2023年6月28日水曜日

院内心停止でのアミオダロンとリドカインの効果の比較

CHEST,2023,vol.163,no.5
Comparative Effectiveness of Amiodarone and Lidocaine for the Treatment of In-Hospital Cardiac Arrest

2000年のAHAのACLSガイドラインで、VT/VFの抗不整脈薬の第1選択はアミオダロンとの推奨になった。2018年のガイドライン変更で、アミオダロン、リドカインどちらも使用可との変更になったが、2000-2014年の心停止ではアミオダロン使用69%、リドカイン使用31%と報告された。今回はAHAの院内心肺蘇生登録(GWTG-R)のデータを用いて、院内発症VT/VFでのリドカインとアミオダロンの効果を検討した。主要評価項目は自己心拍再開。二次評価項目は24時間後生存、生存退院、良好な神経学的転帰。2000-2014年で39089人の18歳以上の院内発症VT/VF患者が登録され、通常の胸骨圧迫、除細動に加えて、リドカインのみ、アミオダロンのみの薬物治療追加があったものが、4572人、10058人あった。年齢65.7vs65.2歳、男性62.7vs64.4%。自己心拍再開で77.3vs76.6%、24時間生存63.4vs59.1%、生存退院47.5vs42.0%、良好な神経学的転帰39.6vs33.3%で自己心拍再開以外が有意にリドカイン群が良好であった。人種、心筋梗塞での入院、心疾患、心電図モニタリングで調整したオッズ比ではそれぞれ1.15、1.16、1.19、1.18でいずれもリドカイン群で良好であった。

2023年6月21日水曜日

成人糖尿病での糖尿病罹病期間、血糖コントロールと心不全リスク

J Clinical Endocrinology & Metabolism,2022
Duration of Diabetes, Glycemic Control, and Risk of Heart Failure Among Adults With Diabetes: A Cohort Study

40‐69歳のUKバイオバンクの50万人のデータを用いて検討した。23754人のDM患者があり、11.7年フォローし、2081例の心不全が見られた。DM罹病歴5年未満に比して、心不全発症リスクは5-10年でハザード比1.09(0.97-1.23)、10-15年で1.13(0.97-1.30)、15年以上で1.32(1.15-1.53)で15年以上で有意に高リスクであった。HbA1c<7.0に比して、7.0-7.5でハザード比1.15(1.02-1.31)、7.5-8.0%で1.07(0.91-1.26)、8.0以上で1.46(1.30-1.65)で8.0以上で有意に高リスクであった。

2023年6月14日水曜日

僧帽弁閉鎖不全に対する経カテーテル的僧帽弁形成術での5年フォローアップ

NEJM,2023,vol.388,no.22
Five-Year Follow-up after Transvatheter Repair Mitral Regugitation

虚血性or非虚血性での僧帽弁閉鎖不全に対して経カテーテル的にedge to edgeに修復する治療法、MitraClipでの治療介入COAPT研究の5年フォローアップ。対象はLVEF20-50%で、心エコーでMRが中等症以上、NYHA2-4、除外基準はLVDd>7cm、重度PH、中等度以上の右心不全。経カテーテル的僧帽弁形成術+薬物治療群vs標準的薬物治療群に1:1に割付。主要評価項目は心不全入院。2012-2017年、米国・カナダの78施設で、614例を無作為化。302例がデバイス群、312例が対照群に割付。デバイス群は97%で形成術が実施。5年フォローはデバイス群89.4%、対照群84.6%で完遂。1回以上の心不全入院は50%vs66.7%で、1年当たりの心不全入院は33.1%vs57.2%で、ハザード比0.53(0.41-0.68)でリスクを減らした。全死亡のハザード比0.72(0.58-0.89)、死亡+心不全入院でハザード比0.53(0.44-0.64)であった。デバイス関連のイベントは5年で1.4%に発生し、全イベントは30日以内に発生していた。

2023年6月7日水曜日

皮膚エリテマトーデスに対する抗BDCA2抗体リティフィリマブへの臨床試験

NEJM,2022,vol.387,no.4
Trial of Anti-BDCA2 Antibody Litifilimab for Cutaneous Lups Erythematosus

皮膚エリテマトーデスに対する治療第1選択はステロイド外用およびヒドロキシクロロキンであるが、ステロイド外用のベネフィットは限定的であり、ヒドロキシクロロキンのメタ解析でも効果はさまざまである。リティフィリマブは血液樹状細胞抗原2に対するヒトIgG1モノクローナル抗体で、それは形質細胞様樹状細胞の表面にのみ発現し、形質細胞様樹状細胞はSLEの発症に関与するとされる。SLEに対するフェーズ1の治療では活動性のある皮膚病変の改善が見られた。LILAC研究のBパート、中等症~重症の皮膚エリテマトーデスのリティフィリマブの効果を検討した。リティフィリマブ皮下注治療を50mg、150、450、プラセボ群の4群に無作為に割付。皮膚エリテマトーデスの疾患活動性スコアであるCLASI-A(0-70)にて評価。132例でそれぞれ、26例、25例、48例、33例に割付。経口PSL15mg以下、ヒドロキシクロロキンの併用は許可。16週後のCLASI-Aのプラセボに対する変化率は50mg群-24.3、150mg群-33.4、450mg群-28.0であった。有害事象では過敏症3例、口唇ヘルペス3例、帯状疱疹髄膜炎1例があり、帯状疱疹髄膜炎例は4ヶ月後死亡した。
皮膚エリテマトーデスにおいてリティフィリマブは16週後の疾患活動性を低下させた。

2023年5月31日水曜日

包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対する深部静脈の経カテーテル的動脈化治療

NEJM,2023,vol.388,no.13
Transcatheter Arterialization of Deep Veins in Chronic Limb-Threatening Ischemia

米国での40歳以上ではCLTIの有病率1.33%、新規発症0.35%で100万人がメディケアの対象となっており、20%が血管再開通治療の適応外となっており、また65歳以上ではCLTIで下肢切断で1年後の関連死亡率は50%とされる。CLTIで治療選択肢がない場合、深部静脈の経カテーテル的動脈化は血管内治療の手段である。先行研究としてPROMISE1が実施、され、今回、対象を拡大してPROMISE2として実施。対象はRutherford分類5・6の皮膚病変があり、独立した臨床医により血管撮影等で、通常の治療選択肢のない事が確認されたCLTIで、透析患者は除外せず、全身性感染症、皮膚病変の急速な増悪例、重度心不全は除外。手技は足底の静脈からエコーガイド下にセルジンガー法でカテを後脛骨静脈まで進める。また同側の大腿動脈から順行性にカテを進め、交差する部位で後脛骨静脈側にスネアを広げ、そこへ後脛骨動脈側から穿刺して瘻孔を作成。静脈弁切開をアブレーションで行い、最終的にカバーステントグラフトで、後脛骨静脈から末梢を拡張、動脈化。主要評価は6か月時点での切断回避+生存。105例で実施、104例で成功。102例で6ヶ月後評価。23例が切断、12例が死亡し、切断回避は0.66。サブ解析では透析患者19例では切断回避36.8%(透析外72.7%)、死亡36.2%(透析外8.6%)。皮膚病変完治25.4%、皮膚病変部分改善50.8%であった。

2023年5月24日水曜日

前立腺癌に対する、観察、手術、放射線治療後の15年での転帰

NEJM,2023,vol.388,no.17
Fifteen-Year Outocomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Prostate Cancer

限局性の前立腺癌の管理は議論の余地がある。ProtecT研究は1999年~2009年に英国で、50-69歳でPSA検査を契機に限局性前立腺癌と診断された1643人を無作為に積極的観察群、手術群、放射線治療群に割付し10年間フォローアップしたが、今回、さらに中央値15年フォローアップした。ベースラインのPSA:4.6(3.0-18.9)。最初の1年はPSAを3ヶ月毎、それ以降は6ヶ月毎測定。積極的観察群ではPSAが50%以上増加した時点で、改めて観察継続、精査、根治的治療、緩和ケアの選択する。手術群では断端陽性や術後PSA:0.2以上増加で、補助放射線治療を検討。放射線治療群では3D原体照射法74Gy、37区域後、抗アンドロゲン治療。全て群でPSA:10以上で骨シンチが推奨され、20以上で抗アンドロゲン治療を検討した。1643人中1610人(98.0%)がフォローアップを完遂。ベースラインではグリーソンスコア6のグリーソングレード1が76.0%であったが、現在のリスク層別化ツールでは24.1%が中等度リスク、9.6%が高リスクに相当した。15年の時点で主要評価項目の前立腺癌死は45例2.7%で、積極的観察群3.1%、手術群2.2%、放射線治療群2.9%で差を認めず。全死亡は356例21.7%で、3群に差を認めず。104例6.3%に転移を認め、積極的観察群9.4%、手術群4.7%、放射線治療群5.0%で、後2群は積極的観察群より少なかった。臨床的増悪はそれぞれ25.9%、10.5%、11.0%で認められた。積極的観察群は10年の時点で54.8%が根治的治療(手術or放射線)を受けていたが、15年の時点では61.6%であった。積極的観察群の24.4%が根治的治療および抗アンドロゲン治療を受けずに生存していた。サブ解析では65歳未満では放射線治療群より積極的観察群、手術群が前立腺癌死亡のリスクが低く、65歳以上では積極的観察軍より、手術群、放射線治療群が前立腺癌死亡が少なかった。
15年間のフォローアップでは前立腺癌死亡は治療の割付にかかわらず低く、限局性前立腺癌治療の選択に際しては利益と害を検討する必要がある。

2023年5月17日水曜日

HFpEF患者で、閉塞型睡眠無呼吸症候群合併での入院転帰、不整脈

J Innov Cardiac Rhythm Management,2022,vol.13,no.16
In-hospital Outcomes and Arrhythmia Burden in Patients with Obstructve Sleep Sleep Apnea and Heart Failure with Preserved Ejection Fraction

全米入院サンプル(NIS)の2016-2018年のデータを用いて後方視的に検討した。127773人のHFpEF患者の入院があり、OSA合併例20%、CPAP実施9%、HFpEF、OSA(+)は平均70歳、HFpEF、OSA(-)は76歳。プロペンシティスコアをマッチされたコホートでは、死亡リスクはOSA+でオッズ比1.33(1.27-1.37)で有意に高く、入院期間、入院コストも高かった。不整脈の合併の検討ではAFのオッズ比1.29(1.27-1.31)、AFL:1.13(1.09-1.17)、SSS:1.2(1.12-1.29)、VT:1.19(1.13-1.24)、3度AVb:1.16(1.01-1.33)と有意に増加。CPAPの実施で、これらの不整脈の夜間の減少は認めなかったが、心停止は有意ではないが、減少を認めた。