2025年4月16日水曜日

背部痛、呼吸困難をきたした24歳男性

NEJM,2024,vol.391,no.9
Case Records of the MGH
Case 27-2024: A 24-Year-Old Man with Pain and Dyspnea

1923年3月の症例。3日前までは元気だったが、全身倦怠感、頭痛、背部痛が出現。入院前日より発熱、乾性咳嗽、悪寒出現し、身体がカチカチになり体動困難。呼吸困難、前胸部痛で来院。高熱、頻脈(92-145)、頻呼吸(28-58)。膿性痰。胸部XPにて右上肺、左下肺にコンソリデーション、左肺門リンパ節腫脹。心尖部bruitあり。左手掌、右示指に小充血性斑あり。入院3日目、膿性痰増加、4日目にはさらに全身状態悪化し死亡。

鑑別診断
1918年からインフルエンザのパンデミックあり。

診断
インフルエンザによる気管支肺炎

2025年4月9日水曜日

意識の変容とアシデミアをきたした72歳女性

NEJM,2025,vol.392,no.11
Case Records of the MGH
Case 8-2025: A 72-Year-Old Woman with Altered Mental Status and Acidemia

5年前に膀胱癌の既往があり、フルオロウラシル、マイトマイシンCの化学療法の既往あり。2週間前に血尿、排尿困難があり、シプロフロキサシンの投与を受ける。4日前、膀胱鏡検査にて、放射線膀胱炎、尿管癌の診断を受け、膀胱全摘術が予定された。膀胱鏡検査の2日後、2.5kgの体重増加があり、トルセミド、スピロノラクトンスの投与を受けた。その夜、興奮状態となり、翌朝、娘が救急要請。
7ヶ月前から傾眠傾向があり、高CO2血症のため、BiPAP、利尿剤投与あり。2型DMのため、ダパグリフロジン、メトホルミンの投与、他の投薬あり。
胸部XPでは肺うっ血、両側胸水、無気肺を認めた。
ICU入室時、ABGでpH:7.19、PaCO2:87、PaO2:81、AG:16→23→32、アセトアミノフェン、エタノール、サリチル酸は検出せず。

鑑別診断
ショック状態:敗血症性ショック、心不全、血管内脱水。
代謝性アシドーシス:高AG、呼吸性アシドーシスの代償。しかし、ICU入室後、さらにAG高値。
高AG代謝性アシドーシスの原因:GOLDMARK
G:エチレングリコール、O:オキシプロリン、L:乳酸、D:D-乳酸(まれ)、M:メタノール、A:アスピリン、R:腎不全、K:ケトアシドーシス

血中βヒドロキシ酪酸:9.1(<0.4)高値

診断;血糖正常性糖尿病性ケトアシドーシス
血糖正常性ケトアシドーシスは診断が遅れがちで、診断基準は、アニオンギャップ高値の代謝性アシドーシス、血中ケトン体高値、重炭酸イオンの低値。
糖尿病性ケトアシドーシスの原因:感染症、インスリン治療の中断、心筋梗塞、脳血管障害、膵炎、1型糖尿病の新規発症。本例ではSGLT2阻害薬の使用が考えられた。

2025年3月19日水曜日

アテローム中のマイクロプラスティック、ナノプラスティックと心血管イベント

NEJM,2024,vol.390,no.10
Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events

NASCET70%以上の無症候性内頸動脈狭窄でCEAを実施した連続447例(イタリア、サレルノ大学病院)のうち同意を得た312例。術後、退院までに8例が脳卒中または死亡し、47例が中断し、257例を33.7±6.9ヶ月フォローアップした。
150例(58.4%)で頸動脈アテローマ中にポリエチレンが見つかった。31例(12.1%)にポリビニル塩化物が見つかった。これらプラスティック(MNP)が見つかった群はより若年で、高血圧は少ない傾向を認めた。居住地域に差を認めず。頸動脈にMNPを認めた群では、そうでない群に比して、頸動脈プラーク中のIL-18、IL-1β、TNF-α、IL-6が多くみられ、コラーゲンは少なく、CD3、CD68は多く発現していた。心血管イベントは、20.0%vs7.5%で、年齢・性・BMI・コレステロール値、HDL-c、LDL-c、クレアチニン、高血圧、過去の心血管イベント等で調整したハザード比4.53(2.00-10.27)で、頸動脈プラーク中のMNPの存在は心血管イベントのリスクとなっていた。

2025年3月12日水曜日

慢性腎臓病におけるエンパグリフロジンの長期効果

NEJM,2025,vol.392,no.8
Long-Term Effects of Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease

EMPA-KIDNEY試験(eGFR:20-45、またはeGFR:45-90かつ200㎎/crea・g以上、RAS阻害薬を認容量内服)のフォローアップ研究。SGLT2阻害薬はオープンラベルでの投与。主要評価項目はCKD増悪(eGFRが40%以上悪化、透析、腎移植、eGFR<10)+心血管死。
本試験6609例中、ポスト試験に参加した者4891例。オープンラベルでのSGLT2阻害薬投与はエンパグリフロジン群43%、プラセボ群40%で、中央値2年フォローされ、主要評価項目イベントは26.2%vs30.3%で、ハザード比0.87(0.76-0.99)であった。エンパグリフロジンによる心血管腎へのベネフィットは投与終了後も12ヶ月以上にわたって持続していた。

2025年3月5日水曜日

頭痛をきたした末期肝疾患の56歳女性

NEJM,2024,vol.391,no.24
Case Records of the MGH
Case 40-2024:56-Year-Old Woman with End-Stage Liver Disease and Headache

MASH、肝硬変の女性。股関節の手術後から、全身倦怠感、腹痛で受診。昏迷をきたす。定期的に腹水穿刺。昏迷のため、単語で返答するのみ。肺CTでは、右肺門石灰化、左下肺に線状影。脳CTでは脳小血管病を示唆する白質に軽度低吸収域病変を認めた。特発性細菌性腹膜炎の所見は認めず。腎機能は低下し、利尿剤中止。
転院時、意識清明。転院2日、以前からの頭痛悪化。ずきずき、ガンガン、以前の片頭痛の様に痛いという。転院4日、嘔気あり、脳CT変化なし。転院5日、羞明、右目の視野のぼやけが出現。

鑑別
頭痛で羞明、視野のぼやけがある場合、二次性頭痛などの原因を考慮。
亜急性に増悪:血管原性:脳出血、動脈解離など。髄膜炎、頭蓋内占拠病変。
片側性の視野のぼやけ:頭蓋内圧亢進、眼動脈(脳静脈血栓症、巨細胞性動脈炎)髄膜脳炎(ウイルス性、細菌性、真菌性、寄生虫性)

診断的検査
髄液検査が必要と判断されたが、PT-INR:1.8のため、FFP、ビタミンKが投与。その間、血清クリプトコッカス抗原検査、脳画像検査実施。脳MRIでは基底核に新たにDWI、FLAIRで散在性の小高信号域を認めた。血性クリプトコッカス抗原は64倍。髄液検査では初圧31㎝H2O、糖80、蛋白114、細胞数41、髄液クリプトコッカス抗原2048倍

本例ではPT-INRが1.8のため髄液検査がためらわれたが、PT-INR<2ではFFP投与は意味がなく、4以上で考慮すべき。363例の肝硬変患者に852回の侵襲的手技を行った報告では10回の出血イベントを認めたが、血小板数、PT-INR、Child-Pughグレード、FFPの投与の有無などに関連を認めず。この報告ではPT-INR≧1.3を含む血小板数<5万でも出血イベントを認めず。

2025年2月26日水曜日

高血圧患者における降圧剤治療前後の自宅心拍数と死亡リスク:HOMED-BP研究の事後解析から

J Am Heart Assoc,2024,vol.13
Home Pulse Rate Before and During Antihypertensive Treatment and Mortality Risk in Hypertensive Patients : A Post Hoc Analysis of the HOMED-BP Study

HOMED-BP研究は日本で実施された多施設前向きRCTで高血圧の厳格治療群、通常治療群の比較試験で、その事後解析。40‐79歳、中等度高血圧、457クリニックで最終3022人(59.4±9.9歳、女性50.2%、BMI≧25,38.6%、自宅心拍数69.0、自宅SBP151.8、自宅DBP90.1)のデータを解析した。心拍数で5分割して解析。心拍数の低い第1五分位(心拍数41-61)に対して、心拍数の早い第5五分位(心拍数76-108)は有意に、若年、飲酒率、喫煙率、糖尿病、自宅DBPが高値であったが、自宅SBPや貧血は差がなかった。7.3年(4.8-9.1年)のフォローアップで72例が死亡し、50例で主要心血管イベントが発生。心血管イベントは心拍数での差は認めなかったが、全死亡は第3五分位以上で有意に死亡が多く、1SDの心拍数(安静時で9.4/分、フォローアップ期間中で9.9/分)増加で、ハザード比1.54(1.24-1.92)、1.70(1.39-2.08)であった。ROC解析では、ベースラインの心拍数67.8/分がカットオフポイントで、AUC0.578、感度0.71、特異度0.48であった。

2025年2月19日水曜日

インスリン治療なしの2型糖尿病でのインスリン・エフシトラ(週1回)vsデルグデク(1日1回)

NEJM,2024,vol.391,no.23
Insulin Efsitora versus Degludec in Type 2 Diabetes without Previous Insulin Treatment 

週1回のエフシトラのフェーズ3試験。オープンラベルのRCT、10ヵ国121施設。18歳以上、BMI45以下、HbA1C7.0-10.5で、最低3か月以上非インスリンでの薬物療法歴あるものを対象。主要評価項目は52週後のHbA1Cでのデルグデクに対する非劣性。2022年6月~2024年4月に1267人がスクリーニングされ、928人がランダム化され、エフシトラ群466人(57.6±10.6歳、男性60.3%、アジア人35.0%、HbA1C:8.21±0.96、BMI:30.4、GLP-1併用49.8%、SGLT2I併用38.4%)、デルグデク群462人。52週後のHbA1CはE群8.21→6.97、D群8.24→7.05で、優位性は示せなかったが、非劣性は示された。GLP-1併用の有無でも同様の結果。52週の時点の使用量はE群314.7U/週、D群334.4U/週で、有意にE群で少なかった。有症状の低血糖はE群130例、253件、D群97人、190件でレート比1.34(0.97-1.85)で有意差を認めず。