2024年7月17日水曜日

代謝関連脂肪肝疾患(旧・非アルコール性脂肪肝疾患)、肝線維化に対するSurvodutideのフェーズ2試験

NEJM,2024
A Phase 2 Randomized Trial of Survodutide in MASH and Fibrosis

MASHでは肥満を伴う事が多く、肥満に対してGLP1作動薬は効果が示されているが、肝細胞にはGLP1受容体が存在しない。グルカゴンとGLP1の両方への作動薬は肝でのエネルギー消費、脂肪分解、肝細胞内脂肪の移動などの肝への直接作用が期待できる。25ヵ国、155施設で二重盲検試験として、スポンサーのベーリンガーインゲルハイム社主導で実施。肝生検でNAFLD活動性スコア(NAS)が4点以上、肝線維化F1-F3の18-80歳のMASHを対象とした。主要評価項目は48週後の肝生検でのNASの2点以上の改善。2次評価項目はMRI-PDFFでの肝内の脂肪量の30%以上の減少や、ALT、ASTの改善等。
295例(対照群53.0歳、女性59%、BMI:35.49、T2DM合併39%)が無作為化され、281例95.9%が治療を完遂し、219例が治療終了後の肝生検を受けた(治療後の肝生検非実施例は治療反応なしと判定)。主要評価項目の48週後の肝線維化の悪化のないNAS改善はSurvodutide2.4mg群、4.8mg群、6.0mg群、対照群で47%、62%、43%、14%で有意に改善した。2次評価項目では、MRI-PDFFでの肝脂肪量30%以上の減少は、63%、67%、57%、14%、ALT減少は6.0mg群vs対照群で‐38.5vs-5.7、AST減少は‐32.2vs-2.4であった。

2024年7月10日水曜日

喘息と心血管疾患との関連

CHEST,2021,vol.159,no.4
The Relationship Between Athma and Cardiovascular Disease

フラミンガム・オフスプリング研究のデータを用いた。1979年-2014年に登録された17-77歳の3612例の後方視的人口ベースのコホート。15%533例が喘息と診断。25%897例が研究期間中にCVDを発症。喘息のCVD発症のリスクはハザード比1.40(1.17-1.68)であった。年齢、性、HDLコレストロール、総コレストロール、降圧剤使用、血圧、糖尿病、喫煙、肥満、教育で調整したハザード比でも1.28(1.07-1.54)であった。

2024年7月3日水曜日

トキシックショック症候群(TSS)

Antibiotics,2024,vol.13
Toxic Shock Syndrome: A Literature Review

TSSは超抗原性外毒素の分泌→T細胞活性化→非特異的なポリクローナルなリンパ球活性化→大規模な炎症性サイトカインの分泌→毛細血管透過性亢進、血圧低下、臓器不全、凝固能亢進。
黄ブ菌によるTSS:発熱、びまん性紅斑、発症から1-2週後に特に手掌・足底の落屑、低血圧、臓器障害をきたす。人口10万人あたり0.03-0.07人。
月経関連の黄ブ菌TSS:米国の女性262人のコホート研究では22.9%に腟内に黄ブ菌陽性で、4.2%にTSST-1産生黄ブ菌であったとされる。月経関連TSSでは全例血培陰性であった。仏の102例の月経関連TSSの報告では全例がタンポンを使用し、頻脈、高熱を認め、87%に皮疹、50%に粘膜病変、消化器症状、頭痛を認め、84%が昇圧剤、21%で呼吸器管理が必要であった。
非月経関連の黄ブ菌TSS:術後が最も多い。一般手術の他、産後、中絶後もある。術後4日目が最も多く、血培陽性50%。 
仏に月経関連黄ブ菌TSS102例ではMRSAはなかったが、英の180例(107例が非月経)では3.8%にMRSAを認め、米国の61例のTSSでも7%にMRSAを認めた。ヒトの鼻腔には20-80%でTSST-1産生黄ブ菌が定着しているとされる。カブールにおける健常人150人の鼻腔では68.4%にTSST-1産生のMRSAを検出したとする報告がある。
連鎖球菌によるTSS(STSS):化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes )の重症例の8-22%がSTSSに進行する。壊死性軟部組織感染症の40-50%がSTSSに進行する。血培は60-86%に陽性となる。皮膚損傷のない軽微な外傷、肺炎、子宮内避妊具、化膿性関節炎、熱傷、水痘、産後等もSTSSの原因となる。
STSSは50-69歳に多い。アルコール多飲、NSAIDs使用はリスクとされ、議論はあるが、NSAIDsは壊死性皮膚炎のリスクが3倍とされる。ノースヨークシャーの14例のSTSSでは低血圧100%、急性腎不全93%、肝不全57%、DIC64%、MOF43%で、71%が壊死性皮膚炎であった。
IVIGによるSTSSの治療:欧州の他施設研究では死亡率がIVIG群10%vs非IVIG群36%であったが、有意ではなかった。別のRTCではIVIGで死亡に対して有用性は示せず。
黄ブ菌TSSの死亡率5%、連鎖球菌TSSの死亡率14-64%。

2024年6月26日水曜日

人生で最も強い頭痛をきたした64歳女性

NEJM,2024,vol.390,no.22
Case Records of the MGH
Case 18-2024: A 64-Year-Old Woman with the Worst Headache of Her Life

その日の夕までは健康で、会合での会話中に話すために立った時に、突然、両側の前頭部の拍動性で、その瞬間に最大になる頭痛をきたした。嘔吐を伴わない嘔気あり。30分経っても改善せず、救急要請。
体温36.3度、血圧155/77、HR:77、SpO2:96%、視神経乳頭正常。筋力、感覚、小脳機能、深部腱反射異常なし。単純CTでは、上頭頂葉小葉にくも膜下出血を認めた。赤沈は8mm、CRP:2.7mg/L、トロポニンT:0.36ng/mL(正常<0.03)、心電図では1度AVB、びまん性にSTが数mm低下あり。

鑑別診断
雷鳴様頭痛:動脈瘤破裂によるSAH、RCVS(ERにおける雷鳴様頭痛の8%とする報告がある)、脳静脈洞血栓症、脳動脈解離、PRES
心電図変化、トロポニンT陽性→たこつぼ心筋症
診断:CTアンギオにて複数の動脈末梢で狭小化あり、RCVS
患者は疼痛管理を行い、第2入院病日に退院。しかし、その後も頭痛が持続し、脳MRIで脳梁に脳梗塞が新たに出現。

2024年6月19日水曜日

不随意運動、意識レベル低下の79歳男性

NEJM,2023,vol.389,no.15
Case Records of the MGH
Case 31-2023: A 79 Year-Old Man with Involuntary Movement and Unresponsiveness

9ヶ月前、左肩、左顔面の不随意運動。ビクッとする運動で意識の変容を伴わなず、1-2分で消失。その6ヶ月後には症状は月1回、5-6分持続する様になる。プライマリケア医では低Na血症(129)指摘。MRIでは造影される右中前頭回の小さな異常血管影、脳波ではてんかん波は認めないが、左側頭葉の徐波を認めた。2ヶ月前、てんかんクリニックで、LEV開始。発作時の動画では、舞踏アテトーゼ様であった。LEVを減量し、クロバザムへ変更。
今回、左上下肢の不随意運動が1時間持続した後、意識レベルの低下を認め、ERへ搬送。血性Na:125、CTAで右CCAからICAにかけて閉塞あり。左顔面麻痺あり。
鑑別診断
舞踏病様運動、アテトーゼ、バリスム、ジストニア
てんかん発作:今回の患者の不随意運動は定型的でなく、てんかんとしては非典型的ではないか。
低Na血症、不随意運動、てんかん:抗LGI-1抗体関連自己免疫性脳炎
機能性神経障害
Limb shaking TIA
診断、治療
Limb shaking TIA、緊急CEA

2024年6月12日水曜日

背部痛、下肢のこわばり、転倒をきたす30歳女性

NEJM,2024,vol.390,no.18
Case Records of the MGH
Case 14-2024: A 30 Year-Old Woman with Back Pain, Leg Stiffness  and Falls

3年前より、膝を曲げる時や、階段昇降時に背部痛を自覚。数カ月後には背部痛と下肢のこわばりが寛解、増悪するようになる。普段は普通に歩けたり、ランニングも可能であったが、時々、「ロックされた」様になって全く歩けない時もあり、転倒も経験した。2.5年前、リウマチ科受診。膝は他動的に屈曲困難であったが、気をそらす手技では屈曲可能であった。症状は改善せず。MRIではL4/5の椎間板の信号の軽度の低下のみで、筋弛緩薬が投与。
患者には閉所恐怖症、バセドウ病、血小板減少症の既往。妹に橋本病の病歴。
鑑別診断
強直性脊髄炎
ミオトニアをきたす疾患
ジストニアをきたす疾患
Stiff-Person症候群:脊髄、脳のGABA関連のα運動神経抑制の障害=過剰活動による症候。こわばり、疼痛を伴う筋スパズムが最初の症候で、典型的なタイプは傍脊柱筋や腹筋から始まり、進行すると下肢筋に及ぶ。突然の随意運動、理学的な接触、寒冷刺激、感情的刺激、驚愕刺激などが疼痛性筋スパズムを誘発する。35-40歳が好発年齢。50%に自己免疫性疾患の既往、30%に1型糖尿病の既往。ベンゾジアゼピン系薬剤の反応も診断的特徴。不安症、うつ病、広場恐怖症などの精神疾患の合併もよくみられる。
GAD65抗体が60-90%にみられる。
診断的検査
RIAによるGAD65抗体:169nmol/L(カットオフ値20以下)
もしGAD65抗体が陰性であれば、グリシン受容体、amphiphysin、dipeptidyl-peptidase-like protein-6に対する自己抗体の検査を推奨するつもりであった。他に傍脊柱筋の作動筋と拮抗筋の同時収縮の筋電図検査を推奨するつもりであった。
患者は2年間、対症療法を実施したが、改善せず、免疫グロブリン常駐療法にて症状軽快した。

2024年6月5日水曜日

頭蓋内内頸動脈狭窄の進行増悪に対するRNF213遺伝子多型の影響

Neurol Genet,2022,vol.8
Effect of the RNF213 p.R4810K Variant on the Progression of Intracranial Artery Stenosis

RNF213遺伝子のp.R4810K変異は東アジアのもやもや病の感受性遺伝子として20-50%に見られる。さらにこの遺伝子多型は欧米では非常にまれだが、東アジアでは人口の1-2%にみられる。この遺伝子多型の有無で頭蓋内狭窄症の15年での長期経過について検討した。
脳卒中発症後1ヶ月以上経過したもので、無症候性or症候性のICA狭窄のあるものの2つの前向き登録データを用いた。1.5Tまたは3TのMRIのMRAで9ヶ所の脳動脈の狭窄を2人の評価者が評価し、grade1(0-29%狭窄)、grade2(30-69%)、grade3(70-99%)、grade4(100%)とし、30-99%狭窄の者を対象とした。全患者の末梢血にて、RNF213 p.R4810Kジェノタイプを検討した。5年以上、MRIで観察し、経過中に死亡したり、重度の脳卒中で脱落したものは除外された。52例、中央値10.3年(5.3-14.8年)観察され、10回MRI実施。52例中、22例(42%、初回MRI時51歳、女性55%)がRNF213遺伝子変異であった。30例(50歳、女性43%)が非キャリアであった。観察期間中に頭蓋内狭窄が悪化した者はRNF213遺伝子変異キャリア群で64%、非キャリア群27%で、オッズ比4.81;1.47-15.77。さらに2段階以上悪化した者(著明増悪)は36%vs10%でオッズ比5.14;1.18-22.49であった。単変量Cox回帰分析では頭蓋内狭窄増悪と関連していたのは、脂質異常症HR,0.41、スタチン使用HR,0.43、RNF213遺伝子多型HR,3.31;1.38-7.90であった。年齢、性で調整した多変量Cox回帰分析では、頭蓋内狭窄の増悪に独立して関連しているのはスタチン使用、RNF213遺伝子多型であった。層別化した検討では、RNF213遺伝子多型で、スタチン使用によるリスク減少はHR,0.20;0.06-0.63と有意であったが、非キャリアではリスク減少に有意ではなかったHR,0.65:0.16-2.63。