2025年7月16日水曜日

抑うつ状態、低血圧をきたした13歳少年

NEJM,2023,vol.388,no.21
Case Records of the MGH
Case 16-2023: A 13-Year-Old Boy with Depression and Hypotension

ADHD、境界型人格障害、大うつ病の13歳少年。自傷行為、希死念慮で入院繰り返す。3週間前に退院。抑うつ状態、希死念慮の悪化によりER受診。ERより精神科病院への転院が要請されたが、空床なくER待機。ERの急性期精神科病床での41日目、オランザピンの定期内服。12時間後、BP69/39、HR88。不快感、立ちくらみ、嘔気、腹痛の訴え。3時間後、BP79/45、HR85。血液、尿の中毒検査は陰性。腹部造影CT異常なし。

鑑別診断
分布異常性ショック、循環血液量減少性ショック、心原性ショック(小児では心筋炎、ライム心筋炎など)、閉塞性ショック(心タンポナーデ、肺塞栓、緊張性気胸)、
薬物効果:12時間後も血圧低下、徐脈持続。オランザピンは血圧低下の作用あり、しかし、徐脈はそれほどない。グアンファシン、クロニジンはα2アドレナリン作動薬は降圧薬であり、ADHDなどの行動異常に用いられる薬剤で、治療域は狭く、過量では昏迷、徐脈、血圧低下をきたす。

最終診断:α2アドレナリン作動薬中毒
本人に直接尋ねると、部屋に置かれていたグアンファシンのボトルの薬剤を飲んだとのこと。
治療:輸液。加えてノルエピネフリンなどの昇圧剤。症候性徐脈にはアトロピン。リバース効果を期待してナロキソン。

2025年7月9日水曜日

指先測定の終末糖化産物AGEsと外来心血管患者の心血管イベント

Cardiovascular Diabetology,2023,vol.22
Association between fingertip-measured advanced glycation end products and cardiovascular events in outpatients with cardiovascular disease

CVD患者における指先で測定されたAGEsスコアと心血管イベントの関連性について検討。一施設(北里大学病院)での後方視的観察研究。204人の心臓リハビリテーション実施者が登録され、最終的に191人で評価。AIR WATER BIODESIGN社の指先測定のAGEs測定器を用いた。AGEsスコアは主にメチルグリオキサールを反映し、0.0~10.0で表され、50歳の健康な日本人男性の平均スコアは0.5(メーカー調査)。腫瘍評価項目は心血管イベント(心血管死、MI、PCI、心不全、脳卒中)。AGEsスコアの中央値0.51で、それにより高AGE群、低AGE群に分けて評価。
高AGE群96例(73.1歳、男性62%、BMI23.9、心不全56%、CKD58%、LDLコレステロール88.1、HbA1c6.3%、クレアチニン1.16、eGFR55.6)低AGE群95例でベースラインでは有意差は認めず。平均15.1ヶ月フォローされ、心血管イベントは27.1%vs10.5%、p=0.007で、MI発症4.2%vs0.0%、p=0.043、PCI実施7.3%vs1.1%、p=0.037。30ヶ月までフォローされたものでも同様の結果。単変量解析では心血管イベントと関連していたのは、BMI、HF、虚血性心疾患、BNP、AGEスコア、握力、6分間歩行であった。AGEスコアと6分間歩行で心血管イベント検出のAUCによる最適カットオフ値は0.51、378mであった。

2025年7月2日水曜日

高リスクの2型糖尿病における経口セマグルチドでの心血管アウトカム

NEJM,2025,vol.392,no.20
Oral Semaaglutide and Cardiovascular Outcomes in High-Risk Type 2 Diabetes

SOUL研究。50歳以上のHbA1c6.5-10.0%の2型糖尿病で、冠動脈疾患、脳血管疾患、症候性の末梢動脈疾患、eGFR<60のCKDの一つ以上有するものを対象とし、経口セマグルチド群とプラセボ群を1対1で割付。セマグルチドは3㎎から開始し、7㎎か14㎎まで増量。主要評価項目は心血管死、MI、脳卒中の複合。33か国、444施設で実施。9650人が登録され、経口セマグルチド群4825人(66.1歳、女性28.5%、白人69%、アジア系23.5%、HbA1c8.0±1.2)プラセボ群4825人。中央値49.5カ月フォロー。心血管イベントは12.0%vs13.8%(3.1イベント/100人・年vs3.7)でハザード比0.86(0.77-0.96)であった。二次評価項目の主要腎障害(心血管死、腎関連死、eGFR50%以上悪化、eGFR<15、腎代替療法導入)はハザード比0.91(0.80-1.09)、心血管死0.93(0.80-1.09)、四肢イベント0.71(0.52-0.96)で有意差は認めず。

2025年6月25日水曜日

カンジダ血症の臨床と治療、後方視的検討

BMC Infectious disease,2024,vol.24
Clinical manifestations and treatment of candidemia caused by different Candida species: a retrospective study

北京清華大学医学院に2020~2023年に血培でカンジダが陽性となった94例で検討した。年齢66.3±13.9歳、男性59例、死亡22例23.4%、10日以内の先行するグラム陽性球菌の菌血症既往31.9%、悪性疾患39.3%、消化器手術後38.3%、経静脈栄養53.2%、広域抗菌薬使用53.2%、ICU入室43.6%、CVカテ挿入213%。
広域抗菌薬の使用、低体重、低Alb血症、経静脈栄養、消化器手術の既往、尿路感染の既往、グラム陽性球菌の菌血症で、カンジダ血症の患者の死亡リスクが高かった。経静脈栄養の期間が長いと死亡リスクはオッズ比10.57で高かった。βDグルカンの陽性率は66.2%で他の報告より低かった。菌種同定ではアルビカンス46.8%、パラシリオーシス23.4%、グラブラータ17%。治療はトリアゾール系54例、エキノキャンディン系37例、アムホテリシンB3例。トリアゾール系はフルコナゾール35例、ボリゴナゾール19例で治療。エキノキャンディン系は39%がカスポファンギンで、7日間のトリアゾール系とエキノキャンディン系の効果は同様であった。Cグラブラータのトリアゾール系の耐性率は30%とする報告もある。今回の検討ではエキノキャンディン系に耐性のものは認めなかった。

2025年6月18日水曜日

咽頭痛と皮疹の56歳女性

NEJM,2025,vol.392,no.16
Case Records of the MGH
Case 12-2025: A 56-Year-Old Woman with Sore Throat and Rash

2日前まで健康。ホームレスのシェルターにて居住。うつ病の治療中。当日、顔、前胸部、腹部、下肢の皮疹に気付きER受診。掻痒感、咽頭痛あり。ホームレスのシェルターでは、シラミ、疥癬の流行の情報あり。リスペリドン等の内服あり
体温38.4℃、酸素飽和度96%、上口唇に潰瘍、前額部、鼻、頬部にピンクの丘疹、背部、前胸部、腹部に表皮の剥離した丘疹、水疱あり。手掌、手背にピンクの丘疹。血液検査でGOT:44,GPT:60、WBC5300,異形リンパ球5.3%

鑑別診断:
疥癬、シラミ(ケジラミ、コロモジラミ)薬疹(SJS、DRESS症候群等)
ウイルス感染(麻疹、風疹、急性HIV感染(40-80%に麻疹様の皮疹を伴う)、HSV、Mpox、水痘)
診断的手技:パンチ生検
診断:生検の免疫組織染色にてVZVが細胞核、細胞質に陽性。血清検査ではVZV-IgM、IgG陰性、HIV-1,HIV-2の抗原、抗体陰性

最終診断:水痘

2025年6月11日水曜日

発熱、嘔気、呼吸不全の52歳男性

NEJM,2025,vol.392,no.20
Case Records of the MGH
Case 15-2025: A 52-Year-Old Man with Fever, Nausea, and Respiratory Failure

ブエノスアイレスの教育病院ERに初秋に1週間続く咳で受診。1週間前より発熱、咳。胸部XPにてびまん性すりガラス影。15L酸素で酸素飽和度89%。コロナ検査陰性。患者は1か月前に歯科治療歴あり。また、最近ブエノスアイレス郊外のチャコムスの田舎でキャンプ歴あり。特に虫刺やげっ歯類の接触は認めない。血液検査ではHb:19.7,WBC:16500、PLT:54000↓、PaO2:42、PaCO2:70、pH:7.14、肺CTでは気管支肥厚を伴うびまん性すりガラス影。ネイサルハイフロー100%でもPaO2上昇せず、気管内挿管、人工呼吸管理。

鑑別診断
市中肺炎、びまん性肺胞出血、骨髄増殖性疾患
血液濃縮+両側肺病変→毛細血管漏出症候群→重症敗血症、トキシックショック、中毒、アナフィラキシー、ウイルス感染
アルゼンチンのチャコムス地域はハンタウイルスの流行地域。げっ歯類を通じて感染。潜伏期5~45日。発熱、倦怠感、関節痛、筋痛、嘔気・嘔吐などの消化器症状で、1/3は腹痛。腹痛は強く、虫垂炎、憩室炎、胆石に似る。心肺期には著明な低酸素、肺うっ血、ショックとなり、2-4日間持続。入院24-48時間が最も死亡リスク高い。
最終診断:ハンタウイルスによる心肺症候群

2025年6月4日水曜日

扁桃周囲の腫脹、出血をきたした29歳女性

NEJM,2025,vol.392,no.19
Case Records of the MGH
Case 14-2025: A 29-Year-Old Woman with Peritonsillar Swelling and Bleeding

7週間前に咽頭痛。近医にてコロナ抗原、溶連菌抗原陰性。症状持続し、アジスロマイシン投与。31日前に右ののどの腫れ、咽頭閉塞感を自覚しER受診。発熱なし。嗄声、喘鳴なし。右扁桃周囲の腫脹あり。右扁桃は発赤なし、浸出液なし。造影CTでは2.6cm大の咽頭の扁桃周囲にLDAあり。末梢にわずかに造影あり。リンパ節は異常なし。耳鼻科クリニックでフォローとなり、26日前、右扁桃周囲を切開し3mLの血性浸出液を排液。その翌日、疼痛と血性浸出液が持続し、患者は緊急で全麻下で止血処置が実施。その後、症状は改善していたが、8日前にカエル声となり、間欠的に出血するようになり、ER受診。
CTでは右扁桃周囲のLDAは3.5㎝大のLDAを認め、軟口蓋と上咽頭粘膜下層にまで浸潤していた。

鑑別診断:膿瘍、良性腫瘍(パピローマ、フィブローマなど)、悪性腫瘍(扁平上皮癌、リンパ腫、唾液腺癌、肉腫など)

診断
右咽頭の生検→胚性の横紋筋肉腫
免疫組織染色にてdesmin、myoD1が陽性で、myogeninが多巣性に陽性。
経過
本患者では診断的扁桃的手術は実施されたが、腫瘍摘出の場合、重度の嚥下障害が残存し、胃瘻による栄養が必要になると予想され、外科的切除縁をクリアする可能性が低いことから、手術は勧めず、化学療法、放射線療法など全身療法が勧められた。