2024年5月22日水曜日

起立性低血圧、高血圧治療、心血管疾患との関連

JAMA,2023,vol.330,no.15
Orthostatic hypotension, Hypertension Treatment, and Cardiovascular Disease
-An Individual Participant Meta-Analysis-

成人高血圧患者の10%以上で起立性低血圧を有するとされ、降圧剤使用が関連するだけでなく、心血管疾患イベントや死亡に関連するとされる。近年、我々は9論文のメタ解析により、強化降圧治療と起立性低血圧は関連がないと報告したが、今回、起立性低血圧、立位低血圧が心血管疾患イベントや死亡と関連するかを検討した。MEDLINE、EMBASE、CENTRALのデータベースより500人以上、6ヶ月以上等で検索し9論文、29235人(69.0±10.9歳、女性48%、中央値4年観察)の個人データを用いた。起立性低血圧は座位から立位でSBP20以上、DBP10以上低下、立位低血圧は立位でSBP110以下、DBP60以下とした。ベースラインで9%に起立性低血圧、5%に立位低血圧を認めた。ベースラインで起立性低血圧のある者は有意に心血管疾患イベント・死亡リスクが高かった(HR,1.14;1.04-1.26)。立位低血圧でも同様(HR,1.39;1.24-1.57)であった。強化降圧治療群では起立性低血圧ありでHR,0.83;0.70-1.00、起立性低血圧なしでHR,0.81:0.76-0.86と心血管疾患イベント+死亡リスクを下げた。立位低血圧なしでは強化降圧治療はCVDイベント+死亡リスクをHR,0.80;0.75-0.85と有意に下げたが、立位低血圧ありではリスクを下げなかった、HR, 0.94;0.75-1.18。

2024年5月15日水曜日

意識障害(昏迷)、失語、頭部異常像を認めた58歳女性

NEJM,2024,vol.390,no.15
Case Records of the MGH
Case 12-2024: A 58-Year-Old Woman with Confusion, Aphasia, and Abnormal Head Imaging

16か月前までは健康。16ヶ月前、昏迷、失語。脳MRI、T2WI、FLAIRにて左側頭葉に異常信号。髄液検査にて蛋白上昇、細胞数正常。HSV-DNA陰性。血液、髄液の自己抗体パネルは陰性。血清免疫電気泳動検査正常。脳波は徐波化はあるが、てんかん性放電なし。自己免疫性脳炎の診断で、グルココルチコイド静注、経口PSL。昏迷、失語は改善。聴覚性の失語は残存。腹部CTにて骨盤内に5cm大の腫瘤を認め、腹腔鏡下に切除、病理は奇形腫。6か月前に昏迷が再燃し、左側頭葉の病変のサイズアップあり。ステロイド治療にてやや改善。3ヶ月前、昏迷再燃。右側頭葉、左後頭葉に新たな病変あり。
既往歴、2型糖尿病、高血圧、感音性難聴(45歳時診断)

鑑別診断
自己免疫性脳炎(不必要な免疫抑制治療を避けるためにも、他の疾患の除外は重要)
感染症:HSV、西ナイル熱、多発病変ではトキソプラズマ症
CNSリンパ腫
脱髄性疾患:PML(JCウイルス)
前医の血液検査で血清乳酸値12.4mmol/Lと著明高値
→ミトコンドリア脳筋症疑い(身長157㎝と低身長、難聴、糖尿病、繰り返す脳卒中様病変)
筋生検
最終診断:MELAS

2024年5月8日水曜日

心停止、心原性ショック、低酸素血症をきたした55歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.11
Case Records of the MGH
Case 8-2024: A 55-Year-Old Man with Cardiac Arrest, Cardiogenic Shock, and Hypoxemia

レストランで夕食を食べていた男性が意識を失い、第1発見者がAEDで除細動、CPR施行。4分後に救急隊がVF確認し除細動。アミオダロン、エピネフリン経静脈的投与。VT持続。ERに搬送され、心電図にて下壁誘導にST上昇型心筋梗塞所見。到着時、心拍数123、BP188/107。BMI:27.0。RCAに薬剤湧出性ステント導入。カングレロール、アミオダロン、バンコマイシン、セフェピム開始。経皮的LVAD(左室補助心臓)装着。ノルエピネフリン4μg/分、LVAD補助最大でもBP81/72。
SARS-CoV-2RNA陽性。侵襲的心拍出量モニタリングのデータでは、中心静脈血酸素飽和度56.6%、混合静脈血酸素飽和度76.8%、動脈血酸素飽和度93.0%。

鑑別診断
RCAにステント留置、経皮的LVADにも関わらず心原性ショック、低酸素血症増悪。
心係数(CI):1.7であれば、混合静脈血酸素飽和度は40%が予想。
肺動脈カテーテルが正しい位置にあるとして、急性心筋梗塞で予想より混合静脈血酸素飽和度が上昇するのは1)心外AVシャント、2)分布異常ショックを伴う心原性ショック、3)乳頭筋破裂・心室中隔破裂
診断
心エコー再検にて中隔下部に16mmの欠損、左右シャント。
最終診断
下壁梗塞に伴う心室中隔破裂、急性乳頭筋破裂

2024年4月24日水曜日

転倒、認知機能低下をきたした82歳、女性

NEJM,2024,vol.390,no.14
Case Records of the MGH
Case 11-2024: A 82-Year-Old Woman with Fall and Cognitive Decline

8か月前まではウォーキングクラブに参加する自立した女性。徐々に歩行速度低下、5ヵ月前には階段が上れなくなる。3か月前、転倒し、他の病院で尿路感染症、SIADH指摘。2週間前にも転倒し、他院にて脳MRIで脳室拡大が指摘。また尿便失禁をきたす。
今回、転倒を繰り返すため、受診。右手背等に触れると強い痛みがあり、そのために動かせない程。両側のMP関節、PIP関節の紅斑、腫脹、疼痛あり。入院4日目に神経伝導検査が施行、左脛骨神経と両側腓骨神経のCMAPが低下しており、左尺骨神経CMAPも軽度低下。伝導速度や遠位潜時は正常であった。筋電図は異常な自発放電等なし。ビタミンB6は正常。

鑑別診断
ミオパチーや脱髄疾患は否定的。症状や電気生理検査からは多発単神経炎。多発単神経炎の最も多い原因は自己免疫性血管炎。結節性多発動脈炎PN。ANCA関連血管炎(GPA、MPA、EGPA)。クリオグロブリン血症関連血管炎。
他の自己免疫性疾患での血管性ニューロパチー:SLE、RA、SjS、PSS、MCTD、炎症性筋炎。
診断的検査
血液検査ではRAが示唆。腓腹神経生検:リンパ球性の小中血管炎による血管性神経障害
最終診断
RA、RAに伴う血管炎による多発単神経炎

2024年4月17日水曜日

4例の重度麻痺に対する植込み型血管内電極によるブレイン・コンピュータ・インターフェイスの安全性評価

JAMA Neurol,2023,vol.80,no.3
Assessment of Safety of a Fully Implanted Endovascular Brain-Computer Interface for Severe Paralysis in 4 Patients
-The Stentrode With Thought-Controlles Digital Switch(SWITCH) Study-

内頚静脈から上矢状静脈洞に16の電極のあるデバイスを前中心回に留置。豪の王立メルボルン病院にて、2019~2021年に5例のALS、PLSの患者(平均61歳、全例白人男性)が登録され、1例は横静脈洞欠損のため除外。全身麻酔で実施、手術時間232分、被爆時間43分。12ヶ月の観察期間中、死亡や重大な有害事象なし。静脈洞血栓の発生なし。電極の位置移動なし。4例ともアイ・トラッキングを伴うPC使用は何回かの訓練で可能となり、文字入力は16.6文字/分。最終的に1例はアイ・トラッキングなしにYes-Noの入力が正答率97.4%で可能となる。全例、満足感、充足感を表明された。

2024年4月10日水曜日

体動困難の84歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.20
Case Records of the MGH
Case 9-2024: A 84-Year-Old Man with Fall

3週間前に一過性肉眼的血尿。1週間前に失語、右上肢しびれ(その2週前よりリバロキサパン開始)。他院に入院し、MRIでは微小血管虚血性変化を認めるのみで、TIAと診断。経胸心エコーではLVEF:60%、中等度MR、軽度AR。今回、浴室で倒れていたのが発見されER搬送。全身的な筋力低下、ふらつきあり。既往歴はAF、心不全、COPD、高血圧、抑うつ状態、前立腺がん。発熱なし、左肘屈側に紅斑あり。同部はエコーにて血流のない低エコー病変(1.7×0.5×1.3㎝)があるも、形成外科にて特に外科的処置を要しないとのコメント。尿培養でMSSA検出。また、第1入院病日の血培でグラム陽性球菌が4検体中1つから検出。体部造影CTでは、左副腎に結節影、胸部大動脈瘤あり。第3入院病日、突如、胸痛を訴え、動けない状態。 

鑑別診断
尿培養でMSSA検出されているが、尿道カテーテルがない場合、血行性の感染を考えるべき。
診断的検査
CTA再検にて仮性胸部大動脈瘤の拡大(19→30mm)あり。血培のグラム陽性球菌はMSSA。
最終診断:MSSAによる菌血症、感染性大動脈瘤
治療:
VCM中止しCEZに変更。胸部大動脈瘤に対しては、ステントグラフト挿入術。6週間の抗菌薬点滴後、長期の経口抗菌薬治療へ。

2024年4月3日水曜日

高齢AF患者におけるカテーテルアブレーションによる認知症リスク、死亡リスク

J Am Geriatr Soc,2023,vol.71
Catheter ablation and lower risk of incident dementia and mortality in older adults with atrial fibrillation

米国のヘルスネットワークのTriNetXの2022年9月のデータを用いて検討した。65歳以上のAF患者でカテーテルアブレーションを実施したAF患者44施設、20747人、対照群としてカテーテルアブレーション非実施のAF患者58施設76万7千人から、プロペンシティスコアをマッチさせた20747人を抽出し、比較検討した。年齢は68.4歳、男性59.1%。経口抗凝固薬16.6%。5年間の観察期間で、新たな認知症発症はCA群253人、1.2%、非CA群439人、2.1%で、HR 0.52(0.19-0.61)で有意に認知症発症リスクを減らしていた。ADでHR 0.30(0.19-0.45)、脳血管性認知症でHR 0.54(0.35-0.82)であった。サブ解析ではほぼ全てのサブ因子でCA群で認知症リスクを減らしていたが、抗凝固療法なしでは有意差を認めず。総死亡についてはCA群で2447人11.8%vs3509人16.9%、HR 0.58(0.55-0.61)で有意に総死亡を減らしていた。