2026年1月7日水曜日

経口抗凝固薬内服中の慢性冠症候群でのアスピリン投与

NEJM,2025,vol.393,no.16
Aspirin in Patients with Chronic Coronary Syndrome Receiving Oral Anticoagulation

フランスの51施設での抗凝固療法単独vs抗凝固療法+アスピリンの前向き二重盲検ランダム化試験。対象は6ヶ月以上経過した冠動脈ステントの患者で、抗凝固療法中の者。主要評価項目は心血管死+MI、脳卒中、塞栓症、冠動脈PCI、四肢虚血の複合。二次評価項目はネット臨床イベント(全死亡+心血管イベント+大出血)等。
2020-2024年にかけて872人がランダム化され、433人が併用群、439人が単独群に割付。71.7歳、男性85.3%、全例PCI歴あり、PCI後平均3年、72.7%がMI既往。89%がAFあり。抗凝固薬はアピキサバン62.2%、リバロキサバン24.7%、ダビガトラン2.9%。試験中に全死亡が併用群で過剰に発生したため、試験は早期終了。観察期間2.2年。
主要評価項目の心血管死+心血管イベントはアスピリン併用群16.9%vs単独群12.1%、修正ハザード比1.53(1.07-2.18)、全死亡+心血管イベント+大出血で28.6%vs17.3%、ハザード比1.85(1.39-2.46)全死亡13.4%vs8.4%、ハザード比1.72、心血管死7.6%vs4.3%、ハザード比1.90でいずれも有意にアスピリン併用群でリスクが高かった。大出血は10.2%vs3.4%、ハザード比3.35。本研究では先行研究に比して、ハイリスク群が中心で、心血管イベントが先行研究では1-2%に比して、約7-8倍であった。

2025年12月24日水曜日

市中肺炎に対するステロイド投与に対する実際的な臨床試験

NEJM,2025,vol.393,no.22
A Pragmatic Trial of Glucocorticoids for Community-Acquired Pneumonia

十分な医療資源の環境下において、補助的なグルココルチコイドの使用は、重症市中肺炎(CAP)患者の死亡率を低下させる可能性がある。これらの薬剤が、診断および治療施設が限られている環境において有益であるか検討した。ケニアの18病院で実施。実践的、非盲検、無作為化、対照試験として実施。CAPと診断(胸部XPは必須ではない)された成人患者を、CAP標準治療群、標準治療+10日間の経口低用量グルココルチコイド投与群に割付。主要評価項目は30日後の全死亡。合計2180人の患者が無作為化され、(G群1089人、標準群1091人)。患者の年齢53歳(四分位範囲38~72歳)で、46%が女性、胸部XP実施39%、HIV陽性15.2%、DM:6.4%。30日目の全死亡530人(24.3%)で、G群22.6%vs標準群26.0%でハザード比0.84(0.73-0.97、P=0.02)で有意に死亡リスクを減らした。有害事象および重篤な有害事象の頻度は両群で同程度。グルココルチコイド投与に関連すると考えられる重篤な有害事象は、5例(0.5%)に発生した。

2025年12月10日水曜日

低ナトリウム血症の診断と治療 総説

JAMA,2022,vol.328,no.3
Diagnosis and Management of Hyponatremia

低Na血症は成人の約5%、入院患者の35%に発生。軽度低Na血症であっても、入院期間の延長や死亡率の上昇と関連。前向き研究では、低Na血症ではNa値正常者と比較して転倒頻度が高く( 23.8%vs16.4%)、平均7.4年間での新規骨折率も有意に高率(23.3%vs17.3%)。低Na血症は骨粗鬆症の二次的な原因でもある。
尿素とバプタンは、心不全患者の不適切抗利尿症候群および低ナトリウム血症に対する効果的な治療薬となりうるが、副作用として尿素の味、胃不耐症、バプタンの低Na血症の過剰補正、口渇増加がある。重篤な症状を伴う場合(傾眠、意識障害、昏睡、発作、心肺機能低下の徴候)は緊急事態であり、米国・欧州のガイドラインでは、高張食塩水のボーラス投与により、血清ナトリウム濃度を1~2時間以内に4~6mEq/L上昇させ、24時間以内に10mEq/L(補正限界)を超えないように治療する事が推奨。

2025年12月3日水曜日

腹部膨満、浮腫、胸水をきたした82歳女性

NEJM,2025,vol.393,no.16
Case Records of the MGH
Case 30-2025: A 82-Year-Old Woman with Abdominal distention, Edema, and Pleural Effusion

3週間前、特にトラブルなく南米の友人宅で過ごした。1週間前、帰国後より下肢浮腫が出現悪化し、身の回りの事ができなくなった。胸部XP、CTでは少量の胸水。心電図異常なし。既往歴、心房細動、心原性脳塞栓、DCでの除細動、カテーテルアブレーション、HFpEF。メトプロロール、アピキサバン、フロセミド内服あり。全身浮腫、聴診上、収縮期雑音あり。尿蛋白2+、尿比重1.006。血液検査:Hb:10.9、PLT:24.8、Alb:1.7、T-Chol:152。補体値正常。ANA陰性。IgA:829↑、IgG:544↓、免疫グロブリン軽鎖カッパが48.5↑、2つのIgAラムダのMコンポーネントが見られた。

鑑別診断
全身浮腫:膜透過性異常(血管浮腫、敗血症、熱傷、膵炎等)、膠質浸透圧異常(粘液水腫、リンパ浮腫等)、心不全、腎不全など
南米旅行:シャーガス病、フィラリア症、リューシュマニア、マラリア、住血吸虫症など考慮
ネフローゼ症候群:尿蛋白3.5g/日以上。本例では尿比重が低い状態(正常1.010-1.030)で、尿蛋白定性2+はかなり大量の尿蛋白が示唆される→ネフローゼ症候群の可能性。
IgAラムダのM蛋白→ALアミロイドーシス

追加検査
血清c ANCAが弱陽性→ANCA関連血管炎によるRPGNが否定できない
→腎生検実施→メサンギウムにラムダ軽鎖沈着→ALアミロイドーシス
→骨髄生検実施→形質細胞腫瘍あり、5-10%、フローサイトメトリーでCD38、CD138の表現あり。

治療
CD38抗体薬ダラツムマブ、デキサメサゾンで治療開始。症状軽快、1年後も血清フリーラムダ・カッパ軽鎖減少持続。


2025年11月26日水曜日

呼吸苦、浮腫、ペースメーカのリード位置異常をきたした79歳男性

NEJM,2025,vol.393,no.19
Case Records of the MGH
Case 32-2025: A 79-Year-Old Man with Dyspnea, Edema, and Pacemaker-Lead Displacement

2ヵ月前に労作時呼吸困難をきたし、心電図にて徐脈性の接合部リズムで洞停止を認め、永久心臓ペースメーカ留置。dual-chamber pacemakerの植込み予定であったが、右房のセンシング閾値が低く、ペーシング閾値が高く、技術的に困難で、最終、右房開口部にリードが留置された。ペースメーカ留置後、調子が良かったが、その1ヶ月後、再び両上下肢浮腫、呼吸苦が悪化。心エコーにて、1か月前には認めなかった右房内に5×4㎝大の不規則な低エコー腫瘤が見られた。造影CTでは、不規則な腫瘤で、縦隔に多発性のリンパ節腫大を認め、PET-CTでも縦隔に異常集積は認めたが、他には明らかな異常は認めず。

鑑別診断
右房内腫瘤:感染性心内膜炎、転移性心臓腫瘍(乳癌、腎癌、メラノーマ、リンパ腫)、良性原発性心臓腫瘍(粘液腫(左房に多い)、脂肪腫、乳頭状弾性線維腫など)、悪性原発性心臓腫瘍(血管肉腫、横紋筋肉腫、悪性リンパ腫)
悪性リンパ腫はHIV、EBV、臓器移植をリスク因子とし、最近、増加傾向。その中で、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫DLBCLが最も多い。
診断的検査:右心房腫瘤への経静脈的生検は塞栓症や血管・心房損傷のリスク大。経気管支的に針生検を実施し、病理にDLBCL確定。
最初にリツキシマブ、ビンクリスチン、PSLで治療を行い、2期目はR-CHOPレジメで治療。当初、経過良好であったが、その後、腫瘍サイズ大きくなり、診断から10か月後、死亡。

2025年11月19日水曜日

AF合併のアテローム性動脈硬化性疾患を合併した虚血性脳卒中予防の最適な抗血栓療法 —ランダム化臨床試験—

JAMA,2025
Optimal Antithrombotics for Ischemic Stroke and Concurrent Atrial Fibrillation and Atherosclerosis
A Randomized Clinical Trial

ATIS-NVAF試験。オープンラベルの多施設前向きランダム化臨床試験。日本の41施設で実施。対象:20歳以上の脳梗塞、TIA発症から8-360日で、発作性または持続性AFで、経口抗凝固薬OACを内服中または開始する患者で、次の状態を1つ以上有する者、50%以上のICA狭窄、50%以上の頭蓋内主幹動脈狭窄、CAS・CEA後、脳梗塞・虚血性心疾患・PADの既往。除外は12か月以内のACS、PCI等。OAC単独治療群、OAC+抗血小板剤の併用療法群の1対1にランダム化。薬剤の種類、量は主治医の裁量。主要評価項目は2年間の虚血性心血管イベント(心血管死、脳梗塞、MI、全身性塞栓症等)+国際血栓止血学会ISTHの重大出血。2017年~2022年に321人が登録され、316人(女性28.5%、77.2±7.4歳)がランダム化。発症21日でランダム化され、707日観察。中間解析で終了。主要評価項目は併用群vsOAC単独群で17.8%vs19.6%、HR,0.91(0.53-1.55)で有意差なし。ITT解析でもper-protocol解析でも同様。二次評価では虚血性心血管イベントで11.1%vs14.2%(HR, 0.76(0.39-1.48)、脳梗塞で9.2%vs13.0%(HR,0.67(0.32-1.39)でいずれも併用群の方がリスクを減らす傾向はあったが有意差はなし。ISTHの重大出血では9.4%vs5.6%で有意差はなかったが、ISTH重大出血+臨床上著明な出血では19.5%vs8.6%、HR,2.42(1.23-4.76)で出血イベントが有意に多かった。今回のランダム化臨床試験ではAF合併患者の脳梗塞再発予防ではOAC単独治療でも再発に有意差はなく、併用療法では出血イベントが多かった。

2025年11月12日水曜日

前立腺癌スクリーニング欧州研究、23年のフォローアップ

NEJM,2025,vol.393,no.17
European Study of Prostate Cancer Screening-23-Year Follow-up

前立腺癌のランダム化されたスクリーニング研究(ERSPC)は1993年から実施され、16年のフォローアップでは前立腺癌死亡を相対的に20%有意に減らしたが、ベネフィットは過剰診断、過剰治療により相殺された。今回、中央値23年間のフォローアップを検討した。ERSPCは1993年、オランダ、ベルギーで開始され、スウェーデン、フィンランド、イタリア、スペイン、スイスなどに拡充して実施。55-69歳の166236人をPSAによるスクリーニング群72888人、対照群89348人に割り付け。スクリーニング群ではPSAを最低2回、多くの施設では4年毎に測定。23年間のフォローアップではスクリーニング群で12%、対照群では14%に前立腺癌が発生。リスク比1.30(1.26-1.33)で、1000人あたり前立腺癌の絶対数増加は27であった。23年間の前立腺癌の累積死亡は1.4%vs1.6%でリスク比0.87(0.80-0.95)で、前立腺癌の絶対リスク減少は0.22%であった。23年では456人のスクリーニングで1人の前立腺癌死亡を減らし、前立腺癌と診断された12人で1人の前立腺癌死亡を減らした。これはフォローアップ期間が長くなると小さくなっていた。