2024年12月25日水曜日

ガバペンチノイドと大腿骨頸部骨折リスク

JAMA Network OPEN,2024,vol.7,no.11
Gabapentinoids and Risk of Hip Fracture

ガバペンチノイドは脳血液関門を通過し、神経伝達物質の遊離を阻害し、その結果、眠気、ふらつき、歩行バランス障害などの副作用を起こす。豪のビクトリア州の4つのデータを用いて2013年-2018年のの大腿骨頸部骨折のコホート研究として検討。ガバペンチノイドの処方が骨折前の60日間(インデックス期間)だった群と121-180日前(参照期間)だった群を比較して、対象薬のオッズ比を推定した。28293人が初回の大腿骨頸部骨折を受傷し、3190人がガバペンチノイドを処方されており93.9%がプレガバリンであった。2946人で解析を行った。59.5%が80歳以上、71.2%が女性。2644人でケース・クロスオーバー解析を行い402人はインデックス期間のみ、205人は参照期間のみでガバペンチノイドを内服しており、骨折のオッズ比は1.96(1.66-2.32)であった。2644人とマッチする将来対照群12920人を選んだ、ケース・ケース・タイムコントロール解析ではオッズ比は1.34(1.11-1.61)、他の薬剤を調整を行ってもオッズ比は1.30(1.07-1.57)と有意に高かった。

2024年12月18日水曜日

手首型加速度計を用いた週末運動活動と心血管疾患の発生

JAMA,2023,vol.330,no.3
Accelerometer-Derived Weekend Warrior Physical Activity and Incident Cardiovascular Disease

WHOやAHAガイドラインでは中等度以上の運動(MVPA)を週に150分以上することを推奨しているが、どのような運動パターンがいいのかは不明である。また過去の研究では運動量が自己申告であったり、サンプルサイズが小さいなどの限界もある。UKバイオバンクに登録された50万人のうち、10万人に手首装着型の3次元加速度計を1週間つけてもらい、日々の運動量、運動パターンを算出した。週の運動量が150分以上でその50%以上を1-2日に集中して運動する群を週末強化運動群(WW群)、週の運動量が150分未満の群を非活動群、運動量が150分以上でWW群でないものを通常活動群とした。89573人のデータを解析し、6.3年観察した。WW群は42.2%(62.2歳、女性51.0%)通常活動群24.0%(61.2歳、女性51.1%)、非活動群33.7%(63.3歳、女性66.8%)。降圧剤内服は15.3%、13.5%、22.8%。BMI>30は14.8%、13.4%、29.4%であった。主要評価項目のAF、MI、HF、脳卒中ではそれぞれ非活動群に比して、AFでハザード比0.78、0.81、MIで0.73、0.65。HFで0.62、0.64。脳卒中で0.79、0.83でいずれも通常活動群と同様に週末運動でもリスクを減らしていた。週の運動量が403分以上ではMI、脳卒中でWW群での非活動群に対する優越性は消失していた。筋骨格系のインシデントも、WW群、通常活動群ともにリスクは低下していた。

2024年12月11日水曜日

菌血症における抗菌薬治療、7日間vs14日間

NEJM,2024
Antibiotic Treatment for 7 versus 14 Days in Patients with Boodstream Infections

BALANCE研究、多施設、オープンラベル、ランダム化前向き試験。7カ国(カナダ、豪、NZなど)74病院で実施。対象は血培陽性者。免疫不全状態、人工弁、血管内グラフト、心内膜炎、骨髄炎、感染性関節炎、ドレナージ未の膿瘍、感染デバイス非除去例は除外。コンタミが考えられる菌、黄ブ菌は除外。主要評価項目は90日後の全死亡。3608人がランダム化され、抗菌薬治療7日間群1814人(70歳、男53.7%)、14日間群1794人(70歳、男52.8%)。SOFA中央値:4。ICU入室:55.0%。DM:31.8%。感染源;尿路42.2%。腹腔内・胆管系18.8%。肺13.0%。カテーテル感染6.3%。皮膚・軟部組織5.2%。血培陽性菌;大腸菌43.8%、クレブシエラ15.3%、エンテロコッカス6.9%、CNS4.8%、緑膿菌4.7%。90日までの死亡は14.5%vs16.1%で有意差はなく、非劣性が示された。ITT解析だけでなく、パープロトコル解析、7日以上生存の修正ITT解析でも同様。菌血症再燃2.6%vs2.2%で有意差なし。
入院を要する菌血症に対する7日間の抗菌薬治療は14日間治療に対して非劣性であった。

2024年12月4日水曜日

COVID-19 mRNAワクチン接種、SARS-CoV-2感染、従来の病因に起因する心筋炎患者の長期予後

JAMA,2024,vol.332,no.16
Long-Term Prognosis of Patients With Myocarditis Attributed to COVID19mRNA Vaccination, SARS-CoV-2 Infection, or Conventional Etiologies

フランス国民COVID19ワクチンデータベース(VAC-SI)、新型コロナ診断データベース(SI-DEP)、国民健康データシステム(SNDS)のデータを用いて、2020年12月から2022年6月の間にフランスで心筋炎で入院した12歳から49歳までの個人がすべて特定した。4635人が心筋炎で入院し、そのうち558人がワクチン後心筋炎、298人がCOVID-19後心筋炎、3779人が従来の心筋炎だった。ワクチン後心筋炎の患者は、COVID-19後心筋炎や従来の心筋炎の患者よりも若く(それぞれ平均25.9、31.0、28.3歳)、男性が多かった(それぞれ84%、67%、79%)。ワクチン接種後心筋炎の患者は、従来の心筋炎の患者よりも複合臨床転帰(心筋炎・心膜炎での再入院+心血管イベント+全死亡)の標準化発生率が低かった(32/558 vs 497/3779イベント、ハザード比、0.55;0.36-0.86)のに対し、COVID-19後心筋炎の個人では同様の結果であった(36/298イベント、ハザード比;1.04、 0.70-1.52)。

2024年11月27日水曜日

コントロール不良の糖尿病での膵癌の検出におけるCA19-9のカットオフ値

Endocrine J,2023,vol.70,no.11
Proposed carobhydrate 19-9(CA19-9) cut-off values for the detection of pancreatic cancer in patients with poorly controlled diabetes : a real world study

CA19-9の非DMでのカットオフ値は37U/mLとされているが、CA19-9の値はHbA1cに関連するとされている。コントロール不良のDMでのCA19-9のカットオフ値は高いと仮定し、検討した。後向きコホート研究。2015年~2018年の19-92歳の入院DM患者を対象とした。平均HbA1c:10.0%、膵癌20例、IPMN55例、非膵癌非IPMN(NC群)985例となった。膵癌群は、IPMN・NC群に比して有意にCA19-9値が高く、IPMN群とNC群では差がなかった。ROC解析で、膵癌をIPMN、NCから検出するのに感度、特異度が最も高いカットオフ値は98.4U/mLで、このカットオフ値では膵癌に対して感度70.0%、特異度96.5%、AUCは0.81であった。

2024年11月20日水曜日

ESBL産生性大腸菌による侵襲性尿路感染症に対するCMZvsMEPM

Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2023,vol.67,no.10
Effectiveness cefmetazole versus meropenem for invasive urinary tract infections caused by extended-spectrum β-lactamase-producing Escheihia coli

第3世代セファロスポリン耐性の大腸菌は36.6%とされる。ESBL産生はその主要なメカニズムであり、カルバペネムはその治療の第1選択ではあるが、その使用は菌の選択圧を増加させ、カルバペネムの節約が求められる。その候補としてTAZ/PIPCは最近のRCTでMEPMに対する非劣性を示せなかった。CMZはESBLによる加水分解に耐性があり、カルバペネム節約の候補の一つである。日本の10施設で前向き観察研究を行った。ESBL産生製大腸菌(ESBLEC)を尿もしくは血液から検出し、尿路感染以外に感染源のないものを対象とした。CMZ群81例、MEPM群46例で評価。CMZ群は高齢で、要介護状態、施設・長期療養病院入所者が多く、MEPM群はDMが多く、CRP、WBC高値が多かった。臨床効果、14日死亡、30日死亡、院内死亡はCMZ、MEPMで、96.1%vs90.9%、0%vs2.3%、0%vs12.5%、2.6%vs13.3%。プロペンシティスコアで調整すると、効果等は両群で差なく、30日死亡のみCMZが少なかった。薬剤動態の検討ではCCr>50でCMZ1g8時間毎、CCr30-50で1g12時間毎で、TAM>50%が維持されていた。ESBLECのCTX-MサブタイプはCTX-M27が47.6%(世界的な流行はCTX-M15)、bla OXA-1は11.3%で、日本のESBLECは独自の株となっていた。

2024年11月13日水曜日

AFを伴う急性虚血性脳卒中での抗凝固療法開始の最適な時期、多施設無作為化研究、OPTIMAS研究

Lancet,2024,vol.404
Optimal timing of anticoagulation after acute ischaemic stroke with atrial fibrillation (OPTIMAS) : a multicentre, blinded-endpoint, phase 4, randomised controlled trial

英国の100施設で実施。AFを伴う急性虚血性脳卒中に対して、4日以内にDOACを開始する早期群、7-14日に開始する遅延群に、脳卒中重症度を層別化して無作為化。主要評価項目は90日以内の脳梗塞再発+症候性頭蓋内出血+全身性塞栓症。2019年7月~2024年1月に登録し、3621例(78.5±9.9歳、男性54.7%、白人93.%、東・東南アジア人1.1%、DOAC内服32.2%、抗血小板剤11.2%、経静脈的血栓溶解療法22.0%、血管内治療7.3%、CKD15.0%)で無作為化。入院時のNIHSS中央値5、無作為化時中央値4、無作為化時NIHSS0-4:57.5%、5-10:27.9%、11-15:7.8%、16-21:4.9%、>21:1.9%。開始されたDOACはアピキサバン62.1%、エドキサバン28.9%他。主要評価項目は3.3%vs3.3%で差を認めず。脳梗塞再発:2.4%vs2.3%、症候性頭蓋内出血0.6%vs0.7%、全死亡8.8%vs8.9%で差を認めず、DOACの再開を遅延しても優越性を示せなかった。

2024年11月6日水曜日

感染性胸部大動脈瘤(MTAA)

Cureus,2022,vol.14,no.11
Mycotic Thoracic Aortic Aneurysm : Epidemiology, Pathophysiology, Diagnosis, and Management

MTAAは感染性大動脈瘤の30%でアテローム硬化性病変に起因。大動脈内膜は感染症に弱く、特にチフス菌、サルモネラ菌に弱い。免疫低下状態(糖尿病、アルコール症、ステロイド治療、化学療法、肝硬変、透析治療)ではMTAA起こしやすい。細菌が主で、まれに真菌で、ウイルス性のものの報告例はない。細菌学的にはブ菌、連鎖球菌、サルモネラが多く、サルモネラはセログループB、D、Cが多い。部位は下行Aoが75.7%、弓部23.6%、上行Ao0.7%。症状は発熱75%、背部痛60%、腹痛20%、悪寒16%。血培陽性24%。治療が外科的治療が主。院内死亡は高く、75-100%とされる。術前の抗菌薬治療は死亡のオッズ比を0.2に低下させ、術後の抗菌薬治療は死亡のハザード比を0.36にしていた。2007年以降は胸部大動脈ステントグラフト内挿術TEVARが施行されるようになり、30-90日の死亡率がTEVAR15%、開胸術7-20%と報告された。TEVAR後の感染再燃は2年後で81.2%が認めなかったと報告され、TEVAR後エンドリークは18.5%と報告された。

2024年10月30日水曜日

頭部外傷における輸血の制限なし、制限ありストラテジー

NEJM,2024,vol.391,no.8
Liberal or Restrictive Transfusion Strategy in Patients with Traumatic Brain Injury

頭部外傷(TBI)で重症例では貧血が脳組織へ影響し、転帰不良の可能性がある。重症患者でのHb値での維持の死亡へのベネフィットは証明されていない。しかし、これらの重症例で、神経学的転帰については示されておらず、PROBE研究として検討した。GCS≦12、Hb≦10の成人TBIで、Hb≦10、Hb≦7で輸血。主要評価項目は6ヶ月後のグラスゴー転帰スケール(GOS-E)、二次評価項目は6ヶ月後のFIM等。742例が登録され、制限なし群369例(48.9歳、女性24.1%、自動車事故15.7%、二輪事故20.3%、歩行中の自動車事故10.6%、暴行4.1%、頭蓋外外傷の合併64.5%)、制限あり群367例。Hb値13.3vs13.1、無作為化時のHb値9.1vs9.1。無作為化までの時間55時間。6ヶ月後のGOS-Eで転帰不良群は制限なしvsありで、68.4%vs73.5%で有意差なし。6ヶ月後の死亡で26.8%vs26.3%、FIMで119vs115で有意差を認めず。

2024年10月23日水曜日

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を識別するのに有用な指標

j of gastroenterology and hepatology,2024
Usefulness of health checkup-based indices in identifying metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease

岐阜大学の検診を受けた627例(46歳)でALT、FLI(fatty liver index)、HIS(hepatic steatosis index)等を検討した。アルコール男性30g、女性20g以上は除外。全例、超音波検査実施。MASLDと診断されたものは177例(28%)。ROC解析を行い、ALTのAUCは0.79。ALTのカットオフ値は最適、ルールアウト、ルールインで、21、13、29であった。MASLDの拾い上げに際してはALT>30が適していた。

2024年10月16日水曜日

パーキンソン病への淡蒼球への集束超音波による熱凝固治療

NEJM,2024,vol.388,no.8
Trial of Globus Pallidus Focused Ultrasound Ablation in Parkinson's Disease

PDに対する淡蒼球内節(GPi)への収束超音波治療(FUSA)では小規模のオープンラベルの試験で、ジスキネジアを含む運動障害に対して、高周波熱凝固での淡蒼球破壊術と同様の成績と報告された。PDでのGPiへのFUSAの安全性、有効性をランダム化試験にて検討した。対象はlevodopaでUPDRSⅢが30%以上改善するPDで、UPDRSⅢが20点以上で、UPDRSⅣで2点以上のジスキネジア又はUPDRSⅣで2点以上の症状動揺とし、Hoehn-Yahrスケール3以上は除外、MMSE24点以下も除外。主要評価項目は3か月後のUPDRSⅢ、UDysRS(ジスキネジアの標準スケール)のどちらかが3点以上改善した割合。二次評価項目はUPDRSのⅣ、Ⅲ、Ⅱのベースラインからの変化。166人が登録、94人が無作為化され、FUSA群69例(64.2歳、女性37%)、sham群25例(63.3歳、女性42%)でlevodopa投与量は1051㎎、1044㎎/日。3か月後の主要評価項目で改善は69%vs32%で有意差を認め、UPDRSⅣのベースラインからの改善は5.1点vs0.3点(p<0.001)、Ⅲで6.0点vs1.5点(p=0.04)、Ⅱで2.8点vs0.1点(p=0.06)であった。sham群25例中20例が3か月後、FUSAへオープンラベルで実施。FUSA群では12か月後で70%に反応を認めた。FUSA群で3か月後で反応のあった45例中9例は12か月後の時点で反応が消失していた。有害事象として、3ヶ月間に構音障害、歩行障害、味覚障害を各2例ずつ認め、構音障害1例は12か月の時点でも残存。術後1週の時点で非致死性の肺塞栓例があり、重度有害事象として登録された。

2024年10月9日水曜日

重症低酸素血症における24時間または15時間酸素療法の長期経過

NEJM,2024,vol.391,no.11
Long-Trem Oxgen Therapy for 24 or 15 Hours per Day in Severe Hypoxemia

酸素療法を24時間または15時間施行する場合の有用性をランダム化試験、REDOX研究で検討した。スウェーデンの全国患者登録Swedevoxのデータを用いて、18歳以上で、PaO2<55またはSpO2<88またはPaO2<60で心不全症状を有するかHt>54のものを登録し同意を得てランダム化した。15h群、24h群に割り付けし、酸素流量はPa2>60またはSpO2 >90で調整した。主要評価項目は生存時間解析での1年以内の入院または全死亡。2018-2022年で1693人でスクリーニングされ、241人がランダム化され、24h群117例(76.4±7.3歳、男性36.8%)、15h群124例(75.0±7.5歳、46.0%)。COPDが68.4%、74.2%、肺線維症17.1%、11.3%であった。1年以内の入院・死亡は124.7/100人・年vs124.5で差は認めなかった。ハザード比で0.99(0.72-1.36)。二次評価項目の1年以内の全死亡は31.6%vs27.4%、HR1.26(0.79-2.01)。健康指標のCATスコア、QOLの指標であるEQ-5D VASスコアでも差を認めなかった。

2024年10月2日水曜日

蕁麻疹と癌のリスク:デンマーク国民コホート研究より

Br J Delmatol,2024
Urticaria and the risk of a cancer : a Danish population-based cohort study

蕁麻疹が不顕性癌と関連しているとする報告がある。しかし、蕁麻疹と癌の疫学的な関連を調べた研究は2本のみで、スウェーデンの研究は関連がないとされ、台湾の研究では慢性蕁麻疹では癌のリスクが2倍と報告された。
人口580万人のデンマークでは税金によって運営されるヘルスケアに自由にアクセスできる。今回の研究は3つ(デンマーク市民登録システムCRS、デンマーク全国患者登録DNPR、デンマーク癌登録DCR)のデータベースを用いた。蕁麻疹についてはDNPRで1980年~2022年で、一次・二次病院ER、入院患者で蕁麻疹と診断されたもの。87507人が登録され、50歳以上22%、58.1%が女性。これらを中央値10.1年フォローした。全癌リスクは0.7%。標準化発生比SIRは1.09(1.06-1.11)。蕁麻疹後、最初の1年間で癌と診断されたものは588人で、SIRは1.49(1.38-1.62)。最初の1年間では、それぞれの癌ではホジキン病でSIR;5.35(2.56-9.85)、非ホジキン型リンパ腫で2.91、リンパ性白血病で2.46,多発骨髄腫2.53、肺癌1.95等であった。

2024年8月29日木曜日

動脈の硬さ(動脈スティッフネス)は脳卒中の既往のない人で、血圧とは関連なく脳小血管病CSVDに関連する

Stroke,2023,vol.54
Arteial Stiffness Is Associated With Small Vessel Disease Irrespective of Blood Pressure in Stroke-Free Individuals

沖縄健康増進基金の健康チェックで脳MRI実施したもの8178人のうち、baPWVを測定し、ABI≦0.95、脳卒中歴のあるものを除外した1894人(57±13歳、女性41%)で、後方視的に検討した。MRIで深部白質病変WMH、微小出血MBs、ラクナ梗塞、PVSの拡大のあるものをCSVDとした。baPWVは14.63m/s、BPは120/80をカットオフ値に設定し、baPWVとBPで4群に分割した。CSVDは38%に見られたが、低BP+高baPWVで56%、高BP+高baPWVで55%、高BP+低baPWVで24%、低BP+低baPWVで22%でPWVの高い群でCSVDが有意に多く、低BP+低baPWVに対して、高BP+高baPWVではCSVDのオッズ比は1.86(1.39-2.49)、低BP+高baPWVでオッズ比1.63(1.09-2.43)であった。

2024年8月22日木曜日

未分画ヘパリン(UFH)は成人敗血症を改善する メタ解析

BMC Anesthesiology,2022,vol.22,no.28
Unfractionated heparin improves the clinical efficacy in adult sepsis patients : a systematic review and meta-analysis

日本の敗血症関連のDICの治療ガイドラインではヘパリンの使用が標準的で、またCOVID19関連での血栓塞栓症予防にヘパリン使用がWHOから推奨されているが、敗血症でのヘパリン使用は未だ議論がある。RCTでのメタ解析を実施。敗血症、敗血症性ショック、敗血症関連のDICで、低用量ヘパリン。主要評価項目は28日時点での死亡率。2326文献を精査、15論文で全文精査。最終15論文(英語4、中国語11)、2617人のデータでメタ解析。UFH群は対照群に比して28日死亡を有意に減らした(RR:0.82;0.72-0.94)。特にAPACHE2スコア>15で減らした(RR:0.83;0.72-0.96)。またUFHは多臓器不全をRR:0.61;0.45-0.84、ICU入室期間を-4.94(-6.89~-2.99)減らした。出血事象は差がなかった(RR:1.10;0.54-2.23)。

2024年8月14日水曜日

2型糖尿病に伴う慢性腎障害でのセマグルチドの効果

NEJM,2024,vol.391,no.2
Effect of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes

セマグルチド週1回皮下注投与での腎不全進行予防をFLOW研究として実施。二重盲検無作為化プラセボ対照試験。28ヶ国387施設。対象はT2DM、HbA1c≦10%で、RAS阻害薬による十分な治療を受けており、eGFR:25-75のCKDが合併するもの。SGLT阻害薬の有無は問わないが、その有無は無作為化の際に層別化する。セマグルチドは0.25㎎/wから4w毎増量し、1.0㎎/wで維持。主要評価項目は透析導入、腎移植、eGFRの15以上の低下または50%以上の低下、または腎関連・心血管死。3533人(66.6歳、女性30.3%、白人65.8%、アジア系23.9%、HbA1c:7.8±1.3、BMI:32.0、SGLT2併用15.6%、インスリン併用61.4%)が無作為化され、セマグルチド群1767人、対照群1766人に割付。3.4年観察。中断率26%。セマグルチド群のアドヒアランス89%。主要評価項目の腎イベントは5.8/100人・年vs7.5でHR0.76(0.66-0.88)で有意に良好であった。副次評価項目のeGFR低下は-2.19vs-3.36/年、心血管イベントHR0.82(0.68-0.98)、全死亡HR0.80(0.67-0.95)で有意に良好。体重減少は対照群に対して104週の時点で4.1㎏減量。(サブグループ解析では、腎イベントでアジア系では有意差なし、SGLT2阻害薬併用群でも有意差なし)

2024年8月7日水曜日

日本の大規模データベースにおいて、ランソプラゾールとセフトリアキソンの併用は心室性不整脈のリスク増加と関連する

J of Infection,2024,vol.89
Concomitant use of lansoprazole and ceftriaxone is associated with an increased risk of ventricular arrhythmias and cardiac arrest in a large Japanese hospital database

PPIおよびセフトリアキソンは、心筋細胞でのhERGチャンネルをブロックし、QT延長をきたす可能性が指摘されている。全米退役者コホート研究では、PPIによりQT延長のリスクが20-40%増加するとされている。JMDCは日本の600以上の病院の入院、外来患者1500万人以上のデータベースで、そのデータで後方視的コホート研究を行った。
2014-2022年の1547万人のデータで、CTRXおよびABPC/SBTとPPIを併用した患者18万人で、30日以内の心室性不整脈や心停止例などを除外し、CTRX併用例55437人、ABPC/SBT例49864人で、主要評価項目は心室性不整脈、心停止。対象の平均年齢81歳、心室性不整脈・心停止はCTRXで187人0.34%、ABPC/SBTで82人0.16%で、Fine-Gray競合リスク回帰分析にて、ABPC/SBT+ランソプラゾールに対して、CTRX+ランソプラゾールは、HR2.92(1.99-4.29)で有意にリスクが増大していた。また、CTRX+ランソプラゾール静注ではHR:4.57(1.24-16.80)、CTRX+オメプラゾール静注でHR:4.47(1.44-13.90)でリスク増加。

2024年7月31日水曜日

急速に認知症が進行した78歳女性

NEJM,2024,vol.391,no.4
Case Records of the MGH
Case 23-2024: A 78-Year-Old Woman with Rapidly Progressive Dementia

3年前より軽度の記憶の問題が指摘。5ヶ月前、姉の死後、感情の平板化あり。4ヶ月前、言葉が急に出なくなる事があり、他院入院。MRIで右前頭葉にDWIで高信号スポット、両側前角周囲深部白質にFLAIRで虚血性変化。MRA正常。アスピリン開始。その後も、物忘れ増悪あり。
他の病歴としては、2型DM、17年前乳癌で乳腺腫瘍切除術、化学放射線療法歴。14年前、ステージ1の肺腺癌手術歴。13ヶ月前に右上肺に7mm大結節。
意識清明、発話は不注意で、関係のないことを話し、流暢。筋力、感覚、深部腱反射、小脳機能正常。造影MRIでは両側の側頭葉内側にT2WI、FLAIRで新たな高信号域あり。両側半球に微小出血あり。髄液検査、蛋白47、オリゴクローナルバンド陽性、HSV核酸テスト陰性、脳波では両側の側頭葉にてんかん波、PLEDs出現あり。

鑑別診断
脳アミロイドアンギオパチー関連炎症
PACNS
自己免疫性脳炎(傍腫瘍神経症候群含む)
血管内リンパ腫
HSV脳炎
次のステップ
自己抗体の検索(抗Hu、AMPA、GABA、GAD)
CAA関連炎症を疑う場合、脳生検

造影CTにて、縦隔、左肺門、肺門周囲LN腫脹。PET-CTで、同部に転移性リンパ節腫脹を示唆する所見と左下肺に肺癌を示唆する所見。気管支FSにて針生検実施し、免疫組織化学染色検査にて、小細胞癌。血清、髄液にて、ANNA-1(抗Hu抗体)陽性。

治療
3日間のグルココルチコイド静注療法、シクロフォスファミド治療。脳波所見よりラコサミド。

2024年7月24日水曜日

関節炎、皮疹をきたした46歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.23
Case Records of the MGH
Case 19-2024: A 46-Year-Old Man with Arthritis and Rash

1週間前にたちくらみがあり、4日後、再び、たちくらみがあり、ER受診。体温36.3度、BP147/80,HR109、手・足関節に腫脹あり。赤沈104mm。CRP:0.63、造影CT異常なし。リウマチ科外来紹介。14週前に手関節腫脹、増悪。両側の早朝のこわばりあり。さらに胸部、背部、下肢に皮疹出現。皮疹は夜間の掻痒を伴う、手掌には出現せず。脱毛、食思不振があり、8kg体重減少。2週前には鼻出血あり。違法薬物の使用なし。男性との性交渉があり、5ヶ月前から新しいパートナーと性交渉がある。祖母が乾癬の家族歴。
頭皮には多発性の小さな脱毛部位があり、外鼻孔の遠位に痂皮あり。左の口交連に潰瘍あり。頚部LN腫脹なし。手・足関節は腫脹、熱感あり。いくつかのMP関節腫脹あり。体幹の皮疹は色素沈着のある斑状の皮疹で、体幹の皮疹の一部は落屑あり。

鑑別診断
尋常性乾癬
ANCA関連血管炎、IgA血管炎、ベーチェット病、クリオグロブリン血症などの全身性血管炎
SLE、サルコイドーシス、VEXAS症候群
結核反応性関節炎(Poncet病)
関節炎を起こすアルファウイルス疾患(チクングニアウイルス(カリブ海地域)、マヤロウイルス(南米)
パルボウイルスB19
梅毒
→TP抗体陽性、RPRテスト256倍

梅毒に対しては非経口投与のペニシリンが推奨。2期梅毒にはペニシリンGベンザチン筋注が推奨。2期梅毒の患者の90日以内に性交渉のあるパートナーにはエンピリカル治療要。梅毒患者では、HIV、クラミジア、淋菌の評価が必要。

2024年7月17日水曜日

代謝関連脂肪肝疾患(旧・非アルコール性脂肪肝疾患)、肝線維化に対するSurvodutideのフェーズ2試験

NEJM,2024
A Phase 2 Randomized Trial of Survodutide in MASH and Fibrosis

MASHでは肥満を伴う事が多く、肥満に対してGLP1作動薬は効果が示されているが、肝細胞にはGLP1受容体が存在しない。グルカゴンとGLP1の両方への作動薬は肝でのエネルギー消費、脂肪分解、肝細胞内脂肪の移動などの肝への直接作用が期待できる。25ヵ国、155施設で二重盲検試験として、スポンサーのベーリンガーインゲルハイム社主導で実施。肝生検でNAFLD活動性スコア(NAS)が4点以上、肝線維化F1-F3の18-80歳のMASHを対象とした。主要評価項目は48週後の肝生検でのNASの2点以上の改善。2次評価項目はMRI-PDFFでの肝内の脂肪量の30%以上の減少や、ALT、ASTの改善等。
295例(対照群53.0歳、女性59%、BMI:35.49、T2DM合併39%)が無作為化され、281例95.9%が治療を完遂し、219例が治療終了後の肝生検を受けた(治療後の肝生検非実施例は治療反応なしと判定)。主要評価項目の48週後の肝線維化の悪化のないNAS改善はSurvodutide2.4mg群、4.8mg群、6.0mg群、対照群で47%、62%、43%、14%で有意に改善した。2次評価項目では、MRI-PDFFでの肝脂肪量30%以上の減少は、63%、67%、57%、14%、ALT減少は6.0mg群vs対照群で‐38.5vs-5.7、AST減少は‐32.2vs-2.4であった。

2024年7月10日水曜日

喘息と心血管疾患との関連

CHEST,2021,vol.159,no.4
The Relationship Between Athma and Cardiovascular Disease

フラミンガム・オフスプリング研究のデータを用いた。1979年-2014年に登録された17-77歳の3612例の後方視的人口ベースのコホート。15%533例が喘息と診断。25%897例が研究期間中にCVDを発症。喘息のCVD発症のリスクはハザード比1.40(1.17-1.68)であった。年齢、性、HDLコレストロール、総コレストロール、降圧剤使用、血圧、糖尿病、喫煙、肥満、教育で調整したハザード比でも1.28(1.07-1.54)であった。

2024年7月3日水曜日

トキシックショック症候群(TSS)

Antibiotics,2024,vol.13
Toxic Shock Syndrome: A Literature Review

TSSは超抗原性外毒素の分泌→T細胞活性化→非特異的なポリクローナルなリンパ球活性化→大規模な炎症性サイトカインの分泌→毛細血管透過性亢進、血圧低下、臓器不全、凝固能亢進。
黄ブ菌によるTSS:発熱、びまん性紅斑、発症から1-2週後に特に手掌・足底の落屑、低血圧、臓器障害をきたす。人口10万人あたり0.03-0.07人。
月経関連の黄ブ菌TSS:米国の女性262人のコホート研究では22.9%に腟内に黄ブ菌陽性で、4.2%にTSST-1産生黄ブ菌であったとされる。月経関連TSSでは全例血培陰性であった。仏の102例の月経関連TSSの報告では全例がタンポンを使用し、頻脈、高熱を認め、87%に皮疹、50%に粘膜病変、消化器症状、頭痛を認め、84%が昇圧剤、21%で呼吸器管理が必要であった。
非月経関連の黄ブ菌TSS:術後が最も多い。一般手術の他、産後、中絶後もある。術後4日目が最も多く、血培陽性50%。 
仏に月経関連黄ブ菌TSS102例ではMRSAはなかったが、英の180例(107例が非月経)では3.8%にMRSAを認め、米国の61例のTSSでも7%にMRSAを認めた。ヒトの鼻腔には20-80%でTSST-1産生黄ブ菌が定着しているとされる。カブールにおける健常人150人の鼻腔では68.4%にTSST-1産生のMRSAを検出したとする報告がある。
連鎖球菌によるTSS(STSS):化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes )の重症例の8-22%がSTSSに進行する。壊死性軟部組織感染症の40-50%がSTSSに進行する。血培は60-86%に陽性となる。皮膚損傷のない軽微な外傷、肺炎、子宮内避妊具、化膿性関節炎、熱傷、水痘、産後等もSTSSの原因となる。
STSSは50-69歳に多い。アルコール多飲、NSAIDs使用はリスクとされ、議論はあるが、NSAIDsは壊死性皮膚炎のリスクが3倍とされる。ノースヨークシャーの14例のSTSSでは低血圧100%、急性腎不全93%、肝不全57%、DIC64%、MOF43%で、71%が壊死性皮膚炎であった。
IVIGによるSTSSの治療:欧州の他施設研究では死亡率がIVIG群10%vs非IVIG群36%であったが、有意ではなかった。別のRTCではIVIGで死亡に対して有用性は示せず。
黄ブ菌TSSの死亡率5%、連鎖球菌TSSの死亡率14-64%。

2024年6月26日水曜日

人生で最も強い頭痛をきたした64歳女性

NEJM,2024,vol.390,no.22
Case Records of the MGH
Case 18-2024: A 64-Year-Old Woman with the Worst Headache of Her Life

その日の夕までは健康で、会合での会話中に話すために立った時に、突然、両側の前頭部の拍動性で、その瞬間に最大になる頭痛をきたした。嘔吐を伴わない嘔気あり。30分経っても改善せず、救急要請。
体温36.3度、血圧155/77、HR:77、SpO2:96%、視神経乳頭正常。筋力、感覚、小脳機能、深部腱反射異常なし。単純CTでは、上頭頂葉小葉にくも膜下出血を認めた。赤沈は8mm、CRP:2.7mg/L、トロポニンT:0.36ng/mL(正常<0.03)、心電図では1度AVB、びまん性にSTが数mm低下あり。

鑑別診断
雷鳴様頭痛:動脈瘤破裂によるSAH、RCVS(ERにおける雷鳴様頭痛の8%とする報告がある)、脳静脈洞血栓症、脳動脈解離、PRES
心電図変化、トロポニンT陽性→たこつぼ心筋症
診断:CTアンギオにて複数の動脈末梢で狭小化あり、RCVS
患者は疼痛管理を行い、第2入院病日に退院。しかし、その後も頭痛が持続し、脳MRIで脳梁に脳梗塞が新たに出現。

2024年6月19日水曜日

不随意運動、意識レベル低下の79歳男性

NEJM,2023,vol.389,no.15
Case Records of the MGH
Case 31-2023: A 79 Year-Old Man with Involuntary Movement and Unresponsiveness

9ヶ月前、左肩、左顔面の不随意運動。ビクッとする運動で意識の変容を伴わなず、1-2分で消失。その6ヶ月後には症状は月1回、5-6分持続する様になる。プライマリケア医では低Na血症(129)指摘。MRIでは造影される右中前頭回の小さな異常血管影、脳波ではてんかん波は認めないが、左側頭葉の徐波を認めた。2ヶ月前、てんかんクリニックで、LEV開始。発作時の動画では、舞踏アテトーゼ様であった。LEVを減量し、クロバザムへ変更。
今回、左上下肢の不随意運動が1時間持続した後、意識レベルの低下を認め、ERへ搬送。血性Na:125、CTAで右CCAからICAにかけて閉塞あり。左顔面麻痺あり。
鑑別診断
舞踏病様運動、アテトーゼ、バリスム、ジストニア
てんかん発作:今回の患者の不随意運動は定型的でなく、てんかんとしては非典型的ではないか。
低Na血症、不随意運動、てんかん:抗LGI-1抗体関連自己免疫性脳炎
機能性神経障害
Limb shaking TIA
診断、治療
Limb shaking TIA、緊急CEA

2024年6月12日水曜日

背部痛、下肢のこわばり、転倒をきたす30歳女性

NEJM,2024,vol.390,no.18
Case Records of the MGH
Case 14-2024: A 30 Year-Old Woman with Back Pain, Leg Stiffness  and Falls

3年前より、膝を曲げる時や、階段昇降時に背部痛を自覚。数カ月後には背部痛と下肢のこわばりが寛解、増悪するようになる。普段は普通に歩けたり、ランニングも可能であったが、時々、「ロックされた」様になって全く歩けない時もあり、転倒も経験した。2.5年前、リウマチ科受診。膝は他動的に屈曲困難であったが、気をそらす手技では屈曲可能であった。症状は改善せず。MRIではL4/5の椎間板の信号の軽度の低下のみで、筋弛緩薬が投与。
患者には閉所恐怖症、バセドウ病、血小板減少症の既往。妹に橋本病の病歴。
鑑別診断
強直性脊髄炎
ミオトニアをきたす疾患
ジストニアをきたす疾患
Stiff-Person症候群:脊髄、脳のGABA関連のα運動神経抑制の障害=過剰活動による症候。こわばり、疼痛を伴う筋スパズムが最初の症候で、典型的なタイプは傍脊柱筋や腹筋から始まり、進行すると下肢筋に及ぶ。突然の随意運動、理学的な接触、寒冷刺激、感情的刺激、驚愕刺激などが疼痛性筋スパズムを誘発する。35-40歳が好発年齢。50%に自己免疫性疾患の既往、30%に1型糖尿病の既往。ベンゾジアゼピン系薬剤の反応も診断的特徴。不安症、うつ病、広場恐怖症などの精神疾患の合併もよくみられる。
GAD65抗体が60-90%にみられる。
診断的検査
RIAによるGAD65抗体:169nmol/L(カットオフ値20以下)
もしGAD65抗体が陰性であれば、グリシン受容体、amphiphysin、dipeptidyl-peptidase-like protein-6に対する自己抗体の検査を推奨するつもりであった。他に傍脊柱筋の作動筋と拮抗筋の同時収縮の筋電図検査を推奨するつもりであった。
患者は2年間、対症療法を実施したが、改善せず、免疫グロブリン常駐療法にて症状軽快した。

2024年6月5日水曜日

頭蓋内内頸動脈狭窄の進行増悪に対するRNF213遺伝子多型の影響

Neurol Genet,2022,vol.8
Effect of the RNF213 p.R4810K Variant on the Progression of Intracranial Artery Stenosis

RNF213遺伝子のp.R4810K変異は東アジアのもやもや病の感受性遺伝子として20-50%に見られる。さらにこの遺伝子多型は欧米では非常にまれだが、東アジアでは人口の1-2%にみられる。この遺伝子多型の有無で頭蓋内狭窄症の15年での長期経過について検討した。
脳卒中発症後1ヶ月以上経過したもので、無症候性or症候性のICA狭窄のあるものの2つの前向き登録データを用いた。1.5Tまたは3TのMRIのMRAで9ヶ所の脳動脈の狭窄を2人の評価者が評価し、grade1(0-29%狭窄)、grade2(30-69%)、grade3(70-99%)、grade4(100%)とし、30-99%狭窄の者を対象とした。全患者の末梢血にて、RNF213 p.R4810Kジェノタイプを検討した。5年以上、MRIで観察し、経過中に死亡したり、重度の脳卒中で脱落したものは除外された。52例、中央値10.3年(5.3-14.8年)観察され、10回MRI実施。52例中、22例(42%、初回MRI時51歳、女性55%)がRNF213遺伝子変異であった。30例(50歳、女性43%)が非キャリアであった。観察期間中に頭蓋内狭窄が悪化した者はRNF213遺伝子変異キャリア群で64%、非キャリア群27%で、オッズ比4.81;1.47-15.77。さらに2段階以上悪化した者(著明増悪)は36%vs10%でオッズ比5.14;1.18-22.49であった。単変量Cox回帰分析では頭蓋内狭窄増悪と関連していたのは、脂質異常症HR,0.41、スタチン使用HR,0.43、RNF213遺伝子多型HR,3.31;1.38-7.90であった。年齢、性で調整した多変量Cox回帰分析では、頭蓋内狭窄の増悪に独立して関連しているのはスタチン使用、RNF213遺伝子多型であった。層別化した検討では、RNF213遺伝子多型で、スタチン使用によるリスク減少はHR,0.20;0.06-0.63と有意であったが、非キャリアではリスク減少に有意ではなかったHR,0.65:0.16-2.63。

2024年5月29日水曜日

気管支喘息における三剤単一吸入療法、総説、実臨床

Allergy,2022,vol.77
Single inhaler triple therapy(SITT) in asthma: Systemic review and practice implications

ICS/LABA吸入療法でもコントロール不能な気管支喘息患者において、長時間作用型抗ムスカリン作用薬(LAMA)は喘息の管理を改善する。近年、三剤単一吸入療法(SITT)がコントロール不良な喘息に用いられる様になっている。
TRIMAN研究はBDP/FF/GLYvsBDP/FF、TRIGGER研究はBPP/FF/GLYvsBPP/FF+Tiotの試験で、いずれも26週でのFEV1が高値で、12ヶ月間の急性増悪の頻度を減らした。IRIDIUM研究はMF/IND/GLY、1日1回vsMF/INDまたはFP/SLMの試験で26週のFEV1は著名に改善したが、ACQ7や急性増悪は有意差を認めず。

2024年5月22日水曜日

起立性低血圧、高血圧治療、心血管疾患との関連

JAMA,2023,vol.330,no.15
Orthostatic hypotension, Hypertension Treatment, and Cardiovascular Disease
-An Individual Participant Meta-Analysis-

成人高血圧患者の10%以上で起立性低血圧を有するとされ、降圧剤使用が関連するだけでなく、心血管疾患イベントや死亡に関連するとされる。近年、我々は9論文のメタ解析により、強化降圧治療と起立性低血圧は関連がないと報告したが、今回、起立性低血圧、立位低血圧が心血管疾患イベントや死亡と関連するかを検討した。MEDLINE、EMBASE、CENTRALのデータベースより500人以上、6ヶ月以上等で検索し9論文、29235人(69.0±10.9歳、女性48%、中央値4年観察)の個人データを用いた。起立性低血圧は座位から立位でSBP20以上、DBP10以上低下、立位低血圧は立位でSBP110以下、DBP60以下とした。ベースラインで9%に起立性低血圧、5%に立位低血圧を認めた。ベースラインで起立性低血圧のある者は有意に心血管疾患イベント・死亡リスクが高かった(HR,1.14;1.04-1.26)。立位低血圧でも同様(HR,1.39;1.24-1.57)であった。強化降圧治療群では起立性低血圧ありでHR,0.83;0.70-1.00、起立性低血圧なしでHR,0.81:0.76-0.86と心血管疾患イベント+死亡リスクを下げた。立位低血圧なしでは強化降圧治療はCVDイベント+死亡リスクをHR,0.80;0.75-0.85と有意に下げたが、立位低血圧ありではリスクを下げなかった、HR, 0.94;0.75-1.18。

2024年5月15日水曜日

意識障害(昏迷)、失語、頭部異常像を認めた58歳女性

NEJM,2024,vol.390,no.15
Case Records of the MGH
Case 12-2024: A 58-Year-Old Woman with Confusion, Aphasia, and Abnormal Head Imaging

16か月前までは健康。16ヶ月前、昏迷、失語。脳MRI、T2WI、FLAIRにて左側頭葉に異常信号。髄液検査にて蛋白上昇、細胞数正常。HSV-DNA陰性。血液、髄液の自己抗体パネルは陰性。血清免疫電気泳動検査正常。脳波は徐波化はあるが、てんかん性放電なし。自己免疫性脳炎の診断で、グルココルチコイド静注、経口PSL。昏迷、失語は改善。聴覚性の失語は残存。腹部CTにて骨盤内に5cm大の腫瘤を認め、腹腔鏡下に切除、病理は奇形腫。6か月前に昏迷が再燃し、左側頭葉の病変のサイズアップあり。ステロイド治療にてやや改善。3ヶ月前、昏迷再燃。右側頭葉、左後頭葉に新たな病変あり。
既往歴、2型糖尿病、高血圧、感音性難聴(45歳時診断)

鑑別診断
自己免疫性脳炎(不必要な免疫抑制治療を避けるためにも、他の疾患の除外は重要)
感染症:HSV、西ナイル熱、多発病変ではトキソプラズマ症
CNSリンパ腫
脱髄性疾患:PML(JCウイルス)
前医の血液検査で血清乳酸値12.4mmol/Lと著明高値
→ミトコンドリア脳筋症疑い(身長157㎝と低身長、難聴、糖尿病、繰り返す脳卒中様病変)
筋生検
最終診断:MELAS

2024年5月8日水曜日

心停止、心原性ショック、低酸素血症をきたした55歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.11
Case Records of the MGH
Case 8-2024: A 55-Year-Old Man with Cardiac Arrest, Cardiogenic Shock, and Hypoxemia

レストランで夕食を食べていた男性が意識を失い、第1発見者がAEDで除細動、CPR施行。4分後に救急隊がVF確認し除細動。アミオダロン、エピネフリン経静脈的投与。VT持続。ERに搬送され、心電図にて下壁誘導にST上昇型心筋梗塞所見。到着時、心拍数123、BP188/107。BMI:27.0。RCAに薬剤湧出性ステント導入。カングレロール、アミオダロン、バンコマイシン、セフェピム開始。経皮的LVAD(左室補助心臓)装着。ノルエピネフリン4μg/分、LVAD補助最大でもBP81/72。
SARS-CoV-2RNA陽性。侵襲的心拍出量モニタリングのデータでは、中心静脈血酸素飽和度56.6%、混合静脈血酸素飽和度76.8%、動脈血酸素飽和度93.0%。

鑑別診断
RCAにステント留置、経皮的LVADにも関わらず心原性ショック、低酸素血症増悪。
心係数(CI):1.7であれば、混合静脈血酸素飽和度は40%が予想。
肺動脈カテーテルが正しい位置にあるとして、急性心筋梗塞で予想より混合静脈血酸素飽和度が上昇するのは1)心外AVシャント、2)分布異常ショックを伴う心原性ショック、3)乳頭筋破裂・心室中隔破裂
診断
心エコー再検にて中隔下部に16mmの欠損、左右シャント。
最終診断
下壁梗塞に伴う心室中隔破裂、急性乳頭筋破裂

2024年4月24日水曜日

転倒、認知機能低下をきたした82歳、女性

NEJM,2024,vol.390,no.14
Case Records of the MGH
Case 11-2024: A 82-Year-Old Woman with Fall and Cognitive Decline

8か月前まではウォーキングクラブに参加する自立した女性。徐々に歩行速度低下、5ヵ月前には階段が上れなくなる。3か月前、転倒し、他の病院で尿路感染症、SIADH指摘。2週間前にも転倒し、他院にて脳MRIで脳室拡大が指摘。また尿便失禁をきたす。
今回、転倒を繰り返すため、受診。右手背等に触れると強い痛みがあり、そのために動かせない程。両側のMP関節、PIP関節の紅斑、腫脹、疼痛あり。入院4日目に神経伝導検査が施行、左脛骨神経と両側腓骨神経のCMAPが低下しており、左尺骨神経CMAPも軽度低下。伝導速度や遠位潜時は正常であった。筋電図は異常な自発放電等なし。ビタミンB6は正常。

鑑別診断
ミオパチーや脱髄疾患は否定的。症状や電気生理検査からは多発単神経炎。多発単神経炎の最も多い原因は自己免疫性血管炎。結節性多発動脈炎PN。ANCA関連血管炎(GPA、MPA、EGPA)。クリオグロブリン血症関連血管炎。
他の自己免疫性疾患での血管性ニューロパチー:SLE、RA、SjS、PSS、MCTD、炎症性筋炎。
診断的検査
血液検査ではRAが示唆。腓腹神経生検:リンパ球性の小中血管炎による血管性神経障害
最終診断
RA、RAに伴う血管炎による多発単神経炎

2024年4月17日水曜日

4例の重度麻痺に対する植込み型血管内電極によるブレイン・コンピュータ・インターフェイスの安全性評価

JAMA Neurol,2023,vol.80,no.3
Assessment of Safety of a Fully Implanted Endovascular Brain-Computer Interface for Severe Paralysis in 4 Patients
-The Stentrode With Thought-Controlles Digital Switch(SWITCH) Study-

内頚静脈から上矢状静脈洞に16の電極のあるデバイスを前中心回に留置。豪の王立メルボルン病院にて、2019~2021年に5例のALS、PLSの患者(平均61歳、全例白人男性)が登録され、1例は横静脈洞欠損のため除外。全身麻酔で実施、手術時間232分、被爆時間43分。12ヶ月の観察期間中、死亡や重大な有害事象なし。静脈洞血栓の発生なし。電極の位置移動なし。4例ともアイ・トラッキングを伴うPC使用は何回かの訓練で可能となり、文字入力は16.6文字/分。最終的に1例はアイ・トラッキングなしにYes-Noの入力が正答率97.4%で可能となる。全例、満足感、充足感を表明された。

2024年4月10日水曜日

体動困難の84歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.20
Case Records of the MGH
Case 9-2024: A 84-Year-Old Man with Fall

3週間前に一過性肉眼的血尿。1週間前に失語、右上肢しびれ(その2週前よりリバロキサパン開始)。他院に入院し、MRIでは微小血管虚血性変化を認めるのみで、TIAと診断。経胸心エコーではLVEF:60%、中等度MR、軽度AR。今回、浴室で倒れていたのが発見されER搬送。全身的な筋力低下、ふらつきあり。既往歴はAF、心不全、COPD、高血圧、抑うつ状態、前立腺がん。発熱なし、左肘屈側に紅斑あり。同部はエコーにて血流のない低エコー病変(1.7×0.5×1.3㎝)があるも、形成外科にて特に外科的処置を要しないとのコメント。尿培養でMSSA検出。また、第1入院病日の血培でグラム陽性球菌が4検体中1つから検出。体部造影CTでは、左副腎に結節影、胸部大動脈瘤あり。第3入院病日、突如、胸痛を訴え、動けない状態。 

鑑別診断
尿培養でMSSA検出されているが、尿道カテーテルがない場合、血行性の感染を考えるべき。
診断的検査
CTA再検にて仮性胸部大動脈瘤の拡大(19→30mm)あり。血培のグラム陽性球菌はMSSA。
最終診断:MSSAによる菌血症、感染性大動脈瘤
治療:
VCM中止しCEZに変更。胸部大動脈瘤に対しては、ステントグラフト挿入術。6週間の抗菌薬点滴後、長期の経口抗菌薬治療へ。

2024年4月3日水曜日

高齢AF患者におけるカテーテルアブレーションによる認知症リスク、死亡リスク

J Am Geriatr Soc,2023,vol.71
Catheter ablation and lower risk of incident dementia and mortality in older adults with atrial fibrillation

米国のヘルスネットワークのTriNetXの2022年9月のデータを用いて検討した。65歳以上のAF患者でカテーテルアブレーションを実施したAF患者44施設、20747人、対照群としてカテーテルアブレーション非実施のAF患者58施設76万7千人から、プロペンシティスコアをマッチさせた20747人を抽出し、比較検討した。年齢は68.4歳、男性59.1%。経口抗凝固薬16.6%。5年間の観察期間で、新たな認知症発症はCA群253人、1.2%、非CA群439人、2.1%で、HR 0.52(0.19-0.61)で有意に認知症発症リスクを減らしていた。ADでHR 0.30(0.19-0.45)、脳血管性認知症でHR 0.54(0.35-0.82)であった。サブ解析ではほぼ全てのサブ因子でCA群で認知症リスクを減らしていたが、抗凝固療法なしでは有意差を認めず。総死亡についてはCA群で2447人11.8%vs3509人16.9%、HR 0.58(0.55-0.61)で有意に総死亡を減らしていた。

2024年3月13日水曜日

発熱、咳の17歳女性

NEJM,2022,vol.387,no.2
Case Records of the MGH
Case 21-2022: A 17-Year-Old Girl with Fever and Cough

Covid-19パンデミック中の発熱、咳。倦怠感、眼瞼結膜発赤、咽頭痛、鼻閉、鼻汁、筋痛。SARS-CoV-2のPCR陰性。BMI:35.9.クレアチニン:2.0、Hb:6.7g/dL、WBC:11890、PLT:52.6万、尿RBC:100/HPF、尿赤血球円柱+。肺CTで斑状のすりガラス影が両側末梢優位に多発。CTRX、アジスロマイシンで治療開始。

鑑別診断:貧血の原因、ウイルス性疾患、多系統炎症性症候群、SLE、GPA
腎生検:球状、分節状の壊死性病変、フィブリン沈着糸球体、細胞性半月→壊死性半月体性糸球体腎炎
血液検査:PR3-ANCA強陽性(21504U)
診断:GPA(granulomatosis with polyangitis)
高用量グルココルチコイド、シクロフォスファミド、リツキシマブで治療開始、しかしクレアチニン4.38に悪化。血漿交換+エクリズマブにて血尿、クレアチニン、C3改善。14か月後にはクレアチニン正常化。

2024年3月6日水曜日

倦怠感、寝汗の21歳男性

NEJM,2024,vol.390,no.8
Case Records of the MGH
Case 6-2024: A 21-Year-Old Man with Faigue and Night Sweats

4週前まで健康。4週前、嘔気、嘔吐。その後、倦怠感増悪。その後、徐々に動けなくなり、ER受診。汎血球減少、ビリルビン上昇、LDH>2500。ダニ刺傷既往なし。血尿なし。違法薬物使用なし。アルコール歴なし。検査データ:Hb値5.7、WBC:2110、PLT:14.1、MCV:101.8、網状赤血球3.8%、LDH:2947、総ビリルビン:1.9、直接ビリルビン:0.2。直接クームス陰性。

鑑別診断:先天性:GATA2欠損、ファンコニー貧血、ウィスコット・アルドリッチ症候群
感染症:CMV、EBV、パルボウイルス、アデノウイルス、バベシア症
リンパ腫などの悪性疾患
自己免疫疾患:免疫介在性貧血、PNH
栄養障害:B12欠乏、葉酸欠乏
末梢血白血球過分葉あり。B12<150pg/mL、葉酸:4.9ng/mL、抗胃壁細胞抗体陽性、抗内因子抗体陽性。B12筋注にて改善。

2024年2月28日水曜日

心不全に対する心臓再同期‐除細動療法の長期転帰

NEJM,2024,vol.390,no.3
Long-Term Outcome of Resynchronization-Defibrillation for Heart Failure

RAFT研究では植込み型除細動器治療より心臓再同期‐除細動治療の方が5年生存で成績が良好であったが、今回、さらなる長期成績を検討した。NYHAクラスⅡ、ⅢでLVEF<30%、QR幅120msec以上の心不全の患者をICD単体またがCRT-D群に無作為に割付。主要評価項目は全死亡、二次評価項目は全死亡、心移植、左心補助デバイス使用の複合。1798例が登録され、1050例で長期予後検討。中央値7.7年(3.9-12.8年)、生存患者は中央値13.9年(12.8-15.7年)フォロー。ICD群530例、66.8歳、LVEF22.1%、PCIあり24.2%、CABGあり36.6%、CRT-D群520例、66.3歳。全死亡はICD群76.4%vsCRT-D群71.2%、加速係数0.80(0.69-0.92;p=0.002)。二次評価項目の複合転帰も77.7%vs75.4%。

2024年2月14日水曜日

同種幹細胞による急性期脳梗塞の細胞治療、TRESURE研究フェーズ2/3

JAMA Neurol,2024
Allogenic Stem Cell Therapy for Acute Iscemic Stroke The Phase 2/3 TREASURE Randomized Clinical Trial

同種幹細胞の大量生産品MultiStem用いた日本44施設での多施設二重盲検試験。NIHSS:8-20のラクナ梗塞、脳幹梗塞を除く急性期脳梗塞、20歳以上(途中で84歳以下に制限)で発症後18-36時間以内に1回MultiStemを投与。主要評価項目は90日時点でのmRS等。207例でランダム化され、105例でMultiStem、102例でプラセボが投与された。MultiStem群の年齢中央値79歳、NIHSS:14点、tPA投与23.1%、機械的血栓除去術(MT)30.8%(tPAとMT併用は除外されている)。90日後のmRS1以下は14.4%vs11.6%、mRS2以下は35.1%vs24.2%で差なし。層別化した探索的検討では、DWIでの梗塞巣≧50mLではmRS2以下は29.6%vs8.1%でp=0.04で有意に良好であった。64歳未満でも良好な傾向を認めた。365日時点でのBI≧95では35.6%vs22.5%でp=0.05で有意に良好であった。

2024年2月7日水曜日

非重症の入院を要する市中肺炎の第1選択の抗菌薬の効果の比較

Chest,2024,vol.165,no.1
Comparative Effectiveness of First-Line and Alternative Antibiotic Regimen in Hospitalized Patients With Nonsevere Community-Acquired Pneumonia

カナダ、オンタリオ州19施設のGEMINIデータベースを用いて、非ICUの市中肺炎の治療、治療効果について検討した。誤嚥性肺炎は除く。23512例のデータを用いた。ベータラクタム(BL)+マクロライド(M)39.7%、BLのみ38.9%、キノロン(FQ、レボフロキサシンorモキシフロキサシン)19.2%、BL+ドキシサイクリン(D)2.2%。院内死亡率はBL+M:7.5%、BLのみ9.7%、FQ:6.7%、BL+D:6.0%で、BL+Mに比してBLのみの生存退院の修正ハザード比は0.90(0.84-0.96)であった。BL+M、FQ、BL+Dは効果に差を認めなかった。

2024年1月17日水曜日

女性ホルモン療法中のスタチン使用と静脈血栓症リスク

JAMA Network Open,2023,vol.6,no.12
Statin Use and the Risk of Venous Thromboembolism in Women Taking Hormone Therapy

米国の6700万人のデータベースCDMを用いて、12ヶ月間、VTEを罹患していなかったもので、初回のVTEと診断され、30日以上、抗凝固療法を実施または下大静脈フィルター留置を行ったものを症例群とし、年齢等をマッチさせた対照群を1対10で選出し、VTE診断日前のホルモン補充療法、スタチン使用を検討した。症例2万359人、対照20万3590人。ホルモン補充療法のVTEの修正オッズ比は1.51(1.43-1.60)。スタチン使用者のVTEの修正オッズ比0.88(0.84-0.93)。ホルモン補充療法者でスタチン非使用はVTEの修正オッズ比1.53(1.44-1.63)、スタチン使用ではOR1.25(1.10-1.43)。スタチン非使用のホルモン補充療法者に対し、スタチン使用(ホルモン補充療法者)のOR0.82(0.71-0.94)で、高強度スタチン(アトルバスタチン40㎎またはロスバスタチン20mg以上)のOR0.69(0.50-0.95)であった。

2024年1月10日水曜日

ペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)と腎細胞癌のリスク

JNCI,2021,vol.113,no.5
Serum Concentrations of Per-and Polyfluoroalkyl Substances and Risk of Renal Cell Carcinoma

米国住民の98%にPFASの4化合物が検出されるとの報告がある。国際ガン研究センターではPFOAは腎癌に関連し発癌物質group2Bとしている。住民ベースの前向き研究、nested case-control研究としてPFOAおよび他7種のPFASと腎癌の関連について検討した。ランダム化された住民ベースのPLCO研究(前立腺、肺、大腸、卵巣癌スクリーニング研究)のデータを用いた。PLCO研究は全米10ヶ所の55-74歳の15万人が1993-2001年に募集された。同研究で腎癌と診断されたものは326例、年齢、性、人種を一致させた対照326例を抽出し、PLCO研究登録時の血液データを用いて検討した。PFAS濃度は固相抽出液体クロマトグラフィ・タンデム質量法で計測。対照群に比して腎癌群では高血圧、肥満が有位に多かった。PFAS濃度は非ヒスパニック白人の比してアフリカ系で多かった。PFAS濃度の第1四分位に対して第4四分位ではPFOA(ペルフルオロオクタン酸)でオッズ比2.63(1.33-5.20)、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)でOR2.51(1.28-4.92)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)OR2.07(1.06-4.04)で有位に高かった。他のPFASでは傾向を認めなかった。この研究でのPFAS濃度は全米健康栄養調査(NHANES)でのPFAS濃度と同様の結果であった。