2026年6月17日水曜日

胸痛、呼吸困難、失神をきたした57歳女性

 NEJM,2026,vol.394,no.11
Case Records of the MGH
Case 8-2026: An 57-Year-Old Woman with Chest Pain, Dyspnea, and Syncope

6週間前に41度の高熱、呼吸困難、低酸素、頻脈、意識障害、麻薬注射で入院歴あり。経胸壁心エコー検査にて、M弁、A弁の肥厚を認め、心嚢液なし。呼吸器管理、抗菌薬投与にて10日後に退院。
2日前までは普通に過ごす。2日前、就眠中に胸部中央、非労作性の胸部圧迫感。胸痛は経験のない強さとなり、呼吸困難をきたし、ER要請。心拍数38-68,血圧70以下、呼吸数43。室内気酸素飽和度93。
既往歴:重度のアルコール依存→15年以上断酒。アルコール関連肝炎、膵炎。麻薬中毒。30年来、ヘロインの静注(針使い回し)。この3年は静脈穿刺困難でフェンタニル吸入。
ERでは35.7度、BP:79/61。心エコー検査では大量の心嚢液貯留。心嚢穿刺、初圧35mmHg、410mL、血性。RBC:233万、WBC2.1万、好中球76%、グラム染色で好中球、赤血球のみ。
急速大量輸液、CTRX、エピネフリン等で血圧上昇。

鑑別診断:
血性心嚢液:直近の心臓手技、胸部外傷、AMI、全身性炎症性疾患等。静脈針の迷入。
心タンポナーデ
心膜炎:結核、化膿性細菌(ブ菌、連鎖球菌)、真菌
急性大動脈症候群:解離、大動脈壁内血腫、潰瘍穿孔、大動脈断裂、動脈瘤破裂拡大

診断、治療
CTアンギオにて大動脈基部に仮性動脈瘤。
手術室に移動し、大動脈基部置換術。生体弁使用。術後、ECMO併用。
A弁の病理診断では真菌を認め、最終、アスペルギルス・フラバス。
術後、全身性塞栓症併発、ショック状態持続。右心不全持続。その後、塞栓症、出血持続。肝不全、腎不全、乳酸アシドーシス増悪。最終、維持療法に切り替わり、8病日に死亡
最終診断
M弁、A弁を含む真菌性心内膜炎による大動脈基部の膿瘍の破裂

2026年6月10日水曜日

食思不振、体重減少、肝病変を認めた86歳女性

 NEJM,2026,vol.394,no.16
Case Records of the MGH
Case 12-2026: An 86-Year-Old Woman with Anorexia, Weight Loss, and Liver Lesions

3週間前までは問題なし。食思不振、摂食量減少、全身衰弱、身の回りの事が困難になる。友人に連れられER受診。35.9度、軽度黄疸あり。右上腹部に圧痛。造影CTにて、総胆管結石、総胆管壁肥厚、肝内・肝外胆管拡張を認め、肝第4区域に45mmの病変あり。
WBC:12260、Eo:10%、総bil:2.2、直bil:1.5、尿ケトン3+
既往歴:乳癌(エストロゲン受容体陽性)

鑑別診断
多発肝のう胞
癌(乳癌肝転移、肝細胞癌、胆管癌、ほかの癌転移)
感染症(膿瘍、非化膿性膿瘍、エキノコッカスのう包)
肝膿瘍の4つの機序①胆道感染からの上行性、②腹腔内感染からの経静脈流入、③血流感染かの血行性波及、④近傍組織からの直接的な波及

診断
バルン補助内視鏡検査にて、生検実施。ERCP実施し、胆管ステント留置。
肝組織の生検からは、肝実質の壊死組織、白血球、リンパ球、マクロファージの急性炎症。チール・ニールセン染色陰性。マッコンキー培地等で大腸菌確定。
治療
PIPI/TAZ→CTRX+メトロニダゾール→AMPC/CVA内服

2026年6月4日木曜日

慢性腎臓病

 Lancet,2026,vol.407
Chronic kidney disease : Seminar

世界でCKDは8億5千万人、腎代替療法400万人。
2017年の段階でCKDの有病率9.1%。1990年から比較してCKDは29%増加。
年齢別のCKDの増加率は男性に比して女性は1.3倍になっている。しかし、いったんCKDが増悪すると、女性より男性の方がeGFRの低下率が大きく、透析または腎移植の割合は1.5倍多くなる。
5年以内の腎不全リスクが3-5%に達したら、腎専門医の受診をすすめるべき。
KDIGOガイドラインではタンパク質摂取量は0.8g/kg。
RAS阻害薬、SGLT2阻害薬くわえて、nsMRA(フィネレノン)、GLP-1作動薬

2026年5月28日木曜日

場所別の院内心停止:疫学、緊急治療への反応、転帰に関する最新の分析

 Criti. Care Med,2026,vol.54
Location on In-Hospital Cardiac Arrest: An Updated Analysis of Epidemiology, Emergency Response, and Outcomes

米国では年間29万人が院内心停止で影響を受け、GWTG-R登録では9.7件/1000入院で発生している。GWTG-R登録での2010年-2021年の院内心停止について前向きに調査した。235560件の院内心停止を解析し、発生場所がICU53.4%、ER14.0%、モニタあり病棟16.0%、モニタなし病棟16.6%。除細動可能な心拍リズムの心停止は15.9%であった。自己心拍再開率は全体で70.8%、それぞれ71.5%、70.9%、73.0%、66.2%。自己心拍再開までの時間は全体7.0分、それぞれ6.0分、7.0分、8.0分、10.0分。生存率はICU19%、ER26%、モニタあり病棟28%、モニタなし病棟22%で、年齢、性、人種、入院原因、併存疾患数、除細動可能リズム、施設のサイズ、教育病院、昇圧剤、呼吸器等で調整した調整生存率はそれぞれ21%、22%、23%、19%で、モニタなし病棟を基準にすると、修正オッズ比はICU1.15、ER1.23、モニタあり病棟1.29であった。

2026年5月20日水曜日

心房細動患者の脳梗塞2次予防でのカテーテルアブレーションと経口抗凝固療法

 JAMA Neurology,2026
Catheter Ablation and Oral Anticoagulation for Secondary Stroke Prevention in Atrial Fibrillation
 -The STABLED Randomized Clinical Trial-

脳梗塞発症後1-6ヶ月後に実施されたカテーテルアブレーション(CA)の効果と安全性を検討した。
対象:20-85歳で、6か月以内に発症した心房細動を有する脳梗塞患者で、mRS3以下のもの。
方法:日本の45施設で、多施設、前向き、オープンラベルでのRCTで、標準治療群は抗凝固療法のみで、CA群は抗凝固療法+CAで、1:1でCHADS2スコアで層別化した上で、無作為に割付。標準群はエドキサバンで治療。CA群は割付後、最低4週間のエドキサバンで治療後、1-6か月以内にCAを実施。抗不整脈薬の使用は熟練の循環器内科医が裁量で実施許可。
主要評価項目:虚血性脳卒中+全身性塞栓症+全死亡+心不全入院の複合。ネット臨床転帰は主要評価項目+CAによる重症有害事象。
結果:251人が登録され、249人がITT解析。年齢71.7±7.5歳、女性24.9%。DWI-ASPECTSは8.4±2.1、NIHSSは1.7±2.6であった。標準群3.7年、CA群3.5年観察。CAはランダム化後、平均65日で実施。17%がCAを複数回実施。ITT解析では主要評価項目の複合イベントは標準群4.9/100人・年、CA群5.6/100人・年で発生し、HR:1.11(0.62-2.01)で有意差なし。CA群の22例の内、3例はCAを非実施、2例はCA実施前に発生。パープロトコル解析も同様の結果であった。CA群に割り付けられたもののうち、15.2%は抗凝固療法のみで、標準群のうち、12.9%でCAが実施され、CA実施されたものは65.0歳vs73.0歳であった。追加検討でのCA実施者と抗凝固療法のみの者では、複合イベントはHR:0.84(0.46-1.56)であった。

2026年5月13日水曜日

PPI長期使用による閉塞性肺疾患の増悪リスク

 Chest,2026
Exacerbation Risk by Chronic Proton Pump Inhibitor Use in Obstructive Lung Disease

対象:ベルギーの健康保険の利用者でベルギーの外来患者のPPI使用者。PPIの禁忌であるMTX使用者、肝硬変は除く。
方法:PPI使用とCOPD、BA、ACO等(COAD、慢性気道閉塞性疾患)の増悪との関連を検討。
主要評価項目:入院を要する重症の増悪および中等症の増悪。
結果:93万人のCOADのうち、PPI使用者44.6%で、28日未満13.8%、29-180日使用30.8%、181-365日使用30.8%、365日以上使用24.6%。PPI非使用に対するPPI使用での増悪の修正ハザード比:1.18(1.17-1.19)。365日以上使用でHR,1.25(1.23-1.26)。PPIの累積使用はCOADの増悪と関連していた。

2026年4月22日水曜日

HFpEFに対するフィネレノンの効果と安全性、FINE-HEART解析

JACC HF,2025,vol.13,no.8
Efficacy and Safety of Finerenone in Heart Failure With Preserved Ejection Fraction : A FINE-HEART Analysis

HFmrEF、HFpEFに対するフィネレノンの効果を3つの国際RCT(FINEARTS-HF、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD)の統合解析でメタ解析した。FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDはT2DM、CKDで尿中アルブミン/クレアチニン比:30-300、eGFR:25-60で、K<4.8で、HFrEFは除外。FINEARTS-HFではEF>40、eGFR≧25、K≦5.0のものが登録。フィネレノンは10mgから開始、20mg、最大40mgまで増量。主要評価項目はCV死orHF入院。3研究で18991例が登録され、うちHFmrEF/HFpEFは7008例(年齢71±10歳、女性44%、白人80%、AF合併34.2%、FINEARTS-HF研究が85.6%)(フィネレノン群3448例、プラセボ3520例)。2.5年観察。主要評価項目では19.4%vs22.0%で、ハザード比0.87(0.78-0.96)であった。CV死はHR:0.92(0.78-1.08)、HF入院:0.84(0.74-0.94)、新規AF:0.75(0.58-0.97)。eGFRの50%以上低下の腎転帰:1.09(0.84-1.43)、全死亡+全入院:0.93(0.88-1.00)であった。
有害事象であるK>5は15.0%vs7.6%、高K血症関連入院0.6%vs0.2%、急性腎障害4.0%vs2.7%。