2024年1月10日水曜日

ペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)と腎細胞癌のリスク

JNCI,2021,vol.113,no.5
Serum Concentrations of Per-and Polyfluoroalkyl Substances and Risk of Renal Cell Carcinoma

米国住民の98%にPFASの4化合物が検出されるとの報告がある。国際ガン研究センターではPFOAは腎癌に関連し発癌物質group2Bとしている。住民ベースの前向き研究、nested case-control研究としてPFOAおよび他7種のPFASと腎癌の関連について検討した。ランダム化された住民ベースのPLCO研究(前立腺、肺、大腸、卵巣癌スクリーニング研究)のデータを用いた。PLCO研究は全米10ヶ所の55-74歳の15万人が1993-2001年に募集された。同研究で腎癌と診断されたものは326例、年齢、性、人種を一致させた対照326例を抽出し、PLCO研究登録時の血液データを用いて検討した。PFAS濃度は固相抽出液体クロマトグラフィ・タンデム質量法で計測。対照群に比して腎癌群では高血圧、肥満が有位に多かった。PFAS濃度は非ヒスパニック白人の比してアフリカ系で多かった。PFAS濃度の第1四分位に対して第4四分位ではPFOA(ペルフルオロオクタン酸)でオッズ比2.63(1.33-5.20)、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)でOR2.51(1.28-4.92)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)OR2.07(1.06-4.04)で有位に高かった。他のPFASでは傾向を認めなかった。この研究でのPFAS濃度は全米健康栄養調査(NHANES)でのPFAS濃度と同様の結果であった。

2023年12月27日水曜日

糖尿病のない肥満患者でのセマグルチドによる心血管イベント予防

NEJM,2023,vol.389,no.24
Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes

多施設二重盲検試験、41か国、804施設で実施。ノボ・ノルディスク社の資金提供あり。45歳以上で、BMI≧27、糖尿病なしで心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患)の既往のあるもの。HbA1c≧6.5、90日以内のGLP-1作動薬使用歴のあるもの、NYHAⅣの心不全、末期腎不全は除外。1:1に割付し、セマグルチド群は4週ごとに0.5→1.0→1.7→2.4㎎/週まで増量。妊娠、膵炎発症、カルシトニン濃度≧100ng/Lになれば、中止。主要評価項目は心血管死+心筋梗塞+脳卒中の複合。2018年10月~2021年3月まで実施、17604例がランダム化され、セマグルチド群8803例(61.6歳、男性72.2%、白人83.9%、BMI:33.3)対照群8801例。観察期間39.8ヶ月。心血管死+心筋梗塞+脳卒中は6.5%vs8.0%でハザード比0.80(0.72-0.90、p<0.001)であった。体重減少は-9.39%vs-0.88%。有害事象は16.6%vs8.2%で、胃腸障害が10.0%vs2.0%であった。

2023年12月20日水曜日

英国での心不全で鉄欠乏性貧血の患者での鉄デリイソマルトースの静脈投与(IRONMAN研究)

Lancet,2022,vol.400
Intravenous ferric derisomaltose in patients with heart failure and iron deficiency in the UK(IRONMAN): an investigator-initiated, prospective, randomised, open-label,blinded-endopoint trial

英国で70施設でPROBE法で実施。18歳以上、フェリチン<100μg/Lまたはトランスフェリン飽和度<20%で、LVEF<45%で、6か月以内に心不全入院歴があり、NT-proBNPが洞調律で250以上、AFで1000以上を対象とした。フェリチン≧400、Hb<9は除外。Hb≧14(男)、Hb≧13(女)も除外。デルイソマルトース第二鉄群(以下、鉄静注群)は同剤を20mg/㎏投与。主要評価項目は心不全入院+心血管死。2016年8月~2021年10月まで実施され、鉄静注群569例(73.2歳、女性25%、NYHA Ⅱ58%、Ⅲ40%、AF50%、LVEF32%)、通常治療群568例(73.5歳、女性28%)。中央値2.7年(IQR:1.8-3.6)観察され、心不全入院+心血管死は22.4%vs27.5%で、推計治療効果0.82(0.66-1.02,p=0.070)であった。二次評価では心血管死+心不全・脳卒中・心筋梗塞の入院で37%vs43%、推計治療効果0.83(0.69-1.00,p=0.045)であった。
デルイソマルトース第二鉄の静脈内投与は、心不全や心血管死による入院リスクの低下と一定関連していた。

2023年12月13日水曜日

高次医療機関での成人重症患者でのズボレキサント、レンボレキサントによるせん妄予防

J Clin Psychiatry,2023,vol.84,no.1
Evaliation pf Suvorexant and Lemborexant for the Prevention of Delirium in Adult Critically Ill Patients at an Advanced Critical Care Center : A Single-Center, Retrospective, Observational Study

デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)の重症疾患でのせん妄予防効果を観察的研究として検討した。佐賀医大付属病院ERに2018-2021年に入院した重症患者。DORAを内服していないもの、およびせん妄出現後にDOPAが開始されたものを対照群とし、DORA(ズボレキサント、レンボレキサント)内服群と比較検討した。3346例が登録され、入院期間が72時間以内のもの、18歳未満、頭蓋内占拠病変のあるもの、退院まで昏睡状態のもの、アルコール離脱症状の高リスク群などを除外した633例で、DORA群123例(71歳、男性57.7%)、対照群510例(69歳、男性63.5%)で検討した。
Cox回帰分析では、せん妄増悪のハザード比は、ズボレキサントで0.56(0.36-0.86)、レンボレキサントで0.26(0.11-0.62)と低くなっていた。せん妄リスク因子で調整すると、ズボレキサント0.34(0.20-0.58)、レンボレキサント0.21(0.08-0.52)であった。ラメルテオンの併用率はDORA群48.8%、対照群15.5%であった。

2023年12月6日水曜日

右股関節痛をきたした鎌状赤血球症の29歳男性

NEJM,2023,vol.389,no.22
Case Records of the MGH
Case 37-2023:A 29-Year-Old Man with Sickle Cell Disease and Right Hip Pain

年に3-4回、鎌状赤血球症(SCD)による血管閉塞痛の入院歴あり。SCDによる阻血性骨壊死により、両股のTHAの既往あり。胸椎の圧迫骨折もあり。2日前より、いつもと異なる右股関節痛。37.8度発熱。白血球15680、CRP:100.6mg/L、赤沈113mm。

鑑別診断
下肢静脈血栓症、骨壊死、骨髄炎
好気性ボトルの血培2セットにて、グラム陰性桿菌。MALDI‒TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)によりキャンピロバクター・フェトゥスと判明。
診断
キャンピロバクター・フェトゥスによる菌血症、骨髄炎

2023年11月29日水曜日

抑うつ状態と低血圧をきたした13歳少年

NEJM,2023,vol.388,no.21
Case Records of the MGH
Case 16-2023:A 13-Year-Old Boy with Depression and Hypotension

ADHD、境界型パーソナリティ障害、大うつ病の既往のある少年。抑うつ状態の悪化、自傷行為でERへ搬送。グアンファシン、ルラシドンを含む薬物治療中。自傷行為と精神不安定が続いていた。ER入院翌日朝はBP146/87、HR52であったが、その12時間後、BP69/39、HR88で立ち眩みの訴え。顔面蒼白あり。血液・尿のスクリーニング異常なし。腹部造影CT異常なし。輸液治療、VCM点滴開始。

ショックの鑑別診断:distributive shock, hypovolemic shock, cardiogenic shock, obstructive shock
低血圧だが、頻脈、発熱、他の検査異常を伴っておらず、低血圧の前に一過性の血圧上昇、徐脈を伴っていた。以上から、グアンファシン、クロニジンによる交感神経系の抑制による低血圧を疑う。
→グアンファシンのボトルが患者のベッドサイドに放置された時間帯があり、本人が過剰に内服した事と証言された。

2023年11月22日水曜日

好酸球数で定義された2型炎症のCOPDでのデュプリマブの効果

NEJM,2023,vol.389,no.3
Dupilumab for COPD with Type 2 Inflammation Indicated by Eosinophil Counts

好酸球増多を伴うCOPDでのデュプリマブ(IL-4、IL-13を阻害)の効果をBOREAS研究として実施。Phase3、多施設、二重盲検試験として実施。24か国、275施設で実施。対象は1秒率70%以下、気管支拡張剤吸入後の対標準1秒量30~70%、MRCスケール2以上で、好酸球数≧300、少なくとも2回以上の中等度急性増悪or1回以上の重度急性増悪歴があり、吸入ステロイド+LAMA-LABA治療中。1対1でデュプリマブ300mg、プラセボに割付。サノフィ社の資金提供あり。主要評価項目はCOPDの中等度、重度急性増悪。デュプリマブ群468例、対照群471例、年齢65.1歳、男性66.0%、白人84.1%、喫煙既往者70%、現喫煙者30%、好酸球数平均401、FENO24.33ppb。52週間観察され、COPD急性増悪は0.78vs1.10、レート比0.70(0.58-0.86)で有意に急性増悪を減らした。12週、52週でのベースラインからの1秒量の改善も有意に良好。ベースラインからのSGRQスコアも有意に改善。