2025年6月18日水曜日

咽頭痛と皮疹の56歳女性

NEJM,2025,vol.392,no.16
Case Records of the MGH
Case 12-2025: A 56-Year-Old Woman with Sore Throat and Rash

2日前まで健康。ホームレスのシェルターにて居住。うつ病の治療中。当日、顔、前胸部、腹部、下肢の皮疹に気付きER受診。掻痒感、咽頭痛あり。ホームレスのシェルターでは、シラミ、疥癬の流行の情報あり。リスペリドン等の内服あり
体温38.4℃、酸素飽和度96%、上口唇に潰瘍、前額部、鼻、頬部にピンクの丘疹、背部、前胸部、腹部に表皮の剥離した丘疹、水疱あり。手掌、手背にピンクの丘疹。血液検査でGOT:44,GPT:60、WBC5300,異形リンパ球5.3%

鑑別診断:
疥癬、シラミ(ケジラミ、コロモジラミ)薬疹(SJS、DRESS症候群等)
ウイルス感染(麻疹、風疹、急性HIV感染(40-80%に麻疹様の皮疹を伴う)、HSV、Mpox、水痘)
診断的手技:パンチ生検
診断:生検の免疫組織染色にてVZVが細胞核、細胞質に陽性。血清検査ではVZV-IgM、IgG陰性、HIV-1,HIV-2の抗原、抗体陰性

最終診断:水痘

2025年6月11日水曜日

発熱、嘔気、呼吸不全の52歳男性

NEJM,2025,vol.392,no.20
Case Records of the MGH
Case 15-2025: A 52-Year-Old Man with Fever, Nausea, and Respiratory Failure

ブエノスアイレスの教育病院ERに初秋に1週間続く咳で受診。1週間前より発熱、咳。胸部XPにてびまん性すりガラス影。15L酸素で酸素飽和度89%。コロナ検査陰性。患者は1か月前に歯科治療歴あり。また、最近ブエノスアイレス郊外のチャコムスの田舎でキャンプ歴あり。特に虫刺やげっ歯類の接触は認めない。血液検査ではHb:19.7,WBC:16500、PLT:54000↓、PaO2:42、PaCO2:70、pH:7.14、肺CTでは気管支肥厚を伴うびまん性すりガラス影。ネイサルハイフロー100%でもPaO2上昇せず、気管内挿管、人工呼吸管理。

鑑別診断
市中肺炎、びまん性肺胞出血、骨髄増殖性疾患
血液濃縮+両側肺病変→毛細血管漏出症候群→重症敗血症、トキシックショック、中毒、アナフィラキシー、ウイルス感染
アルゼンチンのチャコムス地域はハンタウイルスの流行地域。げっ歯類を通じて感染。潜伏期5~45日。発熱、倦怠感、関節痛、筋痛、嘔気・嘔吐などの消化器症状で、1/3は腹痛。腹痛は強く、虫垂炎、憩室炎、胆石に似る。心肺期には著明な低酸素、肺うっ血、ショックとなり、2-4日間持続。入院24-48時間が最も死亡リスク高い。
最終診断:ハンタウイルスによる心肺症候群

2025年6月4日水曜日

扁桃周囲の腫脹、出血をきたした29歳女性

NEJM,2025,vol.392,no.19
Case Records of the MGH
Case 14-2025: A 29-Year-Old Woman with Peritonsillar Swelling and Bleeding

7週間前に咽頭痛。近医にてコロナ抗原、溶連菌抗原陰性。症状持続し、アジスロマイシン投与。31日前に右ののどの腫れ、咽頭閉塞感を自覚しER受診。発熱なし。嗄声、喘鳴なし。右扁桃周囲の腫脹あり。右扁桃は発赤なし、浸出液なし。造影CTでは2.6cm大の咽頭の扁桃周囲にLDAあり。末梢にわずかに造影あり。リンパ節は異常なし。耳鼻科クリニックでフォローとなり、26日前、右扁桃周囲を切開し3mLの血性浸出液を排液。その翌日、疼痛と血性浸出液が持続し、患者は緊急で全麻下で止血処置が実施。その後、症状は改善していたが、8日前にカエル声となり、間欠的に出血するようになり、ER受診。
CTでは右扁桃周囲のLDAは3.5㎝大のLDAを認め、軟口蓋と上咽頭粘膜下層にまで浸潤していた。

鑑別診断:膿瘍、良性腫瘍(パピローマ、フィブローマなど)、悪性腫瘍(扁平上皮癌、リンパ腫、唾液腺癌、肉腫など)

診断
右咽頭の生検→胚性の横紋筋肉腫
免疫組織染色にてdesmin、myoD1が陽性で、myogeninが多巣性に陽性。
経過
本患者では診断的扁桃的手術は実施されたが、腫瘍摘出の場合、重度の嚥下障害が残存し、胃瘻による栄養が必要になると予想され、外科的切除縁をクリアする可能性が低いことから、手術は勧めず、化学療法、放射線療法など全身療法が勧められた。

2025年5月28日水曜日

体重減少、衰弱、食思不振をきたした70歳男性

NEJM,2025,vol.392,no.18
Case Records of the MGH
Case 13-2025: A 70-Year-Old Man with Weight Loss, Weakness and Anorexia

抗うつ薬で治療歴のある70歳男性
6週前に倦怠感増悪。8日前にER受診。CTにて左副腎に19mmの結節認め、画像診断にて腺腫と判断。造影剤を用いたCTAによる頭部、頚部CTでは異常なし。
その後も倦怠感、食思不振持続。この6週で体重13.6kg減少。
患者にはhairy-cell白血病の既往があり、7年間寛解状態。
患者の皮膚はあちこちに打撲痕、皮膚の菲薄化あり。血液検査では血小板減少(9.1万)リンパ球減少(570)あり。カリウム3.1、
入院2日後、進行性の昏迷状態となり、脳波ではてんかん波を認めないびまん性のデルタ波、シータ波を認めた。第5病日には進行性の脳症により気管内挿管を実施。迷走神経刺激装置の存在のため、MRIは実施不能で、CT実施。右尾状核、内包前脚にLDAを認めた。髄液検査では初圧58cm、蛋白92,ブドウ糖2,赤血球500,細胞数67(好中球48,リンパ球32,単球16)。

鑑別診断:倦怠感、高血圧、低カリウム血症、高血糖、気分の悪化、味覚障害皮膚病変(皮膚菲薄化)等→Cushing症候群を疑う所見
髄液異常(細胞数増多、蛋白上昇、著明な初圧高値)→髄膜脳炎疑い

診断:5日目の血培陽性(血液寒天培地で酵母疑い)。墨汁染色でクリプトコッカス疑い。血液、髄液でのクリプトコッカス抗原のラテックス凝集抗原検査で4096倍。24時間尿中コルチゾール400μg(基準値3.5-45)。
→Cushing症候群に伴うクリプトコッカス・ネオフォルマンス感染

2025年5月21日水曜日

現在のCTから予想される生涯がんリスク

JAMA Int Med,2025
Projected Lifetime Cancer Risks From Current Computed Tomography Imaging

カルフォルニア大学UCSFの国際CT線量登録のデータ(米国の143施設および22の医療機構)を用いて検討。2016年と2020年のデータを用いて2023年のCT検査数を推定。米国科学アカデミーの放射線の生物学的影響のリスクモデルを活用した米国がん研究所の放射線評価ツール(RadRAT)を使用し放射線誘発がんリスクを予測した。このリスクモデルでは11の部位のがん、さらに7つの部位のがんについて、日本の原爆被爆者の最近のフォローアップのデータが用いられた。
結果、2023年に6151万人の患者が9300万件のCTを受けたと推定。小児は4.2%。これらの検査により10万3000件の放射線誘発がんが発生すると予想された。肺癌22400件、大腸癌8700件、白血病7900件、膀胱癌7100件、女性では乳癌5700件。成人におけるがん発生件数が多かったのは腹部・骨盤CTと予測(がん件数では37%、CT件数では32%)、胸部CTではがんで21%、CT件数21%と予測された。CT関連がんは、年間の新規がん診断の5%を占めると予想された。

2025年5月14日水曜日

時間毎の暑熱暴露と急性虚血性脳卒中

JAMA Network,2024,vol.7,no.2
Hourly Heat Exposure and Acute Ischemic Stroke

中国全土の200以上の脳卒中センターからなる脳卒中ビッグデータ(BOSC)のデータを用い、18歳以上、脳卒中発症後7日以内に入院、自己申告の発症時刻のわかるものを用い、2019-2021年で気温の高い4-9月の患者を対象とした。100キロ圏内の気象台のデータを用い、発症時刻から24時間の1時間毎の気温、湿度を用いた。条件付きロジスティック回帰分析+時間差を考慮した時系列データ非線形解析モデルにて検討した、329地点、82455人の虚血性脳卒中患者で解析。年齢65.8±11.9歳、男性63.4%、喫煙32.1%、アルコール24.2%、高血圧59.7%、脂質異常症3.0%、AF3.4%。発症3時間以内の来院率11.8%。気温を100パーセンタイル分位とした場合、最も低い1パーセンタイル分位を基準とすると気温12.1度、99パーセンタイル分位の気温は33.3度で、高い気温では、虚血性脳卒中の発症はオッズ比1.88(1.65-2.13)で高く、脂質異常があるとオッズ比は4.68(2.15-10.17)となった。高い気温の暴露の影響は10時間持続し、気温はオッズ比に線形に影響し、北部地域でより強い影響を認めた。

2025年5月7日水曜日

日本におけるHFpEFの疫学、病態生理、診断、治療(総説)

J Cardiac Failure,2023,vol.29,no.3
Epidemiology, Pathophysiology, Diagnosi, and Therapy of Heart Failure With Preserved Ejection Fraction in Japan

佐渡ヶ島での一般市民の疫学の推計では日本の心不全は2005年で100万人(1.0%)、2020年で120万人(1.2%)とされ、米国の2018年2.1%に比して少ない。日本でのHFpEFの院内死亡率は5.1-7.8%。心不全での心臓突然死は日本/韓国でHFpEFの6.1%/年と報告された。
日本では欧米に比して心不全での肥満が少ない(6.5%、米国75%)。肥満が少ないにもかかわらず、アジア人のHFpEFでは糖尿病は少なくない。それはインスリン分泌能、β細胞量が非アジア人に比して少ないためとされる。日本のHFpEFではCKDも多い。高齢者のHFpEFではフレイルも多く55.2%。AFの合併率は55%。
心臓アミロイドーシスはHFpEFの原因として過小評価されている。日本の80歳以上の剖検例では11.5%にトランスサイレチン・アミロイドの沈着が見られた。
HFpEFの治療ガイドラインとして、うっ血に対して利尿剤、高血圧、糖尿病、AFに対する治療、運動とともに、MRA、ARNI、ARBの使用を推奨。2022年のガイドラインではSGLT2阻害薬がHF入院、心不全死亡を下げるとして推奨。
日本のHFpEF患者ではサルコペニア、フレイルが多く、体重減少のあるHFpEFの死亡率は5倍高いとされる。日本の外来心不全患者で、心臓リハビリテーションを受けているのは7.3%にすぎない。