2025年8月27日水曜日

純粋自律神経不全での表現型変化の予測

Neurology,2020,vol.95
Predicting phenoconversion in pure autonomic failure

2001年~2011年にメイヨークリニックの自律神経の専門外来で純粋自律神経不全とされた275例(平均65歳、男性62%)を長期観察した。チルト5分でsBPが61mmHg低下。275例中、67例(24%)が表現型変化し、34例がMSA、33例がPDまたはDLBのレビー小体病に変化した。PAF診断時に、重度の膀胱症状(尿閉等)、臥位のノルエピネフリン値の高い(>100pg/mL)もの、発汗障害が節前性のものはMSAに移行。微細な運動障害、睡眠時異常行動のあるものは、MSAやPD/DLBに移行する傾向を認めた。多変量解析の結果では、PAF診断時に、微細な運動障害、臥位ノルエピネフリン値>100、膀胱障害のあるものは98%がMSAに移行、微細な運動障害、夢に関連した睡眠時異常行動、65歳以上であるものは87%がPD/DLBに移行すると予測された。

2025年8月20日水曜日

好酸球性の成人発症重症喘息での気道のリモデリングに対するメポリズマブの効果

J Allergy Clin Immunol,2025,vol.155
Effect of mepolizumab in airway remodeling in patients with late-onset severe asthma with an eosinophic phenotaype


ギリシャの呼吸器8施設で実施。20歳以降で発症し、FEV1.0/FVC<0.7、スクリーニング時に末梢血好酸球>150または12ヶ月間に300以上となったものを対象とし、48例が登録され、41例が気管支鏡検査に参加。1年間、メポリズマブを投与し、38例で気管支鏡検査を再検、34例で良好な検体を採取。組織学的に基底膜下結合組織sub-basement membraneの肥厚、気道平滑筋層の肥厚、肺胞内皮細胞のダメージ、組織の好酸球数で有意に減少していた。

2025年8月13日水曜日

腸骨大腿動脈狭窄での血管内治療は大動脈負荷を減らす事によりHFpEFの左室拡張能を改善する

Circulation:Heart Failure,2024,vol.17
Endovascular Treatment of Flow-Limiting Iliofemoral Stenosis Improves Left Ventricular Diastolic Function in Patients With HFpEF by Reducing Aortic Pulsatile Load

腸骨大腿動脈狭窄に対するEVTがLV拡張能を改善し、NYHAなどの予後を改善するか検討した。対象はPADでラザフォード分類Ⅱ~Ⅲ(安静時痛~限局性皮膚病変あり)で、LVEF≧50%、ESCのHFA-PEFFスコア≧5のHFpEFを併存するもの。AF、弁膜症は除外。
デュッセルドルフ大学単施設で計30例で解析。EVT群25例(65.5歳、男性64%、BMI:25.9)非実施群5例(背景に有意差なし)。EVT群ではABI:0.67→0.88、PWV:11.7→9.6、Augmentaion Index(AIx):32.5→28.0と有意に改善。LV拡張能の指標であるE/e':16.0→13.9、LAVI:36.4→34.1、LVMI:154→154→147とEVT後、およびフォローアップ中に改善した。NYHAはⅡ56%、Ⅲ40%→Ⅰ12%Ⅱ80%、Ⅲ4%と有意に改善した。

2025年8月6日水曜日

頭痛、運動失調をきたした69歳男性

NEJM,2025,vol.393,no.2
Case Records of the MGH
Case 19-2025: A 69-Year-Old Man with Headache and Ataxia

3年前にびまん性大細胞型びまん性リンパ腫DLBCLと診断、ベンダムスチン、リツキシマブで治療。1年後、右手脱力増悪し、造影MRIにて左半卵円中心に造影される病変を認め、脳生検にてEBV陽性のCNS病変再燃と診断され、CAR-T細胞療法、イブルチニブで治療。その後、クリプトコッカス肺炎にてイブルチニブ休止。
2週間前、転倒、背部打撲。その後、歩行障害、上肢機能悪化し、ER受診。患者は以前より、アシクロビル、アピキサバン、フルコナゾール、AT合剤、タムスロシン等を内服し、周期的に感染予防にIVIG療法実施。ニューイングランドの郊外に居住し、屋外での水泳、ボート漕ぎ、庭仕事をし、最近、数回、ダニに刺された。
構音障害+、視方向性眼振+、両上肢失調+、右上肢脱力、反射亢進+、感覚障害なし。梅毒、ライム病検査陰性。髄液検査はアピキサバン内服中で中止。MRIでの左前頭葉病変変化なし。
入院4日目に、意識障害、運動失調増悪し、両側の外転神経麻痺出現。経静脈的アシクロビルに変更。髄液検査では細胞数21、77%リンパ球。糖51,蛋白74,グラム染色陰性。フローサイトメトリーではモノクローナルなB細胞認めず。MRIでは新たに両側小脳皮質、脳幹に高信号出現。

鑑別診断
進行性の小脳症状
癌、感染症、免疫異常、外傷、代謝性障害、薬剤・中毒
免疫異常の6%に小脳症状→PCA-1または抗Yo抗体(女性の卵巣癌、肺癌)、男性ではホジキンリンパ腫でのPCA-Tr抗体。他にADEM
感染症:マイコプラズマ、クリプトコッカス、結核。水辺での屋外レジャーでは原発性アメーバ性髄膜脳炎(ネグレリア症)
細菌性では髄液検査では化膿性髄膜炎は否定。リステリア、ボレリア症。ライム病検査は陰性だが、免疫不全状態であり、抗体上昇不十分の可能性。ロッキー山紅斑熱。
ウイルス感染症:西ナイル熱、VZV、EBV。
本例ではダニ刺症後の症状悪化→ポワサンウイルス脳炎

治療
HSV、VZV対策;経静脈的アシクロビル継続し、PCR陰性確認後終了。リステリア症否定できないのて、CTRX,VCM継続、ライム病も否定できないのでCTRX継続。免疫抑制状態であり、節足動物関連ウイルス感染(アルボウイルス感染症)に対する適応外治療として、IVIG療法。第14日、ポワサンウイルスのPCR検査陽性判明。

2025年7月30日水曜日

咳、呼吸困難、低酸素血症をきたした75歳男性

NEJM,2025,vol.393,no.4
Case Records of the MGH
Case 21-2025: A 75 Year-Old Man with Cough, Dyspnea, and Hypoxemia

7ヶ月前にACO(オーバーラップ症候群)と診断され、ステロイドの点滴投与、経口PSL漸減中。その3週後、呼吸器症状持続で、経口PSL開始、末梢血Eo:910、IgE:4440IU/mL、ABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)と診断され、デュピルマブが開始。その6週後、発熱、肺うっ血増悪。市中肺炎と診断、アジスロマイシン、セフェム系抗菌薬開始。喀痰から肺炎桿菌。その3ヶ月前、喘鳴持続するため受診。Eo:100、IgE:516、アスペルギルス特異的IgE:27.5IU。経口PSL再開。

6週前に中米を訪問、そこで呼吸器症状増悪し、現地医療機関受診。状態改善せず、そのままボストンのホテル到着し、ER受診。

4L経鼻酸素で、酸素飽和度91%、呼吸回数32、喀痰塗抹でグラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌。アデノウイルス、クラミジア、コロナ、メタニューモ、マイコプラズマ等のPCR陰性。肺CTで膨隆した浸潤影が左下肺にあり。ネイサルハイフロー60Lでも酸素飽和度92%、レジオネラ、ヒストプラズマ抗原陰性。IGRA陰性。


鑑別診断;

血管炎、癌、感染症

感染症では真菌、寄生虫、抗酸菌、グラム陽性菌

免疫抑制状態で、空洞形成する肺炎のグラム陽性菌として、ロドコッカス属、アクチノミセス、ノカルジア。

診断:

グラム染色でフォラメント状、分枝し、玉状の形成が確認され、アクチノミセスまたはノカルジアが疑われ、抗酸菌塗抹検査で陽性。培養にて最終的にノカルジア、マイコバクテリウム・アブセスサス。

治療:

経静脈的ST剤、イミペネムで39日間治療

2025年7月23日水曜日

腎移植後、呼吸不全、ショックをきたした61歳男性

NEJM,2025,vol.392,no.23
Case Records of the MGH
Case 17-2025: A 61-Year-Old Man with Respiratory Failure and Shock after Kidney Transplantation

10週前に高血圧性の腎硬化症の末期腎障害に対して腎移植。術後4日で退院。退院後、経口PSL、タクロリムス、ミコフェノール、ST合剤、バルガンシクロビルが投与。その後、HbA1c:7.7%でセマグルチドの週1投与開始。飼い猫に左足部を引っかかれ、発赤腫脹、アモキシシリンクラブラン酸にて軽快。10日前、血糖519にて、前医入院。5日前、酸素飽和度93%に低下。BP84/48、HR120、胸部XP、肺水腫。PIPC/TAZ開始。その後ネイサル・ハイフロで40L投与、気管内挿管、BP81/53。VCM、MEPM投与。MGH転院。腹部に紫斑。胸部XP、肺水腫。小腸、大腸のガス像著明。血液検査、WBC:20420、好酸球980、Metamyelo980、Myelo490、Promyelo740、PLT:40.9万、βDグルカン:87

鑑別診断:免疫抑制状態の呼吸不全、ショック
市中肺炎、院内発症肺炎、日和見感染症、ニューモシスチス肺炎
猫に引っかかれた、犬猫保護団体のボランティア歴→パスツレラ、カプノサイトファーガ・カニモルサス

PSL内服中にもかかわらず好酸球増多→寄生虫感染→ドナー由来糞線虫症
気管支内視鏡検査:吸引物のグラム染色で250~300ミクロンの虫体→糞線虫Strongyloides stercoralis
腹部の皮膚病変の生検
気管支内視鏡検査の吸引物だけでは、Ascaris lumbricoides回虫症も鑑別になるが、形態、サイズから糞線虫

治療:イベルメクチン+アルベンダゾールに加えて寄生虫侵入に関連した菌血症のハイリスクに備え、VCM、MEPM継続。
BKウイルス血症も発症。

2025年7月16日水曜日

抑うつ状態、低血圧をきたした13歳少年

NEJM,2023,vol.388,no.21
Case Records of the MGH
Case 16-2023: A 13-Year-Old Boy with Depression and Hypotension

ADHD、境界型人格障害、大うつ病の13歳少年。自傷行為、希死念慮で入院繰り返す。3週間前に退院。抑うつ状態、希死念慮の悪化によりER受診。ERより精神科病院への転院が要請されたが、空床なくER待機。ERの急性期精神科病床での41日目、オランザピンの定期内服。12時間後、BP69/39、HR88。不快感、立ちくらみ、嘔気、腹痛の訴え。3時間後、BP79/45、HR85。血液、尿の中毒検査は陰性。腹部造影CT異常なし。

鑑別診断
分布異常性ショック、循環血液量減少性ショック、心原性ショック(小児では心筋炎、ライム心筋炎など)、閉塞性ショック(心タンポナーデ、肺塞栓、緊張性気胸)、
薬物効果:12時間後も血圧低下、徐脈持続。オランザピンは血圧低下の作用あり、しかし、徐脈はそれほどない。グアンファシン、クロニジンはα2アドレナリン作動薬は降圧薬であり、ADHDなどの行動異常に用いられる薬剤で、治療域は狭く、過量では昏迷、徐脈、血圧低下をきたす。

最終診断:α2アドレナリン作動薬中毒
本人に直接尋ねると、部屋に置かれていたグアンファシンのボトルの薬剤を飲んだとのこと。
治療:輸液。加えてノルエピネフリンなどの昇圧剤。症候性徐脈にはアトロピン。リバース効果を期待してナロキソン。