2026年6月24日水曜日

心不全における血清カリウム値の至適濃度:メタ解析から

 Eur Heart J,2026
Optimal serum potassium consentration in heart failure : an individual patient data meta-analysis

心不全12論文(HFrEF7論文、HFpEF5論文)から血清K値と臨床転帰の関連を検討した。個別データで、K値で6群に層別化(K<3.5、3.5≦K<4.0、4.0≦K<4.5、4.5≦K<5.0、5.0≦K<5.5、5.5≦K)。主要評価項目は全死亡。HFrEFで24.2ヶ月、HFpEFで36.8ヶ月観察。HFrEFではJカーブを呈し、K値4.0-4.5に対してK値3.5未満群は全死亡リスクが修正HR:1.49(1.27-1.76)で有意に高かった。K値は高い場合も修正HRでは有意差なし。二字評価項目のCV死、心不全入院もK値3.5未満では有意に高リスク。HFpEFではK値による差は認めず。突然死ではK値4.0-4.5に対してK値5.5以上でHR:1.87(1.07-3.28)であった。
HFrEFでは低K血症が強く予後不良と関連した。HFrEFとHFpEFの双方に共通する血清K値の安全域は、4.2-5.0 mmol/Lであった。

2026年6月17日水曜日

胸痛、呼吸困難、失神をきたした57歳女性

 NEJM,2026,vol.394,no.11
Case Records of the MGH
Case 8-2026: An 57-Year-Old Woman with Chest Pain, Dyspnea, and Syncope

6週間前に41度の高熱、呼吸困難、低酸素、頻脈、意識障害、麻薬注射で入院歴あり。経胸壁心エコー検査にて、M弁、A弁の肥厚を認め、心嚢液なし。呼吸器管理、抗菌薬投与にて10日後に退院。
2日前までは普通に過ごす。2日前、就眠中に胸部中央、非労作性の胸部圧迫感。胸痛は経験のない強さとなり、呼吸困難をきたし、ER要請。心拍数38-68,血圧70以下、呼吸数43。室内気酸素飽和度93。
既往歴:重度のアルコール依存→15年以上断酒。アルコール関連肝炎、膵炎。麻薬中毒。30年来、ヘロインの静注(針使い回し)。この3年は静脈穿刺困難でフェンタニル吸入。
ERでは35.7度、BP:79/61。心エコー検査では大量の心嚢液貯留。心嚢穿刺、初圧35mmHg、410mL、血性。RBC:233万、WBC2.1万、好中球76%、グラム染色で好中球、赤血球のみ。
急速大量輸液、CTRX、エピネフリン等で血圧上昇。

鑑別診断:
血性心嚢液:直近の心臓手技、胸部外傷、AMI、全身性炎症性疾患等。静脈針の迷入。
心タンポナーデ
心膜炎:結核、化膿性細菌(ブ菌、連鎖球菌)、真菌
急性大動脈症候群:解離、大動脈壁内血腫、潰瘍穿孔、大動脈断裂、動脈瘤破裂拡大

診断、治療
CTアンギオにて大動脈基部に仮性動脈瘤。
手術室に移動し、大動脈基部置換術。生体弁使用。術後、ECMO併用。
A弁の病理診断では真菌を認め、最終、アスペルギルス・フラバス。
術後、全身性塞栓症併発、ショック状態持続。右心不全持続。その後、塞栓症、出血持続。肝不全、腎不全、乳酸アシドーシス増悪。最終、維持療法に切り替わり、8病日に死亡
最終診断
M弁、A弁を含む真菌性心内膜炎による大動脈基部の膿瘍の破裂

2026年6月10日水曜日

食思不振、体重減少、肝病変を認めた86歳女性

 NEJM,2026,vol.394,no.16
Case Records of the MGH
Case 12-2026: An 86-Year-Old Woman with Anorexia, Weight Loss, and Liver Lesions

3週間前までは問題なし。食思不振、摂食量減少、全身衰弱、身の回りの事が困難になる。友人に連れられER受診。35.9度、軽度黄疸あり。右上腹部に圧痛。造影CTにて、総胆管結石、総胆管壁肥厚、肝内・肝外胆管拡張を認め、肝第4区域に45mmの病変あり。
WBC:12260、Eo:10%、総bil:2.2、直bil:1.5、尿ケトン3+
既往歴:乳癌(エストロゲン受容体陽性)

鑑別診断
多発肝のう胞
癌(乳癌肝転移、肝細胞癌、胆管癌、ほかの癌転移)
感染症(膿瘍、非化膿性膿瘍、エキノコッカスのう包)
肝膿瘍の4つの機序①胆道感染からの上行性、②腹腔内感染からの経静脈流入、③血流感染かの血行性波及、④近傍組織からの直接的な波及

診断
バルン補助内視鏡検査にて、生検実施。ERCP実施し、胆管ステント留置。
肝組織の生検からは、肝実質の壊死組織、白血球、リンパ球、マクロファージの急性炎症。チール・ニールセン染色陰性。マッコンキー培地等で大腸菌確定。
治療
PIPI/TAZ→CTRX+メトロニダゾール→AMPC/CVA内服

2026年6月4日木曜日

慢性腎臓病

 Lancet,2026,vol.407
Chronic kidney disease : Seminar

世界でCKDは8億5千万人、腎代替療法400万人。
2017年の段階でCKDの有病率9.1%。1990年から比較してCKDは29%増加。
年齢別のCKDの増加率は男性に比して女性は1.3倍になっている。しかし、いったんCKDが増悪すると、女性より男性の方がeGFRの低下率が大きく、透析または腎移植の割合は1.5倍多くなる。
5年以内の腎不全リスクが3-5%に達したら、腎専門医の受診をすすめるべき。
KDIGOガイドラインではタンパク質摂取量は0.8g/kg。
RAS阻害薬、SGLT2阻害薬くわえて、nsMRA(フィネレノン)、GLP-1作動薬