコアでも差を認めなかった。